区画整理地の土地売却は難しい?事業中・完了後それぞれの売り方と注意点

区画整理地の土地を売ろうとする際、「完了後のほうが高く売れる?」「事業中でも問題ない?」など疑問や不安に思う方は少なくありません。
実際、区画整理は通常の土地売却とはルールが大きく異なり、事業中と完了後では“売り方”も“注意点”も大きく異なります。知らないまま進めると、価格面や手続き面で損をするリスクがあります。
区画整理事業の途中で売る場合・完了後に売る場合の具体的な売却方法と注意点をわかりやすく整理して解説します。
もくじ
そもそも区画整理地とは?
区画整理地を理解するには、まず「土地区画整理事業」について知る必要があります。土地区画整理事業とは、道路や公園などの公共施設を整備することで、土地の区画を整えて宅地としての利便性を高める事業のことです。
土地区画整理事業は、行政が主体となって進める以外に、地域の団体が集まって設立する土地区画整理組合やUR(都市再生機構)などが主体となって進められるケースもあります。
自分の土地が区画整理地に指定された場合、通常の土地とは異なる対応が必要です。ここでは、区画整理地と通常の土地との違いについて解説します。
所有者は土地の一部を提供する「減歩(げんぶ)」が必要
区画整理地に該当する土地の所有者は、土地区画整理法にもとづいて「
逆に、従前地よりも高くなったときは清算金(徴収金)を支払わなければなりません。
減歩には、「公共減歩」と「保留地減歩」の2種類があります。公共減歩とは、道路や公園などの公共施設を整備するために、区画整理地内の土地所有者から少しずつ土地を提供してもらうことです。
一方、保留地減歩は事業を進める資金を補うために、所有者から土地の一部を提供してもらい、「保留地」として確保します。保留地は必要に応じて第三者に売却し、その売却益を事業費に充てることがあります。
土地区画整理事業では、公共減歩と保留地減歩を組み合わせて、公共施設の整備や区画の整理が進められていくのです。減歩に応じると所有者は土地の一部を失いますが、区画整理によって土地の利用価値が高まるため、資産価値としては損をすることがないように配慮されています。
事業中は「仮換地」、事業後は「換地」と呼ばれる
区画整理地についての理解を深めるには、
まず「従前地」とは、区画整理が行われる前の土地のことです。区画整理が開始されても、完了するまで登記簿上は従前地の情報が記載されます。
土地区画整理事業は長期にわたるため、登記簿に載っている土地の情報と実際の土地の状況にずれが生じやすいのが特徴です。この「書類上の土地」と「現地の土地」の不一致が、区画整理地の売却を難しくさせる要因のひとつとなっています。
「保留地」は、区画整理事業の資金に充てるために所有者から提供された土地の中で、売却できるように確保される区画のことです。
「仮換地」とは、土地区画整理事業の途中で従前地の代わりに利用できる土地として、事業者から指定された区画のことです。仮換地に指定されるのは、事業終了後に正式な所有地(換地)として所有が予定されている土地です。
仮換地であっても売却は可能ですが、契約上は従前地を購入することになるため、買主にはその旨を事前に共有しておきましょう。
最後に「換地」とは区画整理の事業が完了し、最終的に割り当てられた土地のことです。換地になると土地の正式な所有者として、登記簿は従前地から換地へと書き換えられます。
あなたの土地は区画整理地?3つの確認方法
土地区画整理事業は長期にわたって行われるため、対象の土地が区画整理地なのか通常の土地なのかがわからないケースも考えられます。土地の売却を検討している場合は、まず土地の状況を正確に把握することが重要です。
所有する土地が区画整理地か否かを確認する方法としては、次の3つの方法があります。
- 書類で確認する
- 自治体の担当窓口や区画整理地図で確認する
- 現地の見た目で判断する
それぞれの方法について具体的に解説します。
書類で確認する(登記簿謄本、権利証など)
区画整理事業の最中は、登記簿上は従前地のままとなります。仮換地の指定を受けたあとは、登記簿の表題部に特記事項が記載され、所在地が「土地区画整理法による換地処分」などの表記で仮換地の住所に変更されます。(参考:横浜市「土地区画整理事業に関するFAQ」)
つまり、登記簿を確認して「仮換地」の記載があれば、所有地は区画整理地となります。
自治体の担当窓口や区画整理地図で確認する
最も確実な方法は、所有地がある市町村役場の都市計画課や区画整理課などの担当窓口に問い合わせることです。担当窓口に問い合わせれば、所有地が区画整理地に含まれているかの回答をもらえます。
また、自治体の多くはサイトで区画整理地図を公開しています。区画整理地図で現住所を確認すると、所有地が区画整理事業の対象となっているか、事業中であるか、完了しているかなどの情報を確認できます。
現地の見た目で判断する(境界標が新しい、道路が整備中など)
土地の見た目で判断もできます。区画整理地の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 境界標が新しい
- 広範囲で道路の整備が行われている
- 区画整理事業に関する看板が掲示されている
- 工事現場の看板(標識)に、市や区画整理組合が発注者として記載されている など
これらはあくまで「事業初期〜中期」に見られる特徴であり、事業の進行状況によっては当てはまらない場合もあります。区画整理地であるか否かを最終的に判断するには、登記簿や窓口などでの確認が必要です。
区画整理「事業中」の土地売却が難しい3つの理由
区画整理完了後の土地(換地)は、利用価値が高まる傾向にあります。しかし、区画整理が途中の土地(仮換地)は、一般的に売却が難しいとされています。
区画整理事業中の土地売却が難しい理由は、次の3つです。
- 土地の権利や位置が「仮」の状態だから
- 買主が住宅ローンを組めないから
- 売買後にトラブルが発生しやすいから
それぞれの理由について解説します。
土地の権利や位置が「仮」の状態だから
区画整理の事業中は、登記簿上の土地(従前地)と実際に利用できる土地(仮換地)が異なります。仮換地は、あくまで暫定的に使用する土地であり、区画整理の結果によっては土地の面積や場所が変更される可能性があります。
仮換地を売却する場合、売買契約および所有権移転登記の対象となるのは従前地です。
そのため、法的に売買の対象となる土地(従前地)と買主が実際に使用する土地(仮換地)にずれが生じて、トラブルの原因となるおそれがあるのです。
また、仮換地の状態では面積が確定していないため、坪単価を基準に正確な売買価格を算出するのも難しいでしょう。
土地に魅力を感じていても、トラブルが起こるリスクや将来的に土地の状態が変更される可能性を考慮して、購入を断念する方は少なくありません。
土地の面積や場所、権利が「仮」の状態であることが、区画整理事業中の土地が売れにくい原因のひとつといえます。
買主が住宅ローンを組めない(組みにくい)から
区画整理中の土地が売れにくい最大の原因は、買主が「銀行の住宅ローンを組みにくい(審査に通りにくい)」点にあります。
個人の買主は、土地の購入をする際に住宅ローンを利用するのが一般的です。銀行はお金を貸す代わりに、その土地を「担保」にしますが、区画整理中の土地はこの「担保」の設定が非常に複雑です。
銀行が担保設定(抵当権の登記)を行うのは、登記簿上の「元の土地(従前地)」です。しかし、実際に買主が家を建てるのは、移動先の「仮の土地(仮換地)」となります。
- 担保にする土地: 書類上の「元の土地」
- 家が建つ土地: 実際に使う「仮の土地」
このように「抵当権を設定する場所」と「実際に住む場所」にずれが生じ、銀行は万が一のときにお金を回収できるか判断しづらくなります。
結果として、多くの銀行で融資を断られたり、審査が厳しくなったりします。「現金一括で購入できる人」や「提携ローンが利用できる特定の建築会社で建てる人」以外には土地を売りにくくなるため、売却の難易度が大きく上がってしまうのです。
売買後にトラブルが発生しやすいから
区画整理地では、整理事業完了後に清算金のやり取りが発生します。土地区画整理事業における清算金とは、従前地と換地との価値の差を調整するためのお金のことです。
区画整理が行われると、ほとんどのケースで従前地よりも換地の面積は狭くなりますが、区画が整理されることで土地の価値は上昇します。
仮に、換地の価値が従前地よりも低くなってしまったときは、清算金(交付金)を受け取れます。逆に、従前地よりも高くなったときは清算金(徴収金)を支払わなければなりません。
清算金は、換地処分(事業完了)時点の所有者に対して精算されます。事業中に売却した場合、その権利義務は通常「買主」に引き継がれるため、将来的に買主が清算金を支払うケースがあります。(参考:全日本土地区画整理士会「清算金の徴収・交付は どの時点の地権者を対象とするのですか」)
また、整理事業の途中であっても、事業資金が不足した場合には賦課金の支払いを求められることがあります。賦課金は発生時点の所有者が支払うことになるため、契約段階で発生するリスクを買主に伝えていなかった場合、トラブルの原因となるため注意が必要です。
このように、事業中の土地を売却するとトラブルに発展するおそれがあるため、買い手を見つけるのが難しくなります。
区画整理地の売却方法|2つのタイミング
区画整理地を売却するタイミングとしては、区画整理の事業中に売却するか、事業完了後に売却するかのどちらかです。どのタイミングで区画整理地を売却するかによって、売却手続きや価格なども変わります。
ここでは、タイミングによって売却方法にどのような違いがあるのかを解説します。
方法1:区画整理「事業中」に売却する(仮換地のまま売る)
区画整理地は、仮換地のまま売ることも可能です。ただし、仮換地のまま売るのは手続きが煩雑なため、買い手を見つけるのに時間がかかることがあります。
それでも、仮換地のまま売却するメリットとしては、事業の完了を待つことなく好きなタイミングで土地を現金化できる点が挙げられます。事業が長引いて土地の利用を制限されるリスクから解放されることも、メリットといえるでしょう。
しかし、事業完了後に売却するよりも売却価格は低い傾向にあります。金銭面だけを考慮するなら、手続きの完了を待って売却するのが得策といえます。
仮換地のまま売却する際は、売買契約書における対象地は従前地です。そのため、重要事項説明書に仮換地の内容や清算金などについて詳細な説明を記載すると、トラブルを防ぎやすくなります。
仮換地の売買代金を決める際は、将来的に面積や位置が変更になる可能性や清算金、賦課金が発生するリスクを買主に説明する必要があります。
方法2:区画整理「完了後」に売却する(換地処分後に売る)
区画整理が完了すると、整備された新しい土地(換地)を割り当てられます。換地の所有権が正式に確定したあとは、面積や位置が変わることはほぼありません。
また、区画整理前の土地と換地の価値に差が生じた場合、この時点で清算金が調整され、あとから変動することもありません。
区画整理の「完了後」に売却するメリットとしては、従前地と換地の価値の差を清算金で適切に調整してもらえる点です。さらに、通常の土地と同様に売却手続きを進められるため、仮換地のように買主がローンを組むのに苦労することもほとんどありません。
ただし、区画整理事業は計画が遅延する場合があり、事業完了のタイミングが読めないことがあります。区画整理の完了まで待つと、何年も待たされるリスクは考慮しましょう。
区画整理地の土地売却を成功させる3つのポイント
ここでは区画整理地、特に仮換地のままでの土地売却を成功させるポイントを3つ紹介します。仮換地の売却は手間がかかりますが、ポイントを押さえることで好条件で売買を成立させることも可能です。
売却のタイミング(事業中or完了後)のメリット・デメリットを理解する
区画整理地を売却する際は、タイミングごとのメリット・デメリットを理解して、十分に検討しましょう。
例えば、すぐに現金が必要なケースや事業完了まで何年もかかるようなケースでは、事業中に売却手続きを進めると良いでしょう。しかし、事業完了までそれほど時間がかからないのであれば、完了を待ってから売却したほうが高額での取引を期待できます。
相場の把握が難しいため「査定の根拠」を重視する
区画整理地(仮換地)の査定は、プロの不動産会社でも非常に難しいのが実情です。なぜなら、「将来的に土地の位置や面積が変わる可能性」や「将来支払うことになる清算金のリスク」など、不確定な要素を計算する必要があるからです。
そのため、査定を依頼すると会社によって金額に大きな開きが出ることが珍しくありません。このとき、「一番高いから」という理由だけで会社を選ぶのは危険です。
査定額が現実離れした金額の場合、売り出しても買い手がつかず、売却計画が失敗してしまうからです。
査定結果を確認する際は、金額だけでなく「その金額になった根拠」を必ず担当者に質問してください。
- 将来の清算金(徴収されるお金)のリスクを考慮しているか
- 面積が減少する可能性をどう評価したか
このように、区画整理地特有のマイナス要因もしっかり反映している、「根拠のある価格」かどうかを見極めることが重要です。
区画整理地の売買実績が豊富な不動産会社に依頼する
区画整理地の売却を成功させるために最も重要なのは、区画整理地の売買実績が豊富な不動産会社に依頼することです。
区画整理地の売買は、買い手を見つけるのが難しいだけでなく、売却が決まったあとの手続きも複雑なものとなります。区画整理地を取り扱ったことがない不動産会社に依頼すると、重要事項説明や手続きの不備により、大きなトラブルに発展するおそれがあります。
区画整理地の売買実績が豊富な不動産会社を見つけるには、不動産の一括査定サイトの利用がおすすめです。どの不動産会社に依頼すべきかわからないという方は、ぜひ一括査定サイトである「リビンマッチ」を利用してみてください。
大手不動産会社から地元の不動産会社まで参加しているため、あなたに合う会社が見つかるでしょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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