土砂災害警戒区域指定で土地価格は下落?真相と高値売却のポイント5選
土砂災害警戒区域指定は、必ずしも土地価格の下落を意味するわけではありません。しかし、下落するケースもあります。
土砂災害警戒区域と土地価格の関係性や、区域に指定された土地を高く売る方法をわかりやすく解説します。
【基礎知識】土砂災害警戒区域とは
土砂災害警戒区域は通称「イエローゾーン」と呼ばれ、急傾斜地の崩壊などの危険性が高い土地です。
土砂災害警戒区域に指定されたエリアでは、土砂災害時に地方公共団体(自治体)から災害情報の伝達や避難が早くできるよう警戒避難体制の整備が図られます。
(土砂災害警戒区域)
第七条 都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における土砂災害(河道閉塞による湛水を発生原因とするものを除く。以下この章、次章及び第二十七条において同じ。)を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
引用:土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律「第七条(土砂災害警戒区域)」
土砂災害には3種類ある
周辺の地形や地質によって、土砂災害の種類は主に以下の3つに分類されます。
- 崖くずれ(急傾斜地の崩壊)
- 傾斜度が30°以上ある土地が崩壊すること
- 土石流
- 山腹が崩壊して生じた土石等または渓流の土石等が一体となって流下すること
- 地すべり
- 土地の一部が地下水等に起因して滑る、または移動すること
第二条 この法律において「土砂災害」とは、急傾斜地の崩壊(傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象をいう。)、土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象をいう。第二十七条第二項及び第二十八条第一項において同じ。)若しくは地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象をいう。同項において同じ。)(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する。)又は河道閉塞による湛たん水(土石等が河道を閉塞したことによって水がたまる自然現象をいう。
引用:土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律「第二条(定義)」
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に該当するエリアは、上記のような土砂災害が起こる危険性が高いと判断された区域であり、以下のように明確な基準があります。
土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)
■急傾斜地の崩壊
イ 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
ロ 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
ハ 急傾斜地の下端から急傾斜地高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
■土石流
土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
■地滑り
イ 地滑り区域(地滑りしている区域または地滑りするおそれのある区域)
ロ 地滑り区域下端から、地滑り地塊の長さに相当する距離(250mを超える場合は、250m)の範囲内の区
引用:国土交通省「参考資料-2 土砂災害防止法の概要」
一般の方が詳しく理解する必要はありませんが、該当エリアの地形や地質のイメージだけつかんでおくと、売却時に買主に尋ねられた場合も安心です。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)との違い
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と似た言葉で、土砂災害特別警戒区域、通称「レッドゾーン」という区域もあります。
イエローゾーンよりも土砂災害が発生するリスクが高い区域が、レッドゾーンです。土砂災害防止法でも、「急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる区域」と定義されています。
レッドゾーンに該当するエリアでは、特定の開発行為や建築する建物の構造が制限され、すでにある建物についても構造上の安全性がとれているか建築確認がされます。
ハザードマップで該当エリアを確認できる
画像引用:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、ハザードマップという災害想定区域や避難場所、避難経路を確認できる公的な地図で確認できます。
イエローゾーンは黄(オレンジ)色、レッドゾーンは赤色で区域を色分けしており、該当エリアが一目でわかります。
イエローゾーンとレッドゾーンは明確に分かれており、重なっていることはありません。そのため、自分の土地がすべてイエローゾーンの中に入っている場合は、レッドゾーンからは外れていることになります。
まれにレッドとイエローの境目に位置する土地もあるので、微妙な位置にある場合は、細かく確認するようにしましょう。
【真相】土砂災害警戒区域指定で土地価格は下落する場合も
土砂災害警戒区域に指定される前後で、結果的に土地価格が下落するケースはあります。
通常の土地と比べて災害時のリスク管理が求められることから、購入者側の心理的な不安が大きくなり需要が下がるのが原因として考えられます。しかし、そのほかの明確な原因はあるのでしょうか。
以下で、土砂災害警戒区域が土地価格に影響を与える可能性について詳しく説明します。
指定区域になると需要が減る危険性が高い
土砂災害警戒区域の土地は、通常の土地より災害時のリスクが高いため、人によっては心理的不安が大きく、需要が減る危険性が高いです。そのため、通常の土地よりも価格が下落しやすいことは否定できません。
ただし、イエローゾーン(土砂災害警戒区域)の土地の場合、レッドゾーンと比較して建築上の制限はありません。そのため、すべての土地で価値が下がるわけではありません。
たとえば、イエローゾーンに指定されている土地でも、需要が高いエリアにあり、土地の形や道路づけなど条件がよい土地であれば高値売却できることもあります。
区域指定前から価格が下落していたケースも多い
土砂災害警戒区域は、都市部よりも地方のほうが多く指定されているため、区域指定される以前から人口減少により土地相場が下落しているケースが多いです。
砂防学会誌の「土砂災害警戒区域等指定後の地価変動傾向に関する考察」の過去データを見ても、区域指定される前後で土地価格が下がったエリアは、災害区域に指定される以前から土地価格が下落しています。
画像引用:砂防学会誌「土砂災害警戒区域等指定後の地価変動傾向に関する考察」
土砂災害警戒区域に指定される前後で土地価格が下がっているからといって、その区域指定が原因と断定はできません。
過去に災害があったエリアは価値が下がりやすい
土砂災害警戒区域の中でも過去に災害履歴がある土地は、価値が下がりやすいです。実際に災害の履歴がある土地は、より災害時の危険リスクが高い印象を与えるためです。
過去の災害履歴は、インターネット上や役所で調べられます。
別の災害が価格に影響を与えることも
土砂災害警戒区域は山林や海、川などに囲まれた自然豊富なエリアが多いです。そのため、大雨による川の氾濫や地震による津波など、別の災害の危険性が土地価格に影響するケースも珍しくありません。
海や川に近い土地、山に囲まれた土地など災害が多いエリアの場合は、土砂災害以外の履歴についても確認が必要です。
土砂災害警戒区域に指定された土地を高く売る方法5選
土砂災害警戒区域内の土地だからといって、必ずしも低価格で売る必要はありません。少しでも高値で売却するために、以下で紹介する方法を実践してみましょう。
不動産売買契約の重要事項説明書に記載してもらう
まず、土砂災害警戒区域内の土地を売却する場合、重要事項説明書に区域指定されている旨を必ず記載しなければなりません。
買主に対して黙って売ることは絶対にできないので、注意しましょう。
過去の災害履歴を調べる
過去の災害履歴は、インターネットで「災害履歴+住んでいる市町村名」で検索すれば、自分で調べることも可能です。しかし、基本的には不動産会社に売却を依頼すると、イエローゾーンにかかっているかの確認からその資料の用意、買主に対する説明まで対応してもらえます。
不安な方は自分でも過去の災害履歴を調べ、もし災害が一度も起きていない場合はその旨を説明してもらえるか、確認しておきましょう。過去に一度も災害が起きていない土地ということで、ある程度買主の不安要素を取り除けるためです。
一方で、災害履歴があった場合は、被害の大きさなど過去の被害内容をしっかり説明してもらいましょう。建物を災害に備えた仕様にしやすいか、災害から復旧するまでにかかる時間など、買主が知っておきたい情報を事前に説明することで、買主の納得感を高められます。
さらに、土砂災害以外の災害履歴も確認し、正直に正確な情報を説明してもらうことで、信頼を得られるようにするのがポイントです。
レッドゾーンまでの距離を調べる
レッドゾーンの区域からどれだけ離れているか、確認することも大切なポイントです。
明確に線引きされているとはいえ、レッドゾーンに近いイエローゾーンは買主にとって不安材料になります。
逆に、レッドゾーンから離れていてイエローゾーンにもぎりぎりかかっているような土地であれば、ほとんどリスクなしと考える買主も珍しくありません。
もちろんレッドゾーンからの距離に関係なく建築上の制限はないですが、ケースによっては買主の不安を軽減できる要素であるため、必ず確認しておきましょう。
買主に建築の制限がないことを伝える
イエローゾーンは土砂災害のリスクがあるとみなされた区域ですが、レッドゾーンと違って建築制限があるわけではありません。
言い換えると、建物を建てるという意味ではまったく問題なく、通常の土地と変わらないということです。
中にはレッドゾーンとイエローゾーンを混合している人も多く、土砂災害警戒区域というだけで建てる建物を制限されると勘違いしているケースもあります。
建物を建てるのに問題ないとわかった途端に不安が解消される場合も多いため、売却を依頼する不動産会社に必ず伝えてもらいましょう。
土砂災害警戒区域の売却実績がある不動産会社に依頼する
土砂災害警戒区域の土地を売却するケースでは、過去に同じような災害区域の土地を売った実績が豊富にある不動産会社を選びましょう。
土砂災害警戒区域のイメージは、不動産会社の説明の仕方によって買主の印象が大きく変わります。
「土砂災害警戒区域ですが、過去の災害履歴を見ても特に大きな被害は出ていませんし、防災対策もしっかりしています。」
「土砂災害警戒区域ですので、万が一の場合には避難する必要があります。」
上記は同じ事実を説明していますが、前者のほうが安心感や信頼感を与えています。反対に、後者のほうが不安感をかきたてるような説明です。
後者のようにネガティブな表現をする不動産会社は、買主を遠ざけることになりかねません。
どう肯定的に説明するかだけでも、売却を依頼する不動産会社によって売却価格に大きく差が付く可能性が高いです。このように、土砂災害警戒区域の土地の売却には、不動産会社の選び方が重要です。
自分の土地に合った信頼できる不動産会社を探すには、不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」がおすすめです。利用すると、厳しい審査基準に合格した信頼できる不動産会社に、複数社査定依頼できます。高値売却したい方は、ぜひ一度お試しください。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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