住宅ローン返済中でも家は売却できる?途中で売る手順、完済できない場合の対処法

住宅ローンの返済途中でも、家は売却できます。ただし、通常の売却では、決済・引き渡しまでに住宅ローンを全額返済し、物件に設定された抵当権を抹消できる状態にする必要があります。
そのため、「住宅ローンがあと何年残っているか」よりも重要なのが、家を売ったあとの手取り額で住宅ローンを完済できるかです。
本記事では、住宅ローン返済中の家を売る条件から、売却できるか判断する方法、具体的な手順、完済できない場合の対処法まで解説します。
リビンマッチのポイント
住宅ローンは返済途中でも、売却代金や自己資金で完済し、抵当権を抹消できれば家を売却できます。まずは住宅ローンの一括返済額と家の査定価格、売却にかかる費用を確認し、売却後の手取り額で完済できるかを確認しましょう。
もくじ
住宅ローン返済中でも家は売却できる
住宅ローン返済中でも、決済※時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できる見込みがあれば通常の売却を進められます。
確認すべきなのは返済期間の長さではなく、住宅ローンの一括返済額と、家を売ったときの手取り額です。
売却の条件は決済時に住宅ローンを完済し抵当権を抹消できること
住宅ローンを利用して購入した家には、金融機関などの抵当権が設定されていることがあります。抵当権とは、住宅ローンの返済が滞った場合などに、金融機関等が担保となっている不動産から返済を受けるための権利です。
抵当権は家の所有者が変わっただけでは消えません。そのため、通常の不動産売買では、決済時に住宅ローンを全額返済し、抵当権を抹消したうえで買主へ引き渡します。
実際の取引では、買主から受け取った売却代金を住宅ローンの返済に充て、不足する場合は自己資金を加えて完済します。決済に合わせて、抵当権抹消と所有権移転の登記を進めるのが基本的な流れです。
35年ローンの途中でも考え方は変わらない
35年ローンを組んでいても、返済期間が残っていること自体を理由に売却できなくなるわけではありません。
たとえば、返済開始から5年しか経っていなくても、売却代金などで住宅ローンを完済できれば売却できます。反対に、返済期間が残りわずかでも、完済に必要な資金が不足する場合は対策が必要です。
つまり、重要なのは残りの返済年数ではなく、現在いくら返済する必要があり、家を売るといくら手元に残るのかです。
売却できるか判断するために確認する3つの金額
住宅ローン返済中の家を売れるか判断するには、次の3つの金額を確認します。
| 確認する金額 | 確認する内容 |
|---|---|
| 住宅ローンの一括返済額 | 決済日に住宅ローンを完済するために必要な金額 |
| 家の査定価格 | 現在の家がどの程度の価格で売れそうか |
| 売却にかかる費用 | 仲介手数料や登記関連費用など |
査定価格と住宅ローン残高だけを比較するのではなく、売却費用まで差し引いて完済できるかを確認することがポイントです。
住宅ローンの一括返済額を確認する
まず、借入先の金融機関へ住宅ローンの一括返済に必要な金額を確認します。
現在の住宅ローン残高と、決済日に実際に支払う金額は同じとは限りません。全額繰上返済※では、決済日までの利息などが加わるほか、金融機関や住宅ローン商品、手続方法によっては手数料がかかります。
そのため、住宅ローン残高だけを見るのではなく、決済日にいくら用意すれば完済できるのかを確認しておきましょう。
家の査定価格を確認する
次に、不動産会社へ査定を依頼し、現在の家がどの程度の価格で売れそうかを確認します。
査定価格は、物件の状態や立地、周辺の成約事例などをもとに算出する売却見込み価格です。その価格で必ず売れることを保証するものではありません。
不動産会社によって査定価格や算出根拠が異なることもあるため、複数社の査定を比較すると価格帯を把握しやすくなります。
住宅ローンを完済できるか判断するときは、査定価格だけでなく、実際にはどの程度の価格で成約しそうかについても確認しましょう。
売却にかかる費用を見積もる
家を売却しても、売却代金のすべてを住宅ローンの返済に使えるわけではありません。
主な費用には、次のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 抵当権抹消登記の登録免許税
- 司法書士へ登記手続きを依頼する場合の報酬
- 全額繰上返済の手数料がかかる場合はその費用
全額繰上返済の手数料は、金融機関や住宅ローン商品、手続方法によって異なります。
住宅ローンを完済できるか判断する際は、これらの費用を差し引いたうえで、手元にいくら残るのかを見積もりましょう。
想定手取り額と一括返済額を比較する
住宅ローンを完済できるかは、次の計算で判断するとわかりやすくなります。
住宅ローンを完済できるかの判断基準
想定手取り額 = 想定する成約価格 - 売却にかかる費用
さらに、
想定手取り額 + 売却に使える自己資金 ≧ 住宅ローンの一括返済額
この条件を満たせば、決済時に住宅ローンを完済できる見込みがあります。
たとえば、次のケースを考えてみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 想定する成約価格 | 2,600万円 |
| 売却にかかる費用 | 100万円 |
| 想定手取り額 | 2,500万円 |
| 住宅ローンの一括返済額 | 2,510万円 |
| 不足額 | 10万円 |
この場合、2,600万円で売れても、費用を差し引くと住宅ローンの完済には10万円足りません。自己資金で10万円を用意できれば通常売却できますが、用意できなければ別の方法を検討する必要があります。
査定価格が住宅ローン残高を上回っているだけで、完済できると判断しないことが重要です。
アンダーローンとオーバーローンで売却方法が変わる
3つの金額を確認したら、次に「売却後の手取り額で完済できるか」「自己資金を加えれば完済できるか」を判断します。不動産売却では、売却見込み価格と住宅ローン残高の関係を「アンダーローン」「オーバーローン」と表すことがあります。
ただし、実際に通常売却できるかは、売却費用を差し引いた手取り額まで含めて判断します。
| 状況 | 売却の考え方 |
|---|---|
| 売却代金で完済できる | 通常売却を進められる |
| 売却代金だけでは不足するが自己資金で補える | 自己資金を加えて完済し、通常売却する |
| 売却代金と自己資金でも完済できない | 住み替えローンや任意売却などを検討する |
売却代金で住宅ローンを完済できる場合
売却代金から必要な売却費用を支払っても住宅ローンを完済できるのであれば、通常の仲介による売却を進められます。
買主が決まり売買契約を締結したら、決済日に受け取った売却代金を住宅ローンの全額返済に充てます。完済後は、抵当権抹消と所有権移転の登記を進めます。
住宅ローンを完済したあとに資金が残る場合は、住み替え費用などに充てることもできます。
売却代金だけでは足りないが自己資金で補える場合
売却後の手取り額だけでは住宅ローンを完済できなくても、不足分を自己資金で補えるのであれば通常売却を進められます。
たとえば、一括返済額が2,500万円、売却後の手取り額が2,450万円なら、不足する50万円を自己資金から用意します。
不足額を判断するときは、想定する成約価格だけでなく、売却費用や一括返済に必要な金額まで含めて計算しましょう。
売却代金と自己資金でも完済できない場合
売却後の手取り額と自己資金を合わせても住宅ローンを完済できない場合は、そのまま通常売却を進めることは難しくなります。
対応方法は、売却する目的や返済状況によって異なります。
| 状況 | 主な選択肢 | 注意点 |
|---|---|---|
| 新居へ住み替えたい | 住み替えローン | 利用には金融機関の審査がある |
| 毎月の返済が難しい | 金融機関へ返済方法を相談 | 条件変更が認められるとは限らない |
| 完済できない状態で売却したい | 任意売却 | 債権者による抵当権抹消の承諾が必要 |
オーバーローンだからといって、すぐ任意売却を選ぶ必要はありません。住み替えをしたいのか、返済そのものが難しいのかによって検討する方法は変わります。
住宅ローン返済中の家を売る手順
住宅ローン返済中の家を売るときは、次の流れで進めます。
- 住宅ローンの一括返済額を確認する
- 不動産会社へ査定を依頼する
- 媒介契約を結び販売活動を始める
- 売買契約後に全額繰上返済の手続きを進める
- 決済日に住宅ローンを完済する
- 抵当権抹消と所有権移転を進めて引き渡す
住宅ローンの一括返済額を確認する
最初に、借入先の金融機関で住宅ローン残高を確認します。売却できるか判断するため、一括返済に必要な金額も確認しておきましょう。
不動産会社へ査定を依頼する
不動産会社へ査定を依頼して、現在の家の査定価格を確認します。
次に、不動産会社へ査定を依頼します。複数社の査定価格や算出根拠を比較し、売却後に住宅ローンを完済できそうか確認します。
媒介契約を結び販売活動を始める
売却を依頼する不動産会社を決めたら、媒介契約を結びます。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約があります。契約方法だけで売却期間が決まるわけではないため、不動産会社の販売方針や報告方法なども確認して選びましょう。
媒介契約後は、広告掲載や購入希望者への案内、内覧などの販売活動が始まります。
売買契約後に全額繰上返済の手続きを確認する
購入希望者と条件がまとまり売買契約を締結したら、決済日をもとに借入先の金融機関で全額繰上返済の手続きを進めます。
全額繰上返済の申込期限、必要書類、手続方法、手数料の有無は、金融機関や住宅ローン商品によって異なります。
決済日が決まったら早めに金融機関へ連絡し、抵当権抹消に必要な書類を決済に合わせて受け取れるよう準備しましょう。
決済日に売却代金で住宅ローンを完済する
決済日には、買主から売却代金を受領し、その資金を住宅ローンの全額返済に充てます。
売却代金だけでは足りない場合は、あらかじめ用意した自己資金を加えて完済します。
決済の場所や送金・返済の方法は金融機関や取引によって異なりますが、一般的には司法書士が登記関係の書類や本人確認を行い、売却代金の決済、住宅ローンの完済、登記手続きを同日に進めます。
抵当権抹消と所有権移転を進めて引き渡す
住宅ローンを完済すると、金融機関等から抵当権抹消に必要な書類が交付されます。
決済時には、司法書士へ依頼して抵当権抹消と所有権移転の登記を申請するのが一般的です。
必要な決済と書類確認が終わったら、買主へ鍵を渡します。売買契約の取り決めに応じて固定資産税・都市計画税などを精算し、家の引き渡しが完了します。
売却代金だけで住宅ローンを完済できないときの選択肢
売却代金から費用を差し引くと住宅ローンを完済できない場合でも、不足額や売却する理由によって対応方法は異なります。
自分の状況に近いものから、検討する方法を確認してください。
| 現在の状況 | 検討する方法 |
|---|---|
| 不足額を自己資金で用意できる | 自己資金で補う |
| 新居へ住み替えたい | 住み替えローン |
| 毎月の返済が難しい | 金融機関へ相談する |
| 完済できない状態でも売却したい | 任意売却を検討する |
不足分を自己資金で補う
不足額が自己資金で用意できる範囲であれば、売却代金と自己資金を合わせて住宅ローンを完済します。
たとえば手取り額が2,450万円、一括返済額が2,500万円なら、50万円を自己資金から用意します。
売却費用や決済日までの利息なども含め、一括返済に必要な金額を確認してから不足額を判断しましょう。
住み替えるなら住み替えローンを検討する
新居への住み替えを予定している場合は、住み替えローンを利用できることがあります。
住み替えローンは、現在の家を売却しても残る住宅ローンと、新居の購入資金を合わせて借り入れる方法です。
ただし、誰でも利用できるわけではなく、金融機関による審査があります。また、借入額が大きくなれば返済負担も増えるため、新居の購入予算とあわせて検討する必要があります。
住宅ローン返済中の住み替えについては、次の記事で詳しく解説しています。
返済を続けることが難しい場合は金融機関へ相談する
毎月の住宅ローン返済そのものが難しくなっている場合は、売却方法を決める前に借入先の金融機関へ相談しましょう。
金融機関や住宅ローンによっては、返済期間や返済方法の変更を相談できる場合があります。ただし、希望した条件変更が必ず認められるわけではありません。
滞納が続くほど選択肢が限られる可能性があるため、返済が難しくなった段階で早めに相談することが重要です。
任意売却は金融機関など債権者の承認が必要
住宅ローンを完済できず、通常売却が難しい場合には、任意売却を検討することがあります。
任意売却とは、住宅ローンを完済できない状態で、金融機関などの債権者から抵当権抹消について承諾を得て不動産を売却する方法です。
売主だけの判断で進めることはできず、売却価格や抵当権抹消などについて債権者との調整が必要です。
また、任意売却をしても住宅ローンがすべてなくなるとは限りません。売却代金を返済に充てても債務が残れば、その後の返済について債権者と相談する必要があります。
任意売却の詳しい流れは、次の記事で解説しています。
住宅ローン返済中の家を売るときの注意点
住宅ローン返済中の売却では、査定価格だけで完済できると判断しないことと、金融機関の手続きを早めに確認することが重要です。
共有名義やペアローン、住み替えの場合は、通常の売却より確認事項が増えるため注意しましょう。
査定価格だけで完済できると判断しない
査定価格が住宅ローン残高を上回っていても、住宅ローンを完済できるとは限りません。
査定価格は成約価格を保証するものではなく、実際の成約価格が査定価格と異なることがあります。さらに、売却すると仲介手数料や登記関連費用などもかかります。
想定する成約価格 - 売却費用 = 想定手取り額
想定手取り額を算出したうえで、一括返済額と比較しましょう。
全額繰上返済の申込期限や手数料を金融機関へ確認する
全額繰上返済の手続方法は金融機関によって異なります。
事前の申込みが必要な場合があるほか、窓口やインターネットなど手続方法によって手数料が異なる場合もあります。手数料がかからないケースもあります。
売買契約後に決済日が決まったら、次の点を借入先へ確認しましょう。
- 申込期限
- 必要書類
- 一括返済額
- 手数料の有無
- 抵当権抹消書類の受け取り方法
共有名義やペアローンでは契約関係を確認する
共有名義の家全体を売却する場合は、共有者全員で売却について合意する必要があります。
売買契約や決済では共有者本人の意思確認が必要ですが、本人が参加できない場合には、委任状などを用いて代理人が手続きを行えるケースもあります。具体的な方法は不動産会社や司法書士へ確認しましょう。
ペアローンでは、ひとつの不動産に対して複数の住宅ローン契約があるため、それぞれの住宅ローン残高や抵当権の内容を確認する必要があります。
保証関係や完済手続きは住宅ローン商品によって異なるため、売却を始める前に借入先の金融機関へ確認しましょう。
住み替えでは売却と新居購入のスケジュールを調整する
家を売却して新居を購入する場合は、売却と購入の順序も重要です。
現在の家を先に売る「売り先行」であれば、売却代金を確定させてから新居を購入できますが、引き渡し時期によっては仮住まいが必要になります。
新居を先に購入する「買い先行」では、新居を確保してから売却できますが、現在の住宅ローンと新居の住宅ローンが一時的に重なる可能性があります。
住み替えでは、不動産会社や金融機関と相談しながら、売却・購入・住宅ローンのスケジュールをまとめて確認しましょう。
住宅ローン返済中の家の売却に関するよくある質問
住宅ローン返済中の家を売るときに迷いやすい点を確認します。
- 売却代金はいつ住宅ローンの返済に使いますか?
- 一般的には決済日に使います。
買主から売却代金を受領し、その資金で住宅ローンを全額返済します。決済に合わせて、抵当権抹消と所有権移転の登記を進めます。 - オーバーローンでも買取なら売却できますか?
- 買取にしただけでオーバーローンが解消されるわけではありません。
不動産会社の買取でも、通常は買取価格と自己資金などで住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できる必要があります。完済できない場合は、住み替えローンや任意売却など別の方法を検討します。 - 住宅ローンを滞納していても家を売却できますか?
- 状況によっては売却できる場合があります。
売却代金などで住宅ローンを完済でき、必要な手続きを進められる段階であれば、通常売却を検討できることがあります。一方、住宅ローンを完済できない場合や競売手続きが進んでいる場合は対応が異なります。
返済が難しくなった時点で金融機関へ相談し、必要に応じて任意売却に対応できる不動産会社へ相談しましょう。
住宅ローン返済中に売却するなら手取り額と一括返済額を確認しよう
住宅ローンが残っていても、決済時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できれば家を売却できます。
最初に確認したいのは、住宅ローンの一括返済額と、家を売ったときの想定手取り額です。
まず借入先の金融機関で一括返済に必要な金額を確認し、不動産会社へ査定を依頼しましょう。査定価格だけでなく、売却費用を差し引いた手取り額まで確認することで、通常売却できるのか、自己資金やほかの方法が必要なのかを判断しやすくなります。
複数の不動産会社へ査定を依頼すると、査定価格だけでなく、販売方針や売却にかかる費用も比較できます。まだ売却すると決めていない場合でも、現在の住宅ローン残高と家の価格を把握しておくと、売却するかどうかを判断する材料になります。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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