擁壁がある土地は売れない?危険な擁壁の見分け方・売却方法

擁壁は、高低差のある土地を支え、土砂が崩れるのを防ぐための壁です。住宅地でもよく見られますが、擁壁があるからといって土地が売れないわけではありません。
ただし、擁壁にひび割れや傾きがある場合は、安全性への不安や補修・再施工の費用が問題となり、売却が難しくなることがあります。
この記事では、注意が必要な擁壁の特徴や法的規制、安全性の確認方法を解説します。また、補修して売る方法や現況のまま売る場合の注意点、売り出し価格の決め方も紹介します。
この記事でわかること
- 擁壁がある土地が売れにくくなる理由と危険な擁壁の特徴
- 擁壁の安全性を確認する方法と補修・再施工の判断基準
- 擁壁がある土地の売却方法と売り出し価格の決め方
もくじ
擁壁がある土地の特徴
ここでは擁壁がある土地の特徴について整理します。
擁壁の目的と種類
擁壁とは、高低差のある土地で土砂が崩れるのを防ぐために設置する構造物です。住宅地では、斜面を支え、敷地を平たんに利用するためにも使われています。
擁壁には、使用する材料や構造によって、次の種類があります。
- 重力式コンクリート擁壁
- 主にコンクリート自体の重さを利用して土を支える擁壁
- 鉄筋コンクリート擁壁
- 鉄筋とコンクリートを組み合わせた擁壁。L字型などの形状があり、工場で製造するプレキャスト製品もある
- 練積造擁壁
- 間知石や間知ブロックなどを積み、コンクリートを用いて一体化させた擁壁
- 空石積造擁壁
- 石をコンクリートなどで一体化させずに積み上げた擁壁
このうち、空石積造擁壁は地震などによる崩壊が懸念されるため、特に注意が必要です。ただし、自然石を使用した擁壁が、構造だけを理由に危険と判断されるわけではありません。
擁壁の安全性は、構造や施工方法、地盤の状態、排水設備、経年劣化などをもとに総合的に判断する必要があります。

重力式のコンクリートブロック擁壁
擁壁の法的規制
擁壁を新たに設置したり、造り替えたりする場合は、擁壁の高さや工事の規模、土地の所在地などによって法律上の手続きが必要になります。ここでは、住宅地の擁壁に関係する主な法律を3つ紹介します。
建築基準法
高さが2メートルを超える擁壁を設置する場合は、原則として建築基準法に基づく確認申請が必要です。
ただし、擁壁の設置が都市計画法や盛土規制法に基づく許可を受ける工事に含まれる場合などは、建築基準法による確認申請が不要になることがあります。
都市計画法
建物の建築などを目的として土地の区画や形状、性質を変更する開発行為には、都市計画法に基づく開発許可が必要になる場合があります。
許可の要否は、土地の区域区分や開発の規模などによって異なります。開発許可を受けて擁壁を設置する場合は、定められた技術基準を満たさなければなりません。
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)
2023年5月26日に施行された盛土規制法は、従来の「宅地造成等規制法」を改正した法律です。宅地だけでなく、農地や森林なども含め、盛土(土を盛る工事)や切土(土を削る工事)による災害を防ぐための規制が設けられています。
盛土規制法では、主に次の2つの区域が指定されています。
- 宅地造成等工事規制区域
- 特定盛土等規制区域
これらの区域で一定規模以上の盛土や切土などを行う場合は、工事の内容や規模に応じて許可や届出が必要です。擁壁の設置や造り替えが規制の対象となることもあります。
売却予定の土地が規制区域に含まれるかどうかは、自治体が公表する規制区域図などで確認できます。
なお、古い擁壁については、設置された当時の法律や許可条件を確認する必要があります。現在の規制基準を満たしていないことだけで、直ちに違法な擁壁と判断できるわけではありません。
擁壁と建物
住宅地内の擁壁は、住宅の敷地を平たんにする目的で設置されることがあります。
擁壁には、背後の土からの圧力がかかります。また、擁壁の近くに住宅がある場合は、建物の重さによる荷重も考慮する必要があります。
建物の荷重を考慮して設計された擁壁もあります。ただし、建物と擁壁の距離や基礎の構造は、擁壁の設計条件、地盤の状態、適用される規制などを踏まえて判断する必要があります。
建物の基礎と擁壁の距離が近い場合は、基礎の深さや地盤の状態、擁壁にかかる荷重などを確認する必要があります。次の図は、擁壁と建物の基礎の位置関係を考えるための概念図です。

基礎と安息角の関係
特に、既存の擁壁の近くに新しく建物を建てたり、擁壁の上部に別の擁壁を設けたりする場合は注意が必要です。擁壁が想定していない荷重を受ける可能性があるため、建築士などの専門家による確認が必要になります。
擁壁がある土地が売れにくくなる理由
擁壁のなかには危険な状態のものもあり、そのままでは土地の売却が難しいケースがあります。
危険な擁壁
擁壁に次のような状態が見られる場合は、安全性に問題があるおそれがあります。
- 大きなひび割れや、広がり続けているひび割れがある
- 擁壁が傾いている、外側にはらみ出している
- 擁壁にずれや沈下が生じている
- 水抜き穴が詰まっているなど、排水状態に問題がある
- 石をコンクリートなどで固めずに積み上げた空石積造擁壁である
- 既存の擁壁の上や近くに別の擁壁を設けた、構造上の安全性に問題がある二段擁壁になっている
特に、空石積造擁壁や、既存の擁壁の上に別の構造物を積み増した擁壁は、地震などで被害が生じた事例があり、注意が必要です。
ただし、外観や構造の種類だけで、安全性を断定することはできません。気になる状態がある場合は、建築士や土木関係の専門家に調査を依頼しましょう。
安全性に問題がある場合は、買主が購入をためらい、現状のままでは売却が難しくなることがあります。
外見では擁壁の安全性は判断が難しい
一見問題のないように見える擁壁でも、自然災害により擁壁が変形や崩壊するおそれがあります。
擁壁には土圧がかかっていますが、大雨の場合はさらに水圧が加わるため、水平方向に大きな力がかかります。水圧の影響を軽減するため、擁壁には水抜き穴が設けられていますが、長い年月で水抜き穴が詰まって水が流れないこともあるため注意が必要です。
大雨で地盤が緩んでいるときに大きな地震が発生すると、水平方向の力が働いて擁壁を倒壊させることもあります。
擁壁の高さが2メートル以下でも、盛土規制法や自治体の条例などによる規制の対象になる場合があります。また、古い擁壁は現在とは異なる基準で設置されていることもあるため、高さや築造年代だけで安全性を判断することはできません。
擁壁の安全性に問題がある場合は、買主が災害リスクを考え、土地の売却が難しくなることがあります。
擁壁の所有者と管理責任を確認する
擁壁の管理は、基本的に所有者や管理者が行います。ただし、土地の境界付近にある擁壁は、隣地の所有者との関係を確認する必要があります。
擁壁の設置や管理に問題があり、崩壊などによって隣地に被害を与えた場合は、民法に基づいて擁壁の占有者や所有者が損害賠償責任を負うことがあります。
また、盛土規制法では、規制区域内の土地所有者などに土地を安全な状態で維持する責務が定められています。
土地を売却すると、通常は買主が新たな所有者として擁壁の管理を引き継ぎます。ただし、売却によって売主の責任がすべてなくなるわけではありません。
売却前からある擁壁の不具合が契約不適合に該当する場合や、売主が問題を知りながら買主に伝えていなかった場合などは、売却後も責任を問われるおそれがあります。
トラブルを防ぐためにも、擁壁の所有関係や状態を確認し、判明している問題を買主に伝えることが大切です。
購入希望者が懸念するポイント
擁壁がある土地では、購入希望者が安全性だけでなく、購入後の工事費用や建築への影響を心配することがあります。
特に、次のような点が購入を判断するうえでの懸念材料になります。
- 擁壁が地震や大雨で崩壊するおそれはないか
- 購入後に補修や再施工の費用が発生しないか
- 希望する建物を建築・建て替えできるか
- 擁壁の設計図書や許可・検査の記録を確認できるか
擁壁の安全性を確認できない場合は、建築計画の検討に影響することがあります。また、住宅ローンの取り扱いは金融機関や物件の条件によって異なるため、融資を利用する場合は買主が金融機関に確認する必要があります。
売却前に擁壁の状態や調査記録を確認し、購入希望者に説明できるようにしておくことが大切です。
擁壁がある土地を売る方法
擁壁がある土地を売却する場合は、安全性を確認して、危険な状態であれば対処しましょう。また、擁壁の状況を正確に買主に説明する必要もあります。
ここでは擁壁がある土地を売却するときの注意すべきポイントを紹介します。
安全性を確認する
土地の売却前には、擁壁にひび割れや傾き、排水の異常などがないか確認しましょう。異常がある場合や安全性を判断できない場合は、建築士や土木関係の専門家に調査を相談します。
擁壁の設計図書や工事の許可・検査記録が残っていれば、調査の参考になります。これらの書類が手元にない場合は、自治体の建築指導や開発許可などを担当する窓口で、記録の有無を確認しましょう。
ただし、古い擁壁では記録が残っていないこともあります。書類が見つからないことだけで、擁壁が違法または危険と判断されるわけではありません。必要に応じて専門家による調査を検討してください。
売却予定の土地が盛土規制法に基づく規制区域や、土砂災害警戒区域に該当する場合は、それぞれの規制内容を確認しましょう。ただし、規制区域に含まれることだけで擁壁が危険と判断されるわけではありません。
擁壁の状態を自分で確認するときは、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」も参考になります。ただし、これは危険性を大まかに確認するための資料なので、最終的には専門家に安全性を判断してもらうことをおすすめします。
危険な擁壁は補修・補強・再施工を検討する
擁壁に問題が見つかっても、必ずしも全面的な再施工が必要になるわけではありません。擁壁の状態によって、補修・補強・再施工から適切な方法を検討します。
それぞれの方法には、次のような違いがあります。
| 対処方法 | 内容 |
|---|---|
| 補修 | ひび割れや排水設備の不具合など、問題がある部分を修繕する |
| 補強 | 擁壁の構造や地盤の状態に応じて、擁壁の安定性を高める工事を行う |
| 再施工 | 既存の擁壁を撤去するなどして、新たな擁壁を設置する |
例えば、ひび割れが見つかった場合でも、表面的な軽い劣化であれば部分的な補修で対応できることがあります。一方、擁壁の変形や地盤の問題が原因の場合は、補強や再施工が必要になることもあります。見た目だけで判断せず、専門家に原因を確認してもらいましょう。
また、擁壁そのものの劣化だけでなく、排水不良や地盤の状態が問題になっていることもあります。表面だけを補修しても、原因が解消されなければ再び不具合が生じるおそれがあります。
擁壁の状態によっては補強工事で対応できる場合もありますが、構造上の問題が大きい場合などは、全面的な再施工が必要になることもあります。
どの方法が適しているかは専門家の調査結果をもとに判断し、工事にかかる費用と売却条件を比較して検討しましょう。
現況のまま売却する場合の注意点
擁壁に問題がある土地でも、売主が補修や再施工を行わず、現況のまま売却できる場合があります。
例えば、買主が購入後に擁壁を造り替える予定であれば、売主が工事を行わず、その費用や手間を考慮した条件で売買契約を結ぶことも考えられます。
ただし、現況のまま売却する場合も、擁壁について判明している問題を買主に伝え、契約条件を明確にすることが重要です。
特に、補修・再施工の負担者や、擁壁の状態に関する契約不適合責任の取り扱いについては、売買契約を結ぶ前に確認しましょう。
なお、現況有姿での売却を定めただけで、売主がすべての責任を免れるわけではありません。売主が知っていた不具合を買主に伝えていなかった場合などは、売却後にトラブルになるおそれがあります。
また、擁壁の状態によっては行政から改善を求められる場合もあります。工事が必要かどうか判断できないときは、自治体や専門家に相談しましょう。
補修・再施工費用を考慮して売り出し価格を決める
擁壁の補修や再施工が必要な場合は、工事をしてから売る方法と、現況のまま売る方法で、売却条件を比較しましょう。
工事を行えば購入希望者の不安を減らせる可能性がありますが、売主は工事費用を負担する必要があります。一方、現況のまま売却する場合は、買主が負担する工事費用やリスクを考慮して、価格交渉が行われることがあります。
そのため、まずは専門業者から工事の見積もりを取得し、不動産会社にそれぞれの条件での査定価格や売却の見通しを確認しましょう。
ただし、補修・再施工費用と同じ金額を値引きすれば売れるとは限りません。土地の需要や擁壁の状態、買主の利用目的などによって、価格への影響は異なります。
売主が工事をする場合は、工事費用を差し引いた手取りの見込みも比較することが大切です。売却までの期間や工事に伴うリスクも踏まえ、不動産会社と相談して売り出し価格を決めましょう。
実績が豊富な不動産会社に依頼しよう
擁壁がある土地を売却する場合は、高低差のある土地や擁壁に問題がある土地の取引実績を確認して、不動産会社を選びましょう。
特に、擁壁の状態が査定価格にどう影響しているか、補修して売る場合と現況のまま売る場合でどのような違いがあるかを、具体的に説明してくれる会社が適しています。
複数の不動産会社を比較するなら、不動産一括査定サイトのリビンマッチを活用できます。土地の情報を入力して査定を依頼し、擁壁の状態についても相談しましょう。
擁壁があるから売れないと諦める必要はありません。リビンマッチを活用して後悔しない土地売却をしましょう。
擁壁がある土地の売却に関するよくある質問
- 擁壁がある土地は売れない?
- 擁壁があっても土地を売却することは可能です。ただし、擁壁に大きなひび割れや傾きがある場合や、安全性を確認できない場合は、買主が見つかりにくくなることがあります。擁壁の構造や状態を確認し、必要に応じて専門家に調査を依頼しましょう。
- 擁壁がある土地を売るときのコツは?
- まずは擁壁の状態を確認し、補修・補強・再施工が必要かどうかを検討しましょう。工事をせずに現況のまま売却できる場合もあります。擁壁の状態や必要な工事費用を考慮し、売却条件を不動産会社と相談することが大切です。
- 擁壁がある土地はどのくらい安くなる?
- 擁壁がある土地の価格が一律に何割安くなるという基準はありません。安全性に問題がなければ、擁壁があるという理由だけで価格が大きく下がるとは限りません。一方、補修や再施工が必要な場合は、工事費用などが売却価格に影響することがあります。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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