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現状有姿(ゲンジョウユウシ)とは?現況との違いや思わぬ落とし穴と対処法

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現状有姿(ゲンジョウユウシ)とは?現況との違いや思わぬ落とし穴と対処法

現状有姿とは修繕や清掃を行わず、不動産をありのままの状態で引き渡すという意味です。中古住宅や建物の価値を考慮せずに売る「古家付き土地」の売買などで、よく使われます。

ただし、劣化や不具合を事前にしっかり説明していないと、売却後にトラブルとなり、法的責任を問われるおそれもあります。

「現状有姿」と「現況有姿」の違いをはじめ、売主・買主それぞれが注意すべきポイント、見落としがちな落とし穴とその対処法まで、わかりやすく解説します。

現状有姿とは?

まずは「現状有姿」の意味と、混同されがちな用語との違い、役割について解説します。

意味

現状有姿(げんじょうゆうし)とは、不動産取引において、物件を現在の状態のままで引き渡すことを意味する用語です。

有姿は「ありのままの姿」という意味で、現状有姿で引き渡すとは、売主がリフォーム・補修・清掃・解体などの手を一切加えず、物件にある程度の劣化や不具合があっても、それをそのままの状態で売却するという契約形態を指します。

対義語

不動産における現状有姿には明確な対義語はありません。正反対の意味として近いのは、「リフォーム済物件」「修繕済物件」などです。

これらの物件は中古物件の故障・汚損箇所を修繕し、良好な状態にすることで、購入希望者にとって魅力的な状態に整えられたものです。

新築より価格を抑えられつつ、現状有姿物件より状態がよいという理由から、一定の需要があります。

現況有姿との違い

現状有姿(げんじょうゆうし)と似た言葉に、現況有姿(げんきょうゆうし)があります。どちらも「現状のまま引き渡す」という点では共通しており、同義とされる場合が多いです。

しかし、この2つの言葉には若干の違いがあります。

現状有姿は修繕やリフォームが可能な物件であっても、売主があえて手を加えず、今の状態のままで引き渡すことを意味します。

一方の現況有姿は、農地や山林、古い建物付き土地など、実質的に手を加えることが困難な不動産に対して用いられるケースが多いです。

地形の問題や法規制の関係で、建て替えや用途変更が難しく、「本当に今の状態でしか扱いようがない」といったニュアンスが含まれることもあります。

つまり、現「状」有姿と現「況」有姿には、以下のような違いがあります。

  • 現状有姿:手を加えることはできるが、あえてそのまま売る
  • 現況有姿:手を加えるのが難しいため、そのまま売る

役割

一般的に不動産を売却する際の多くは、売主が物件のひび割れや設備の不具合といった瑕疵(かし)を修繕してから市場に出します。これは、物件の状態がよいほうが売却しやすく、また高く売れやすいためです。しかし、こうした修繕は法的に義務付けられているわけではありません。

一方で、中古住宅市場では現状有姿での引き渡しも一般的に行われており、国土交通省が平成24年に公表した調査によると、中古住宅の約6割が現状有姿で取引されていたことが明らかになっています。(参考:国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン 参考資料(データ、制度概要等)」)

現状有姿での取引は、物件価格に修繕費用が上乗せされない分、相場より安く購入できるケースが多く、購入後に自分好みにリフォームしたいと考えている買主にとっては、大きな魅力となります。

現状有姿ならではの売主側のメリット

現状有姿で物件を売却する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 破損箇所などを修繕する費用や手間がかからない
  • スピーディーに売却できる
  • リノベーション前提の買主層に売却できる

それぞれのメリットについて、詳しく紹介します。

破損箇所などを修繕する費用や手間がかからない

築年数が経過した物件では、水回り設備の老朽化や外壁の劣化などにより、修繕費として数十万〜百万円以上の出費が発生するケースも少なくありません。売却前にこれらをリフォーム・修繕するとなると、経済的負担が大きくなるだけでなく、施工による時間的ロスや精神的なストレスも伴います。

その点、現状有姿での売却であれば、こうした修繕費用や手間をかけずに売却できるため、売主にとっては経済的・心理的な負担を軽減できるというメリットがあります。特に、築古物件の場合は、買主も「リフォーム前提」で購入を検討することが多く、無理に修繕するよりも、現状のままでニーズに合う買主とマッチングできる可能性もあります。

スピーディーに売却できる

現状有姿での売却は、リフォームにかかる時間を大幅に短縮できる点も大きな魅力です。通常、リフォームには数日から数カ月の期間が必要で、その間に売却のチャンスを逃してしまうおそれもあります。

また、リフォーム期間中も物件には固定資産税や管理費といった経費が発生し続けるため、工事が長引けば長引くほど、費用負担が増します。現状有姿であれば、こうした時間的ロスや経費の負担を最小限に抑え、スピーディーな売却が可能になります。

リノベーション前提の買主層に売却できる

築年数の経過した物件、いわゆる「築古住宅」は、不動産市場では一般的に評価が低くなりがちです。老朽化や設備の劣化が進んでいると、購入希望者から敬遠され、売却価格が下がるおそれがあります。

こうした物件を売却するにあたって、リフォームや修繕を施す方法もありますが、その分費用がかさみます。特に築古物件では、予想以上に費用がかかるケースも少なくありません。

そこでひとつの選択肢となるのが、現状有姿での売却です。見た目や機能面での劣化があるとしても、その分価格を抑えることで、「安く買って自分で手を加えたい」「リノベーションを前提に購入したい」と考える層にアプローチできます。

特に近年は、築古住宅をリノベーションして自分好みの空間をつくるというスタイルが人気を集めており、現状有姿の物件に対する需要も高まりつつあります。物件の状態がネックになると感じていた売主にとっては、視点を変えることで売却のチャンスを広げる方法となるでしょう。

現状有姿ならではの売主側のデメリット

現状有姿ならではのデメリットは以下のとおりです。

  • 相場より売却価格が安くなりがち
  • 瑕疵担保責任が免除されるわけではない
  • 現状有姿でも最低限の整理が求められる
  • 相場より売却価格が安くなりがち

    現状有姿の物件は、相場より売却価格が安くなる傾向にあります。

    その理由は主に2つあります。ひとつは、物件の状態が悪く、同じエリアの類似物件と比べて査定額が低くなることが多いためです。もうひとつは、現状有姿の物件を希望する買主の多くが、購入後のリフォームを前提にして予算を組んでいるため、物件そのものには高額を出しにくいという事情があります。

    このように、物件の状態と買主側の予算感の両面から、現状有姿の物件は価格が抑えられる傾向にあります。

    どの程度安くなるのかの正確なデータはありませんが、目安として2~3割程度安くなると考えておくとよいでしょう。

    契約不適合責任が免除されるわけではない

    現状有姿で売却する場合でも、設備の故障や室内の傷、汚れなどの「瑕疵」については、きちんと説明し、売買契約書に明記する必要があります。

    契約締結後に契約書に記載されていない瑕疵が発見された場合、買主から契約不適合責任を問われる可能性があり、最悪の場合、契約の解除や損害賠償請求に発展することもあります。

    現状有姿だから、ある程度の不具合や汚れは当然」と考えてしまい、説明を省いてしまうと、トラブルの原因となりかねません。

    むしろ、瑕疵の多い可能性がある現状有姿物件だからこそ、事前に誠実で透明性のある情報提供を行うことが、売主にとっても重要な防衛策となります。

    現状有姿でも最低限の整理が求められる

    現状有姿であるからといって、何も手を加えずに売却できるというわけではありません。

    たとえば家具や家電、生活ゴミ、日用品といった残置物(ざんちぶつ)が物件内に残っている場合、通常は売主が責任をもって撤去する必要があります。これらをそのまま残して引き渡すことは、「現状有姿」の範囲には含まれません。

    万が一、残置物の処理も含めて買主に引き継いでもらいたい場合には、事前に買主の同意を得たうえで、契約書にその内容を明記する必要があります。これを怠ると、契約不適合責任の対象となり、売却後のトラブルにつながるおそれがあります。

    現状有姿の取引であっても、最低限の整理整頓は必要であるという点は、売主として理解しておくべき重要なポイントです。

    現状有姿で起こりがちなトラブルを避ける3つのポイント

    現状有姿は費用や時間をかけずに売却できるというメリットがありますが、その一方で情報提供や契約書の記述を誤るとトラブルになる危険性があります。

    現状有姿で起こりがちなトラブルを避けるには、物件の状態を正確に把握し、契約書に必要な情報を盛り込む必要があります。

    以下に詳しく紹介しましょう。

    ホームインスペクションを実施

    ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅の欠陥や劣化状態について、専門知識を持つホームインスペクターが中立的な立場から調査・診断を行うサービスです。

    物件を売却する際には、売主自身がその状態を正確に把握しておくことが重要です。というのも、瑕疵(欠陥や不具合)を見落としたまま売却した場合、引き渡し後に買主から「契約不適合責任」を問われるリスクがあるためです。

    特に築古物件や現状有姿での売却を考えている場合、見た目だけでは判断しにくい劣化(シロアリによる木部の侵食、雨漏り、屋根の腐食など)が隠れているおそれもあります。

    目に見えにくい瑕疵を事前に把握するには、専門家によるホームインスペクションの実施が有効です。診断結果をもとに、契約書や告知書に必要な情報を正確に記載することで、トラブルを回避できます。

    ホームインスペクションの費用は、一般的に5〜12万円程度とされており、現状有姿で利益が出にくい物件では費用負担が気になるという声もあるでしょう。

    しかし、仮に契約不適合責任に問われた場合には、補修費用や損害賠償に加えて、買主からの信頼も失いかねません。

    特に、状態の悪い現状有姿の物件を売却する際には、専門家の視点を取り入れ、リスクを最小限に抑えるための事前対応が不可欠です。

    契約書は詳細に作成

    現状有姿で物件を売却する際は、契約書の内容について不動産会社や買主と事前にしっかり協議し、曖昧な点を残さないことが重要です。

    特に以下のような事項は、売買契約書物件条件確認書に明確に記載しておく必要があります。

    売買契約書や物件条件確認書の概要
    書類名売買契約書物件条件確認書
    役割不動産売買時の法的な取り決め物件の状況を説明
    記載事項(例)
    • 契約不適合責任に関する免責条項(全体または一部の免責)
    • 引き渡し条件(現状有姿である旨を明記)
    • 引き渡し時の残置物の扱い
    • 現況確認・重要事項説明書など、買主が確認・署名すべき書類の明記
    • 壁のひび割れ、床の沈み、雨漏り跡などの劣化状況
    • 給湯器・エアコン・換気扇などの付帯設備の動作状況
    • シロアリ被害の有無や過去の修繕歴
    • 残置物の内容や場所など

    ※現状有姿物件を売却する際に、特に注意して記載すべき内容を抜粋しています。

    優良不動産会社の力を借りて、買主と価格交渉や契約のすり合わせを

    現状有姿物件の売却は、通常の物件よりもリスクが高い取引といえます。

    物件の状態が良好とはいえないため、目に見えない瑕疵が契約不適合責任に該当しやすく、売主にとって法的リスクを伴います。

    さらに、買主から「状態が悪いこと」を理由に値引き交渉を受けやすい点も、現状有姿物件ならではの課題です。

    こうしたリスクを抑えつつ、できる限り高値でスムーズに売却するには、信頼できる不動産会社に売却を依頼する必要があります。

    その主な理由は以下の4点です。

    物件の状態確認や査定が妥当である

    プロの目線で劣化状況や瑕疵のリスクを見極め、市場価格と状態に見合った適正な査定を行ってくれます。

    好条件で売るための販売戦略を立ててくれる

    リノベーション希望者への訴求、広告の出し方、価格の設定など、物件の魅力を最大限に引き出す提案が期待できます。

    買主との価格交渉・条件調整を的確に進めてくれる

    相場や物件の特性を踏まえ、売主にとって不利にならないようバランスよく交渉を進めてくれます。

    契約書の作成・調整もサポートしてくれる

    契約不適合責任や現状有姿での引き渡し条件など、売主にとって不利にならないよう法的なサポートも受けられます。

    上記のようなサポートを受けることで、売却価格の最大化とトラブルの回避が期待できるため、現状有姿物件を売却する際には、不動産会社選びが特に重要になります。

    現状有姿での売却活動が成功した事例

    以下に優秀な不動産会社に依頼したことで、売却活動が成功した事例を紹介します。

    成功事例1:リノベーション希望の売主に現状有姿物件を売却

    売主のAさんは、遠方にある空き家の処分に悩んでいました。

    そこで、中古住宅の売却を得意とする不動産会社に相談したところ、修繕や清掃を行わず、現状有姿のままで売却するプランを提案されました。

    実際にそのまま売り出した結果、リノベーションを前提に物件を探していた不動産投資家と、スムーズに売買が成立。短期間での売却に加えて、修繕や清掃にかかる費用・手間がかからなかった点も、Aさんにとって大きなメリットとなりました。

    成功事例2:隣家と共同で売却活動を行い、持て余していた空き家を処分

    売主のBさんは、築古の一戸建てを相続したものの、居住予定がなく、長年持て余していました。特に高齢となった現在では、定期的な草刈りや清掃といった管理作業が大きな負担になっていたといいます。

    そこで、思い切って物件の処分を検討し、訳あり不動産の取り扱いに強い不動産会社に相談。現地調査を行ったところ、隣家も空き家であることが判明し、不動産会社は「2軒まとめて売却することで、事業用地や資材置き場としてのニーズを狙える」という戦略を提案しました。

    Bさんの同意を得たうえで、隣地の所有者にも交渉を行い、2軒共同での売却活動を開始。すぐに地域の建設会社が資材置き場としての活用を希望し、家屋の解体も自社で行うということで、現状のまま売却が成立しました。

    売却価格こそ当初の想定よりは低かったものの、Bさんは「草刈りや掃除から解放され、想像以上に早く処分できたことに満足している」と話しています。

    この記事の編集者

    リビンマッチ編集部アイコン リビンマッチ編集部

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