抵当権抹消登記をしないとどうなる?デメリット、放置のリスク、費用を解説

住宅ローンを組むとき、対象の不動産を担保とする抵当権が設定され、完済すると抵当権の抹消申請ができるようになります。
ただし、抵当権は抹消せずに、意図的に残すことも可能です。一方で、うっかり手続きを忘れて、そのまま放置されているケースもあります。もし抵当権を抹消せずに、そのままにしているとどうなるのでしょうか。
リビンマッチのポイント
住宅ローン完済後の抵当権抹消は義務ではありませんが、放置すると売却や新規融資ができないため、手続きをすることをおすすめします。自身で行えば数千円、司法書士依頼なら約1〜3万円が目安です。
もくじ
抵当権を抹消しない場合のリスクやデメリット
住宅ローンを完済しても、自動的に抵当権が抹消されるわけではありません。抵当権の抹消手続きは自分でする必要があります。
抵当権を抹消するのを忘れて、そのままにするとどのようなリスク、デメリットがあるのでしょうか。
新規の住宅ローンが組みにくくなる
抵当権は、不動産を担保にローンを組むときに設定されるものです。
抵当権があっても、第二抵当権を設定してより順位の低い融資を受けられる可能性はあります。しかし、抵当権のない物件と比べると、条件は当然悪くなります。
そもそも住宅ローンを完済しているのですから、わざわざ放置して悪い条件で新しくローンを組む理由はないでしょう。
抹消費用が高額になる
基本的には、不動産の売却時やローンを組む前には抵当権を抹消します。
しかし、抹消をせずに放置していると、いざ必要になったときに手続きが煩雑化して費用が割高になってしまうことがあります。
たとえば、住宅ローンを完済すると、金融機関から登記委任状が送られてきます。抵当権を抹消せずに放置している場合、金融機関の合併や代表者変更などにより、登記委任状の確認や追加対応が必要になる場合があります。
その結果、一般的な手続きよりも、抵当権抹消に費用がかかることがあるのです。
不動産を売却しにくくなる
不動産の売却は抵当権があってもできるのですが、金融機関に差し押さえられるリスクがあるため、買主を見つけることが難しいのです。
実際には住宅ローンを完済していて、差し押さえのリスクがなかったとしても、抵当権のある不動産を買おうという人を見つけるのは難しいでしょう。
不動産を売却するのであれば、抵当権の抹消は必須の手続きといえます。
相続手続きが複雑になる
抵当権を抹消せず、放置したまま所有者が亡くなると、その後の相続手続きが複雑になります。本来であれば、完済時に所有者本人が手続きをすればスムーズに終わるのですが、相続が発生することで相続人全員が関わる必要が生じるのです。
遺産分割協議でどのように不動産を継承するのかを決めたあと、抹消登記を行うと手続き上のトラブルを避けやすくなるでしょう。長期間放置したことで、数代にわたる相続が発生しているケースでは、面識のない親族から実印や書類をもらうなど、膨大な時間と労力、そして専門家への報酬が発生するリスクがあります。
書類を紛失して手間やコストが発生する
住宅ローンを完済すると、抵当権を解除するための書類が金融機関から送られてきます。これらの書類の中には再発行ができないものや、再発行に多大な手間がかかるものがあるので注意が必要です。抵当権を抹消せずに放置していると、そういった書類を紛失してしまうおそれがあります。
書類を紛失すると、抵当権抹消の手続きが非常に煩雑になってしまいます。
たとえば、書類がない場合、司法書士による「本人確認情報」の作成が必要になったり、法務局からの「事前通知制度」を利用したりしなければなりません。特に司法書士に本人確認情報の作成を依頼すると、数万円単位の追加費用が発生するのが一般的です。
放置すればするほど、重要な書類を失くすリスクや、金融機関の合併・解散によって証明書の取得が難しくなるリスクが高まり、結果として余計なコストを支払うことになります。
抵当権抹消の手続きはいつまでに行えばいい?
抵当権抹消の手続きには、法律上の明確な期限は定められていません。そのため、手続きせず放置しても罰を受けることはないのですが、放置する期間が長くなるほど、さまざまなリスクが増大します。抵当権抹消を行うタイミングについて詳しく見ていきましょう。
住宅ローンを払い終えたとき
住宅ローンを完済して金融機関から抵当権抹消に必要な書類一式を受け取ったら、遅くとも「1〜2カ月以内」には手続きを済ませるのが理想的です。
なぜなら、金融機関から渡される委任状などの書類は、金融機関の代表者が交代してしまったときなど、追加で変更を証明する書類が必要になるおそれがあるためです。
また、面倒なのが書類の紛失です。再発行には金融機関とのやり取りが必要で、数週間から1カ月以上の時間がかかることも珍しくありません。書類が手元にあるうちに、記憶が鮮明な状態で終わらせてしまうのが一番の近道です。
不動産売却で家を引き渡すとき
不動産を売却する場合、買主への引き渡しまでにローンを完済し、抵当権を抹消できる状態にしておく必要があります。実務では、売却代金でローンを完済し、その日のうちに司法書士が法務局で抵当権抹消と所有権移転の登記を同時に申請するのが一般的です。
買主は、担保が付いていない真っさらな状態の不動産を手に入れることを前提に、売買契約の締結をしています。もし、抵当権の抹消ができていないと、金融機関からの融資が受けられず、代金の支払いができなくなってしまうでしょう。
売主側が不動産売買の決済時までに抵当権の抹消ができておらず、売買が不可能になると、最悪の場合は賠償などに発展するおそれがあります。
売却が決まったら金融機関へ完済の申し込みを行い、決済の当日に抹消書類をスムーズに受け取れるよう段取りを組んでおきましょう。
相続した不動産の名義変更をするとき
亡くなった家族が所有していた不動産を相続し、名義変更(相続登記)を行うタイミングも、抵当権抹消を検討するタイミングです。不動産の名義を亡くなった人から相続人に変更する「相続登記」を先に行う、もしくは同時に抵当権抹消の申請をすることも可能です。
2024年4月から相続登記が義務化されたこともあり、放置が長期化すれば自分に不利な状況になるため注意が必要です。
相続登記を司法書士に依頼するときに、抵当権の抹消も一緒に頼むと効率的です。登記の手続きは一度にまとめて処理することで、期間や費用を省けます。
参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」
住宅ローンの借り換えをするとき
いま利用している住宅ローンから、より低金利な金融機関のローンへ借り換えを行うときにも、抵当権抹消の手続きが必須となります。一般的な手続きの流れは以下のとおりです。
住宅ローンを借り換えるときの抵当権抹消の手続き
- 新しいローンを借りて自宅を担保にする(抵当権の設定)
- 借り換えで現在の住宅ローンを完済する
- 現在の住宅ローンの担保を外す(抵当権の抹消)
住宅ローンの借り換えをした場合、これまで利用していた金融機関の対応が悪くなることがあります。そういったときは、借り換え先の金融機関に相談すると、司法書士に働きかけて手続きを一括で引き受けてもらえるなど、手続きをサポートしてもらえることがあるでしょう。
抵当権の抹消ができないケース
ここでは、抹消手続きができないケースや、手続きはできるが複雑になってしまうケースを紹介します。
住宅ローンの残債がある
当然ですが住宅ローンに残債があり、売却後も完済できない場合は抵当権を外せません。
抵当権は抹消できる条件がそろうと、抵当権者である金融機関などから抹消に必要な書類が送られてきます。住宅ローンを完済できなければ、もちろん抹消に関する書類ももらえません。
抵当権の設定者が死亡した場合
抵当権設定者(不動産所有者)が抵当権の抹消手続きを終えずに、死亡してしまうケースは少なくありません。
抵当権の抹消に相続が関係するケースとしては下記の2パターンです。
- 抵当権設定者の死亡後に抵当権が消滅する場合
- 抵当権の消滅後に抵当権設定者が死亡する場合
抵当権の消滅とは、住宅ローンが完済された状態のことをいいます。
抵当権設定者が死亡した後に抵当権が消滅した場合には、抹消手続きをする前に相続登記が必要です。つまり所有権を移転してからでないと、抹消手続きができないということです。
住宅ローンの返済中に契約者が亡くなり、団体生命保険などで弁済するケースなどがこれにあたります。
反対に、所有者の死亡前に住宅ローンが完済され、抵当権が事実上消滅していた場合は、抵当権抹消登記を行うために相続登記は必要としません。こちらは所有権を変えずに抵当権の抹消手続きができるというわけです。
ケースとしては遺産分割協議が長引いているので、相続人の一人が相続人全員のために抵当権の抹消手続きをするといった場合などが挙げられます。
相手(抵当権者)がいない場合
抵当権に限らず、登記を行うには基本的には所有者と抵当権者の共同申請が必要です。これは抵当権を失う立場にある抵当権者の利益を損なうリスクを回避するためです。
しかし、大昔に設定した抵当権などでは、抵当権者が倒産していたり、個人の方であればすでに亡くなっていたりするケースもあります。
そういった場合でも解除証明などの抹消登記に必要な書類さえそろっていれば、通常の抹消手続きが行える可能性があります。
しかし、昔から設定されている抵当権の書類なので、保管していないこともあるでしょう。抵当権者の所在が分からず、共同申請ができない場合は、一定の要件を満たせば抹消できることが可能です。ただし、最悪の場合は訴訟などの裁判手続きが必要になることがあります。
個人で解決するのは難しいので、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
抵当権抹消の手続きの流れと必要書類
抵当権抹消の手続きは、大きく分けると次の3つのステップで進みます。
- 書類の受領
- 申請書の作成
- 法務局への申請
専門的な知識が必要に見えますが、金融機関から届く書類を正しく使って申請書を作成すれば、個人で行うことも十分可能です。手続き完了までは、申請から1週間から10日程度かかります。
自分で抵当権抹消をする方法
自分で抵当権抹消の手続きを行う場合の流れは、次のとおりです。
- 管轄の法務局を調べる
抵当権抹消の申請書類は管轄の法務局に提出する必要がある。管轄は公式サイトで確認できる
- 金融機関から抵当権抹消の書類を受け取る
ローン完済後に郵送で届く書類を確認する
- 抵当権抹消を法務局に申請する
登記申請に必要な書式を法務局のWebサイトからダウンロードし、書類を作成する。作成した書類は、窓口、郵送、オンラインで申請できる
登記申請に必要な書式を法務局のWebサイトからダウンロードし、書類を作成する。作成した書類は、窓口、郵送、オンラインで申請できる
参考:法務局「管轄のご案内」「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」
抵当権抹消の必要書類
抵当権抹消の手続きには、一般的に次の書類が必要になります。
| 書類の種類 | 取得方法 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 法務局のWebサイト | 抵当権抹消登記の申請書類 |
| 委任状 | 自分で作成 | ほかの名義人の土地に建物を建てていた場合に必要 |
| 登記識別情報または登記済証 | 金融機関 | ローン返済中に金融機関が保管していた担保の証拠書類 |
| 登記原因証明情報(抵当権解除証書、弁済証書ともいう) | 金融機関 | ローンを完済したことを証明する書類 |
| 委任状 | 金融機関 | 金融機関が登記手続きを委託することを承諾する書類 |
これ以外にも、登記上の住所や氏名が変わっている場合は、それらの変更を登記のするために住民票や戸籍などが必要になるケースもあります。手続きに必要な書類は、金融機関や法務局に問い合わせて漏れや間違いのないようしっかり準備しましょう。
参考:法務局「抵当権の抹消の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(PDF)
参考:三菱UFJ銀行「住宅ローン完済時にお渡しした担保抹消に必要な書類の再発行」
抵当権の抹消手続きでかかる費用
抵当権抹消登記は、自分で手続きする方法と司法書士に依頼する方法があります。
このうち、司法書士に依頼する方法だと、手続きの手間を大きく減らすことができますが、一方で司法書士への報酬を支払わなければなりません。
自分で抹消登記の手続きをすると、司法書士に依頼するのと比べてどのくらい安くなるのでしょうか。
抵当権抹消登記の費用
抵当権抹消登記を行う場合にかかる費用には以下のようなものがあります。
- 登録免許税
- 登記事項証明書の取得費用
- 郵送費用
抵当権抹消登記の登記費用は1筆あたり1,000円です。土地と建物それぞれに抵当権が設定されている場合、2筆で2,000円です。
中には複数の土地にまたがっているようなケースもあるでしょう。抹消登記費用は筆数分必要になる点に注意が必要です。
また、登記をするにあたり、登記事項証明書を確認する場合や、郵送で手続きする場合には別途費用が必要です。
具体的にどのくらいかかるかは、状況により違いますが、1,000~2,000円程度は見込んでおくとよいでしょう。
上記を合計すると、土地1筆、建物1筆の抵当権抹消登記の場合で、約3,000~4,000円の費用がかかることが分かります。また、抹消手続きの期間は、申請してから約1週間で完了します。
自分で行う場合と司法書士に依頼する場合の違い
先述の、抵当権抹消登記にかかる費用に加えて、司法書士に依頼する場合には、別途司法書士報酬を支払う必要があります。
司法書士報酬は、依頼する司法書士によって違いますが、相場は約10,000~20,000円です。
仮に20,000円かかる場合、抵当権抹消登記費用と併せて約23,000~24,000円かかると計算できます。
つまり、自分で手続きを行う場合は、司法書士に依頼するよりも約20,000円安くなるといえます。抵当権抹消の複雑な手続きを行う手間を考えると、専門家に依頼する方がよいでしょう。
抵当権抹消後に売却するなら査定を比較する
抵当権の抹消手続きが完了した不動産を売却する場合は、まず物件の価値を知るために、査定を受ける必要があります。その際、複数の不動産会社の査定を受けることが大切です。
しかし、複数の不動産会社に問い合わせるのも大変ですし、そもそもそんなに多くの不動産会社を知らないという方も多いでしょう。
そのような方には、一括査定サイトの利用がおすすめです。一括査定サイトを利用すれば、物件情報を入力するだけで、複数の不動産会社に査定を依頼することが可能です。
不動産の売却を検討されている方は、まずは一括査定を利用されることをおすすめします。

大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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