筆界未定地の売買は難しい!解消してから売却する方法は?

土地の境界が確定していない筆界未定地は、制限が多く活用しにくいため、売買が難しいといわれています。
しかし、相続した土地が筆界未定地だったが、使い道がないため売却してしまいたい方もいるでしょう。対策としては、筆界未定地を解消する方法があります。
本記事では、筆界未定地に具体的にどのような制限があるのかを解説します。また、筆界未定地かどうかの確認方法や、解消する方法も紹介するので、売買のご参考になれば幸いです。
もくじ
筆界未定地とは
土地の区画や隣地との境を示す言葉には、一般的によく使われる「境界」とは別に、「筆界」という言い方があります。
それぞれ以下のような使い分けがされます。
- 境界
- 隣地の所有者と互いに合意した、所有権の範囲を表す
- 筆界
- 不動産登記法第123条で定義されている、土地の登記時に定めた土地の境界を示す “線” を意味する
つまり筆界未定地とは、土地の境界を示す線が確定していない土地のことです。
筆界未定地になる原因
筆界未定地は、地方公共団体(自治体)が実施する地籍調査で、土地の境界が確認できず、境界をはっきりさせないまま処理された時に発生します。
境界が確定できなかった理由としては、次のようなものがあります。
- 土地の境界について所有者間でトラブルがあり、同意が得られなかった
- 境界の位置に建物などの障害物があり、物理的に境界が確認できない
- 調査の時点で、所有者の事情により立ち会うことができなかった
- 調査の時点で合筆処理※があり、一部の土地について所有権移転や抵当権設定登記があったため、未処理で筆界未定となってしまった
地籍調査とは?
地籍調査とは地方公共団体などが実施する、国土調査法にもとづく公的な調査です。
土地を1筆ごとに所有者・地目・地番を調査し、土地の境界と面積を測量により確定させます。
歴史のある街では、土地の境界や面積が不明瞭なケースが多いです。所有者個人が測量を依頼すると費用負担が大きいですが、地籍調査は地方公共団体が実施するため、個人負担がありません。
国土交通省の「全国の地籍調査の実施状況」によると、2020年度末時点での全国の地籍調査実施状況は平均で52%です。中でも優先実施地域では79%の進捗率になっています。
筆界未定地かどうかの確認方法
所有している土地が筆界未定地であるかは、どのように確認すればよいのでしょうか。
登記事項証明書を見ると、表題部にある地図番号の欄に「国調筆界未定地」と記載されています。
また、登記所から交付される公図(地図)でも確認できます。筆界未定地の場合、複数の地番が「〇+〇」のように、ひとつの土地の区画に複数の地番が記載された状態になっています。
登記所で申請することで、これらを確認できます。
また、不動産会社はオンラインで登記情報を取得できるサービスを導入しているケースが多いです。そのため、近くの不動産会社に依頼して確認することもできます。
所有権について
筆界未定地でも所有権はあり、使用することに問題はありません。
ただし、抵当権の設定にほかの所有者の承諾が必要という制限が生まれる可能性があります。そのため、住宅ローンを借りるために、不動産を担保とする抵当権を設定しようとしてもできない場合があります。
また、通常の土地として扱われていたものが、地籍調査後に筆界未定地として処理されてしまうケースがあります。
所有権は、相続や贈与などにより移転されます。地籍調査から数十年も経過し相続してから、筆界未定地と初めて分かるということもあるでしょう。
筆界未定地の売買は難しい?
筆界未定地を売却することは可能ですが、土地の境界が定まっていないことによる弊害があります。そのため、売買においては注意が必要です。
筆界未定地のデメリット
筆界未定地は以下のような制限を受けるため、市場価格での売却が難しいです。
- 土地を分割する分筆ができない
- 土地を合併する合筆が原則としてできない
- 土地の面積を正しく変更する地積更正ができない
- 地目変更ができない
- 抵当権設定が非常に難しい
- 建物を建てるための建築確認申請が難しい
市場価格で売却しようとしても購入を希望する人は少なく、値引きをせざるをえません。
トラブルに発展するおそれがある
筆界未定地の売買では、トラブルが発生することがあります。
筆界未定地は制限があるため、通常の土地とは異なり利用や活用においてデメリットがあります。売買取引ではこれらのデメリットとなる事項を買主に正確に知らせる必要があります。
売買取引を不動産会社が仲介する場合は、重要事項説明書を買主に交付し、専門家である宅地建物取引士が説明をします。
筆界未定地であることの説明に不足があると、買主がよく理解せずに取引が成立してしまう場合があります。
買主に土地を活用する計画があっても、制限によりその計画を進めることができない場合に、売主の契約不履行として契約解除および損害賠償を求めてくるおそれがあります。
土地の所有者が注意すべき事項
前述したように、買主が筆界未定地について十分に理解しないまま取引が成立してしまうと思わぬトラブルになることがあります。念には念をいれて、取引内容を売主と買主の両方がしっかりと確認する必要があります。
売買だけに関わらず、所有地が筆界未定地になってしまうと、せっかくの資産価値が大幅に下がります。
地籍調査がまだ未施行の地域に土地を所有する場合は、地方公共団体などから地籍調査の案内文書が来た時は必ず現地立ち会いをしましょう。
筆界未定地の売買は「境界の確定」から!解消するための3つの方法を比較
筆界未定地をできるだけ早く、適正価格で売却するには、なにより境界を確定させることが重要です。なぜなら、境界が曖昧な土地は「将来の問題を抱え込んだ土地」と見なされるからです。
そのため、たとえ売却できたとしても、取引価格は相場より大幅に安くなってしまいます。それ以前に、買い手を見つけること自体が非常に困難になるのです。
ここでは、その「境界確定」を進めるための3つの方法を、難易度順に解説します。
難易度1:【推奨】隣地所有者と協力して進める「筆界確認(民民査定)」
筆界確認は、隣地の所有者全員と話し合い、協力して境界を確定させる最も円満かつ一般的な方法です。土地家屋調査士に依頼し、測量を行ったうえで、関係者全員が立ち会い、合意した境界線を示した「筆界確認書」という書類を作成します。
ただし、この筆界確認は関係者全員の合意が前提です。そのため、以前は関係がこじれていても、「相続によって所有者が変わり、現在の所有者とは良好な関係が築けている」といったケースなどで有効です。
費用と期間を最も抑えられるため、まず目指すべき方法といえるでしょう。
難易度2:隣地の協力が得られない場合の「筆界特定制度」
隣地の所有者が立ち会いを拒否したり、連絡が取れなかったり、境界線について合意が得られなかったりする場合に有効な方法です。
この「筆界特定制度」では、当事者からの申請にもとづき、法務局の専門家(筆界調査委員)が調査を行ったうえで、客観的な意見として境界の位置を特定します。
裁判のような法的な強制力はありませんが、公的機関による判断が示されるため、その後の話し合いや売却を円滑に進めるための助けになるでしょう。
難易度3:最終手段としての「境界確定訴訟」
話し合いや筆界特定制度でも解決せず、どうしても境界を確定させたい場合の最終手段が裁判です。
裁判所に訴えを提起し、司法の場で最終的な判断をくだしてもらいます。判決には法的な強制力があり、相手が納得していなくても境界が確定します。
しかし、3つの方法の中で最も時間と費用がかかり、隣地所有者との関係性にも大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
あなたに合う方法は?3つの解消法を費用と期間で徹底比較
自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶために、それぞれの特徴を一覧表で比較してみましょう。
| 解消方法 | メリット | デメリット | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 筆界確認 |
| 隣地の協力がなければ進められない | 35万~80万円 | 3~6カ月 |
| 筆界特定制度 |
|
| 40万~100万円以上 | 6カ月~1年 |
| 境界確定訴訟 | 法的な強制力があり、確実に境界が確定する。 | 費用が最も高く、精神的・時間的負担が大きい。 | 100万円以上 | 1年以上 |
この表からもわかるとおり、まずは費用・期間の面で最も負担の少ない「筆界確認」での解決が可能かどうか、土地家屋調査士などの専門家に相談してみるのが売却成功への近道といえるでしょう。
筆界未定地の売却に強い不動産会社の選び方
境界を確定させる方針が決まったら、次はいよいよ売却活動のパートナーとなる不動産会社選びです。
筆界未定地の売却は、通常の不動産売却よりも専門的な知識と経験が求められます。「どこに頼んでも同じ」と考えず、慎重に信頼できる会社を選びましょう。
なぜ「専門の不動産会社」選びが重要なのか?
筆界未定地の売却が特殊なのは、土地家屋調査士による測量や法務局での手続きなど、法律や行政手続きが複雑に絡むためです。
このような案件に不慣れな不動産会社に依頼してしまうと、以下のような失敗につながりかねません。
- 境界確定のプロセスを適切にアドバイスできない
- 手続きが滞り、想定以上に売却期間が長引いてしまう
- 境界確定後の土地の価値を正しく評価できず、安値で売却されてしまう
扱いの難しい土地売却を円滑に進め、あなたの土地の価値を最大化してくれる不動産会社を選ぶことが、売却成功の絶対条件です。
見極めるポイントは「筆界未定地の取引実績」と「土地家屋調査士との連携」
どうすれば専門知識を持つ不動産会社を見極められるのでしょうか。不動産会社の担当者に会ったら、必ず以下の2つのポイントを確認してください。
- 筆界未定地の取引実績
- 土地家屋調査士との連携
筆界未定地の取引実績
「過去に筆界未定地を扱ったことがありますか?」「そのとき、どのように進めましたか?」と単刀直入に質問してみましょう。具体的な事例や、トラブルへの対処法などを交えて明確に回答できる担当者は、経験豊富な証拠です。
土地家屋調査士との連携
「信頼できる土地家屋調査士を紹介してもらえますか?」と聞いてみましょう。実績のある会社は、必ずと言っていいほど提携している土地家屋調査士がいます。測量から売却までワンストップでスムーズに連携できる体制が整っているかは、重要なポイントです。
複数の不動産会社を比較して、信頼できるパートナーを見つけよう
筆界未定地の売却は、担当者のスキルや経験によって、売却期間も売却価格も大きく変わります。だからこそ、必ず複数の不動産会社に査定を依頼し、各社の提案や担当者の対応を比較検討することがポイントです。
不動産の一括査定サイトを利用すれば、一度の入力で複数社にまとめて査定を依頼できます。その中から、筆界未定地の売却に強そうな会社を数社に絞り込み、実際に担当者と会って、信頼できるパートナーを見つけましょう。
筆界未定地の売買に関するよくある質問
- 筆界未定地の売買はなぜ難しい?
- 分筆や合筆、地目変更ができないなど、多くの制限があるためです。市場価格で売却しようとしても購入を希望する人は少なく、値引きをせざるをえません。
- 筆界未定地を解消するには?
- 土地の境界を所有者が確認することで解消できます。その際は、隣地所有者の立ち合いが必要ですが、できない場合などは筆界特定制度や境界確定訴訟で解消できます。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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