親が死んだあとの二世帯住宅はどうする?子どもに残された5つの選択肢

親の面倒を見ながら生活すると考えた場合、二世帯住宅は非常に便利です。すぐ近くに親が住んでいるため、何かあったときもすぐに駆けつけられます。親世帯と生活スペースを完全に分けていれば、プライバシーを守ることも可能です。
しかし、二世帯住宅には、基本的に親世帯がいなくなり、将来的に空きスペースができてしまうという問題があります。親が亡くなったあとの二世帯住宅は、どうすればよいのでしょうか。親の死後に選ぶことのできる、二世帯住宅の選択肢を解説します。
二世帯住宅の種類
二世帯住宅とは、親と子どもふたつの世帯が、同じ建物のなかで、独立性と機能性を持って暮らす住宅です。親と子ども世帯が、ひとつの家族として一緒に暮らす「同居」と違い、二世帯住宅は、ふたつの世帯が暮らすことを考慮して建てられています。
また、ふたつの世帯がどの程度独立しているか、設備が分かれているかによって、二世帯住宅にもいくつかの種類があります。
完全分離型
住んでいる建物は同じものの、親世帯と子ども世帯の生活空間をまったく別にするのが「完全分離型」です。玄関も別になり、共有する設備はありません。さらに完全分離型にはタイプとして、次のふたつがあります。
- 縦割り方式
- 建物を縦に分割する。それぞれの世帯が1階と2階を使用できる
- 横割り方式
- 建物を1階と2階で分割する。2階の玄関へは外階段で移動する
- 縦割り方式と横割り方式
横割り式は足腰の弱った親世帯が階段を使用する機会がないため、効率的といえるでしょう。しかし、2階からの生活音が気になるかもしれません。縦割り式であれば、生活音がそれほど伝わらないというメリットがあります。
完全分離型のメリット、デメリット
完全分離型には、次のメリットとデメリットがあります。
- 世帯ごとのプライバシーが確保される
- 入浴や食事、就寝時間など生活リズムの違いに悩まされない
- 玄関が違うため、将来別々の住居として活用できる
完全分離型のデメリット
- 共有する設備がないため、建築費が割高になる
- 広い敷地が必要になる
- 世帯間のコミュニケーションが取りにくい
このように完全分離型は、プライバシーの確保や、活用の柔軟性に優れています。
完全同居型
各世帯の部屋を除いて、玄関やリビング、キッチン、お風呂など、多くの設備を共有するのが「完全同居型」です。同居に近いタイプの二世帯住宅です。世帯ごとのプライベートスペースを用意している点が、同居と異なります。
完全同居型のメリット、デメリット
完全同居型のメリットとデメリットを比較すると、次のようになります。
- 建築費やランニングコストを抑えられる
- 敷地面積が少なくて済む
- 育児や介護など、世帯間での助け合いがスムーズ
完全同居型のデメリット
- 世帯ごとのプライバシーの確保が難しい
- 水道光熱費などの負担割合がはっきりしない
- 将来別々の住居として活用することはできない
完全同居型はコスト面で有利ですが、一緒に生活をするようになってから世帯間の生活リズム、習慣の違いなどで問題が生じるおそれがあります。ほかの二世帯住宅のタイプに比べ、大勢で楽しく賑やかに暮らしたい人向けといえるでしょう。
部分共有型
玄関やホールなど、一部の施設のみを共有するのが「部分共有型」です。キッチンやリビング、浴室などはそれぞれの世帯のものがあるため、生活はほぼ分離される形になります。
部分共有型のメリット、デメリット
部分共有型の二世帯住宅のメリットとデメリットは、次のとおりです。完全分離型や完全同居型のデメリットを一部解消できるものの、それでもデメリットがあることに注意が必要です。
- 一部の設備を共有するため、建築費を抑えられる。
- 必要があれば行き来ができるため、世帯間のコミュニケーションが取りやすい
- 完全同居型に比べ、プライベートが確保しやすい
部分共有型のデメリット
- 完全同居型に比べると、建築費や光熱費などのコストの節約は限定的
- 設備の一部分を共有するため、将来別々の住居として活用できない
部分共有型は完全分離型と完全同居型の中間にあたる二世帯住宅です。そのため、完全分離型と完全同居型のメリット、デメリットを比較し、「何をどこまで共有するか」の検討が必要です。
二世帯住宅のタイプを比較する
二世帯住宅には主に3タイプあり、おおまかに比較すると次の図のようになります。ひとつの建物に対して、どのようにしてふたつの世帯が同居するのかによってタイプが分かれます。
- 二世帯住宅のタイプ
どの二世帯住宅のタイプを選ぶのかは、どのように親世帯と接するつもりでいるのかがポイントになります。積極的に関わるのであれば、完全同居型と部分共有型がよいでしょう。また、ふだんは距離を取ってつき合うのであれば、完全分離型になります。
完全分離型 | 完全同居型 | 部分共有型 | |
---|---|---|---|
コスト (建築費など) |
× | ◎ | △ |
プライバシーの確保 | ◎ | × | 〇 |
コミュニケーション | △ | ◎ | 〇 |
賃貸などへの活用 | 〇 | × | × |
光熱費等の負担 | ◎ | × | 〇 |
また、二世帯住宅は遠くない将来、親世帯の部分が不要になることにも注意が必要です。そのときが来たとき、どうするのかも考えて二世帯住宅のタイプを選びましょう。
二世帯住宅は親が死んだあとが大変
二世帯住宅を建てると、高齢の親世帯が先に亡くなったり、介護施設に入所したりして、子ども世帯だけが残る日がいずれおとずれます。そのとき、二世帯住宅は本来の目的を終えることになります。
二世帯住宅は、親世帯が空いたときの問題がとても重要です。親世帯の空いた二世帯住宅の問題を紹介します。
親の生活スペースが余る
親が亡くなったり、介護施設に入所したりすると、親世帯のスペースがそのまま残されます。特に完全分離型の二世帯住宅だと、完全な空き室になります。
子ども世帯の生活スペースが狭ければ、親世帯のスペースへ引っ越して活用できますが、そうでなければスペースがそのまま余ってしまうのです。
税金や維持管理コストなどの負担が増える
親世帯の生活スペースが使われていなくても、固定資産税などの税金の支払いは必要です。そのほかの維持管理のコストもかかります。これらの費用を折半していた場合、親世帯がいなくなることで、すべての支払いを子ども世帯が負うことになります。住宅ローンの融資を受けていた場合は、親の負債を引き継ぐことになるでしょう。
これまで親世帯で負担していたものを、子ども世帯が引き継ぐことになるのです。
親世帯の住居を切り離して活用することが難しい
完全分離型の二世帯住宅であれば、不要となった親世帯の生活スペースを賃貸物件として貸し出すことが可能です。建物の構造によっては、親世帯部分だけ売却することもできるでしょう。
しかし、完全同居型や部分共有型の二世帯住宅だと、親世帯の生活スペースを切り離して賃貸にしたり、売却したりができません。
二世帯住宅は一般的な住宅と比較すると、タイプごとに違いはあるものの、活用の用途が限られているのです。
相続のトラブルが起こる可能性がある
二世帯住宅の所有者によっては、相続トラブルが発生するおそれがあります。たとえば、家は子どもの名義になっていても、土地が親の名義になっている場合、土地はほかの相続人と分割する、または相当額の現金・物品をほかの相続人に渡さなくてはなりません。もし、主な相続財産が二世帯住宅しかない場合、平等に相続することが難しいため、相続トラブルが起こるおそれがあります。
掃除などの手間が増える
二世帯住宅を適切に維持管理しようとすると、定期的な清掃が必要です。ふたつの世帯が住む住宅ですから、一般的な一軒家よりもはるかに広く、清掃はかなりの負担となるでしょう。
しかし、清掃などの手間を惜しんでしまうと、カビが生えるなどして建物を傷めてしまうおそれがあります。建物の傷みがひどいと、売却しようとしたときに減額される原因になります。
親が死んだ…二世帯住宅の選択肢
親が亡くなったとき、二世帯住宅はどうすればよいのでしょうか。考えられる選択肢には、次のものがあります。
- リノベーションをして住み続ける
- 自分の子ども世帯との二世帯住宅にする
- 親世帯の生活スペースを賃貸にする
- 二世帯住宅を売却する
- 更地にして売却する
それぞれの選択肢について、詳しく解説します。
リノベーションをして住み続ける
完全分離型、部分共有型の二世帯住宅だと、そのままの間取りで生活すると、親世帯の生活スペースはほとんど使われないままになってしまいます。そこでリノベーションを行い、間取りなどを変更して一世帯用の住宅にして住み続ける方法があります。
ただし、親世帯の生活スペースを含めて一世帯用にすると、どうしても間取りが広くなりすぎるなど、無駄なスペースが生じてしまいます。また、リノベーションに多額の費用がかかるため、経済的な余裕がある場合に検討する選択肢です。
自分の子ども世帯との二世帯住宅にする
子どもが結婚している、または近々結婚する予定があるのであれば、自分の子ども世帯との二世帯住宅として活用できます。よほどタイミングが合わなければ選べない選択肢ですが、二世帯住宅の活用としては理想的といえるでしょう。
ただし、いまの二世帯住宅が子ども世帯の望むような間取りや設備とは限らないため、意向に沿ったリノベーションなどが必要になるかもしれません。
親世帯の生活スペースを賃貸にする
完全分離型の二世代住宅であれば、親世帯部分を賃貸物件として貸し出せます。この方法を選ぶ場合、完全分離型とはいえ、ほかの賃貸物件よりも子ども世帯と密接になっていることが多いため、まったくの他人ではなく、兄弟姉妹や親族などに貸し出すことも検討しましょう。
二世帯住宅をすべて賃貸物件にすることも可能です。ただし、二世帯住宅の需要は決して高くないでしょうから、なかなか借り手が見つからない、賃料が希望より安くなるといったことが考えられます。
二世帯住宅を売却する
二世帯住宅の活用は、そう簡単ではありません。うまく活用できそうでなければ、売却してしまうのもよいでしょう。売りに出した二世帯住宅の購入を検討する人の多くは、二世帯住宅を求めている人か、賃貸併用住宅への転用などを検討している人と考えられます。
ただし、一般的な住宅と比べると、決してニーズが高いとはいえないため、思うような金額で売却できないかもしれないことに注意しましょう。それでも、維持管理にかかる手間や費用を考えると、不動産売却は有力な選択肢といえるでしょう。
更地にして売却する
二世帯住宅と比べると更地はニーズが高く、早く売れる可能性があります。どうしても二世帯住宅を売却できない場合の、最後の手段として更地は有力な選択肢です。
ただし、二世帯住宅は高額の建築費用がかかっているうえに、解体費も高額になるため、費用対効果でいうと決してよい方法とはいえません。
まずは建物の売却を試みて、どうしても購入希望者があらわれないときの手段として考えるべきでしょう。
多くの不動産会社から査定を受ける
二世帯住宅を売却するときは、できるだけ多くの不動産会社から査定を受けましょう。二世帯住宅の販売に慣れた不動産会社はほとんどないでしょうから、少しでも経験のある不動産会社を見つける必要があるためです。二世帯住宅を手がけた経験のない不動産会社では、正確な査定は期待できません。
一括査定サイト「リビンマッチ」は、売りたい住宅の査定に対応できる不動産会社を紹介するサービスです。多くの不動産会社と契約しているため、二世帯住宅を手がけたことのある不動産会社を見つけられるでしょう。
複数の不動産会社から査定を受ければ、どれくらいの価格で売却できるのか目安にもなります。ニーズの少ない二世帯住宅を売却するときは、多くの不動産会社の査定が欠かせません。まずは、リビンマッチから査定の依頼をしてください
早く売却するなら不動産会社に買い取ってもらう
二世帯住宅はニーズが少ないため、購入希望者があらわれるまで時間がかかります。早くても数カ月、場合によっては1年以上にもなることがあります。二世帯住宅の維持管理に負担を感じているのなら、早く売却できる不動産買取という方法があります。
購入希望者を探す仲介と違い、不動産買取は不動産会社が物件を買い取る売却方法です。そのため、二世帯住宅を買い取る不動産会社があらわれたら、あとは不動産売買の取り引きをするだけです。スピーディな取り引きが不動産買取のメリットです。
ただし、市場価格と比べて、買取価格が安くなることに注意が必要です。不動産会社によりますが、市場価格の6~8割程度といわれています。
不動産買取に対応できる不動産会社も、リビンマッチで見つけられます。売却する物件の情報や連絡先を入力すれば、対応できる不動産会社をリビンマッチが紹介します。
まずは、どれくらいの価格で買い取ってもらえるか、リビンマッチから査定を依頼してみましょう。