不動産の積算価格とは?実勢価格、収益価格との違いや計算方法を解説
積算価格とは、算出する時点における土地と建物の価値を合計した価格で、土地は公示地価、建物は減価償却を使って計算するのが一般的です。
積算価格の意味や計算方法をテーマに、実勢価格や収益価格との違いなどについて解説します。具体例を使ってシミュレーションもしているので、物件の販売価格が適切なのかや価値を正確に判断したい方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
積算価格は土地と建物価値の合計額
積算価格は金融機関が住宅ローンや不動産投資ローンなどの審査をする際に、その不動産の価値を評価する、つまり担保評価をする際に使用されます。担保評価とは、抵当権を設定した不動産を売却した際に、回収できるであろう金額のことです。
金融機関からのローンを利用して不動産を購入する場合、ほとんどのケースでその不動産に抵当権を設定します。仮に、債務者がローンの返済をできなくなった場合、金融機関は、抵当権を設定した不動産を競売に出して、その売却益から資金を回収します。
そのため、担保評価が高い不動産ほど資金を回収できる期待値が高く、金融機関としても貸し倒れのリスクが低いため、融資しやすいということです。積算価格の考え方は、この担保評価を算出する方法として合理的な手段であると考えられており、多くの金融機関で利用されています。
つまり、積算価格は金融機関がローンのリスクを評価するための重要な指標です。
実勢価格はもっとも時価に近い価格
実勢価格とは、そのエリアにおいて実際に取引されている不動産価格のことです。イメージ的には市場価格に近く、需要と供給が一致する価格であり、5つの指標があるといわれる不動産価格の中で、もっとも時価に近い価格です。
実勢価格は、国土交通省が公開している不動産情報ライブラリで閲覧できる、実際に取引された成約価格から推測できます。
日本全国の取引事例が閲覧できるため、自分の土地と近いエリアで検索することで実勢価格の分析に利用することが可能です。
ただし、エリアによっては取引事例の数が少ない場合や、情報があってもかなり古く参考にならない場合があるので、情報の内容には注意しましょう。
また、実勢価格の調べ方は、国土交通省が毎年公開している公示価格からも分析できます。
一般的に実勢価格は公示価格の約1.1倍とされているため、以下の計算式でおおよその実勢価格を算出します。
実勢価格の目安=自分の土地があるエリアの公示価格×1.1
実勢価格と積算価格の違い
違いは、算出する際の基準にする不動産価格の指標です。実勢価格が直近の取引事例などをもとに、実際の市場価格に近い指標から算出するのに対し、積算価格の場合、基本的に土地は公示地価、建物は減価償却を使って算出します。
公示地価は、一般的に実勢価格より低い水準になります。そのため多くの場合、積算価格は実勢価格よりも低く、変動が少なくなります。
たとえば、スーパーで売られている板チョコの値段は、実勢価格と考えることもできます。クリスマス前やバレンタイン・ホワイトデー前などのイベント前は需要が高くなることから、価格が変動しやすいためです。このように、需要や時期によって変動することを加味した価格が、実勢価格です。
反対に、チョコの原材料である砂糖などは価格の変動幅が比較的少なく設定されていることから、積算価格と考えることもできます。原材料費が上がると「販売者の利益が少なくなる」「商品価格が上がり消費者の出費が増える」など負担なことから、政府が価格調整を行っているためです。
積算価格が銀行ローンの審査における担保評価の計算方法として使われているのも、あくまで時期や需要によって変動しにくい価格ラインを割り出せることが理由です。
収益価格はいまの不動産価値+その不動産が生み出す予定の純利益
収益価格は、対象となる不動産から発生するであろう収益(利益)を予測して割り出します。
たとえば、戸建物件の収益価格を算出したい場合、はじめに調べるのは、その戸建物件を賃貸した場合に、いくら家賃収入が生まれるかです。仮に5万円であった場合、その戸建物件から年間で発生する収益は、5万円×12カ月で60万円であると予測できます。
次に、周辺にあって駅距離や築年数、間取りなどの条件が類似している物件の利回り相場を調べます。利回り相場の調べ方は、収益不動産を専門で扱うポータルサイトか周辺の不動産会社に聞き取りを行うのが効果的です。
調べた結果、利回り相場が約10%と予測できた場合、以下の式に当てはめて収益不動産の物件価格、つまり収益価格を割り出します。
- 収益不動産の物件価格(収益価格)=年間の家賃収入÷利回り
- 収益不動産の物件価格(収益価格)=60万円÷10%=600万円
収益価格と積算価格の違い
積算価格との違いは、収益価格が完全に収益物件向けの指標であり、土地や建物の条件まで含めた価格の算出が難しい点です。
極端な例で、旗に似た形の
旗竿地の土地は、前面道路に広く面した土地より基本的に資産価値が下がりますが、同じ建物であれば、家賃相場はあまり変わりません。
そのため、収益力を重視して算出すると、通常の土地に建っている戸建とあまり変わらない価格になってしまう危険性が高いです。
このように収益価格は収益不動産の価格を割り出す方法としては便利ですが、土地や建物の条件が反映されにくいデメリットがあります。
積算価格の計算方法をシミュレーション
ここでは、積算価格の計算方法について具体的な例を挙げてシミュレーションします。具体的な数字を落とし込んで計算すれば、積算価格はそこまで難しくなく、比較的簡単に算出が可能です。
積算価格の計算に使われる不動産価格の指標についても紹介するので、積算価格の出し方を知りたい人は、参考にしてください。
1.土地の価格を求める
積算価格は算出する時点における土地と建物の価値を合計した価格ですが、土地と建物の価格は、それぞれ分けて計算します。
ここでは、土地価格の求め方を解説しますが、まず、土地価格の計算で使われる以下の不動産価格の指標を紹介します。
不動産価格を算出するための指標は、主に公示地価、基準地価、相続税路線価、固定資産税評価額の4つがあります。
- 公示地価(地価公示価格)
- 1月1日時点での全国にある標準値における1㎡あたりの価格です。毎年3月に国土交通省が公表します。
- 基準地価
- 7月1日時点での全国にある標準値における1㎡あたりの価格です。毎年9月に都道府県が公表します。
- 相続税路線価
- 路線価とは、道路に面する通常の土地における1㎡あたりの価格です。相続税路線価は、相続税の計算で基準となる価格です。
- 固定資産税路線価
- 路線価とは、道路に面する通常の土地における1㎡あたりの価格です。固定資産税路線価は、固定資産税の計算で基準となる価格です。
上記の指標のうち、金融機関が担保評価を計算する際にどれを使うかは、会社によって違います。担保評価を厳しい目線で見るなら路線価、少しでも市場価格に近い目線で見るなら公示地価や基準地価が使われやすいでしょう。
ここでは、公示地価を使って積算価格を割り出してみます。たとえば、公示地価が20万円/㎡、所有している土地が100㎡の場合を想定します。
間口が狭い、変形地、道路高低差が大きいなど特別問題がない土地であれば、シンプルに公示地価と土地面積を掛け合わせて、20(万円)×100(㎡)=2,000万円が土地だけの積算価格です。金融機関の審査であれば、ここから土地の条件や周辺ニーズに合わせて価格を調整します。
2.建物の価格を求める
次に、建物の価格を計算します。建物の積算価格は、あくまで現状の建物の価値であるため、単純な新築時の建築価格ではなく、減価償却の考え方で算出されます。
建築単価は、物価変動に伴い最新の価格が反映されますが、新築時から現在までの期間分、減価償却による価値の減少が価格に反映されます。
たとえば、木造であれば法定対応年数が22年であるため、築10年の戸建であれば、残りの12年分の価値しか評価されないという考え方です。
建物価格を計算するための建築単価の指標としては、国税庁の「地域別・構造別の工事費用表(1m当たり)【令和4年分用】」を参考にしてください。なお、現時点での木造における全国の建築単価平均は17万3,000円です。
建物の積算価格は、以下の計算式で求めます。
建物の積算価格=建築単価×建築面積×残った耐用年数の割合
建物が木造で、建築単価が17万3,000円(㎡)、建築面積100㎡、築年数10年の建物の場合、以下のように計算します。
建物の積算価格=17万3,000円×100(㎡)×(22-10)/22(年)=約940万円
3.土地と建物の価格を合計する
土地と建物の積算価格を計算したあとは、単純にそれらを合計します。
たとえば、上記2つの例を合わせて、土地の積算価格が2,000万円、建物が約940万円の戸建物件などであれば、合計して約2,940万円が積算価格です。ただし、この方法は戸建でもアパートでもすべてのケースで通用するわけではありません。土地や建物の条件によって、不動産の評価は大きく変わるためです。
積算価格は机上で物件を評価する方法としては便利ですが、個々の物件ごとにその特徴や条件を考慮して評価することが重要です。つまり、積算価格はあくまで参考として使うもので、不動産取引では個々の物件ごとに詳細な調査や見極めが必要です。
それぞれの物件が持つ独自の特徴や条件を考慮しなければ、正確な評価はできません。不動産ごとの見極めが非常に大切です。
不動産の販売価格が適切かの見極め方
積算価格の考え方だけでなく不動産価格の指標は、どれも机上で価格を割り出す方法であるため、すべての不動産に当てはまる計算方法ではありません。
不動産はひとつとして同じものがなく、すべてに特徴があるため、以下で紹介する方法で販売価格を見極めましょう。
土地の形状も加味する
土地の資産価値は、土地の形状によって大きく変化します。単純に単価と面積だけで価格を出すのではなく、土地の形状も加味したうえで、販売価格を考えましょう。
たとえば、道路に面している部分が狭い土地や細長い土地は、車の出し入れがしにくいなど使い勝手がよくないことから、一般的には低い価格帯になる傾向があります。
一方、正方形などの整った形状を持つ土地はデットスペースが少なく、有効活用しやすい特徴があります。このような土地は建物や施設の配置がしやすく、最大限に活用できるため、高価格になりやすいでしょう。
道路や隣地との高低差もチェック
道路や隣地との高低差がある土地は、再建築の際に造成や
特に、山や坂が多いエリアは注意しましょう。
用途地域も重要なポイント
用途地域によって、建てられる建物の範囲は大きく変わります。
たとえば、低層住宅のための第1種低層住居専用地域では、建てられる建物に高さ制限があることから、3階建て以上の高層マンションや病院・大学、ホテルなどは建築できません。
建てられる建物の種類が豊富なほど価値は高くなるので、必ず価格に反映させるべきポイントです。
3社以上の査定価格を参考にする
積算価格は物件の価値を計算するうえで便利な考え方ですが、万能な計算方法ではありません。土地や建物の条件によって価格はまったく変わりますので、物件ごとに見極めが必要です。
そこで不動産会社に物件の査定依頼をするときは、必ず3社以上の査定を取り、総合的に判断しましょう。複数の会社に相談することで査定額の提示だけでなく、プロからさまざまな助言やアドバイスをもらえるメリットがあります。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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