不動産をクーリングオフする条件と手順を解説
クーリングオフとは、商品やサービスの契約を結んだあとでも、一定の条件を満たせば、無条件で解除ができる制度です。不動産でも適用されるため、売買契約を結んでしまったあとでも、申請をすれば解除できます。
ただし、クーリングオフの適用には条件を満たす必要があります。売買契約を確実に解除できるように確認しておきましょう。
ここでは、不動産をクーリングオフする条件と手順、クーリングオフができなかった場合の解除方法について解説します。
もくじ
不動産の売買契約をクーリングオフする条件
不動産の売買契約でクーリングオフを適用する場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 売主が宅地建物取引業者である
- クーリングオフの期間内に書面を交付した
- 特定の場所で売買契約を結んでいる
- 不動産の引渡しまたは代金の決済が完了していない
売主側はせっかく結んだ契約を解除されたくありません。そのため、条件が少しでも満たされていなければ、応じてもらえないおそれがあります。クーリングオフを確実に適用するためにも、それぞれの件を確認しておきましょう。
不動産売買において売主が宅地建物取引業者である
不動産をクーリングオフできるのは、売主が宅地建物取引業者である場合です。不動産の売主が「宅地建物取引業者」でないときは適用されません。
たとえば、宅地建物取引業ではない個人からマンションや戸建て住宅を購入したときにはクーリングオフができないので注意が必要です。不動産を個人間取引で購入する場合は、入念に検討してから売買契約を結びましょう。
クーリングオフの期間内に書面を発行した
クーリングオフが認められる期間は、クーリングオフの方法が告知された日(書面を交付して告知する)から起算して8日以内です。不動産取引の売買契約を結んだ日ではないので注意しましょう。
この期間内に、必要事項を記載した書面(ハガキなど)または電磁的記録(メールやFAXなど)で宅地建物取引業者に告知をすれば成立します。宅地建物取引業者に通知した時点で有効になるため、8日目に通知をしてもクーリングオフは有効です。
書面で告知するときは、相手に届かない可能性も考慮して内容証明郵便で送るほうが安全です。
特定の場所で売買契約を結んでいる
不動産のクーリングオフは、売買契約を結んだ場所で適用されるかどうかが分かれます。以下の場所で売買契約を結んでいると、クーリングオフができないことがあるため注意しましょう。
- 宅地建物取引業者の事務所や営業店舗
- 宅地建物取引業者の事務所や営業店舗以外で業務を行っている場所
- マンション・戸建てのモデルルームの案内所
- 住宅展示場等の展示会やイベント会場
- 買主が指定した自宅および勤務先
クーリングオフは、しつこい勧誘で断れない状況に追い込まれ、仕方なく結んだ契約を無条件で解除できる制度です。そのため、買主に購入の意思があったと判断される場所で契約した場合、クーリングオフが適用されないことがあります。
なお、ホテルや喫茶店等で売買契約を結んだ場合は、買主が指定した場所であってもクーリングオフが可能です。
不動産の引渡しや代金の決済が完了していない
不動産のクーリングオフは、売買契約を結んでから代金の完済かつ引渡しが済む前であれば可能です。代金の完済と引渡しが終わるとクーリングオフができないのは、買主と売主が契約を果たしたためです。
不動産の売買では、売主は不動産を引き渡す義務、買主は代金を支払う義務があります。民法第557条では、以下の内容が定められています。
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
履行とは取り決めを実際に行うことを意味し、この場合は、買主と売主がそれぞれの義務を果たしたことを言います。
つまり、義務を果たしたあとは、売買契約を解除できないことが法律で定められているのです。
クーリングオフができないときの解除方法
不動産の売買契約でクーリングオフが利用できない場合、以下の方法で解除できる可能性があります。
- 売主と協議を行う
- 手付金の放棄
不動産の売買契約は、クーリングオフができなくても解除が可能です。しかし、クーリングオフ以外の方法は、無条件で解除することが難しくなります。それぞれについて確認しておきましょう。
なお、クーリングオフ期限後の解除について不明点があれば、消費者センター・弁護士などに相談しましょう。
売主と話し合う
不動産の売買契約でクーリングオフができない場合、まずは宅地建物取引業者に相談してみましょう。不動産の売買契約は、売主と買主の合意によって成立しています。つまり、契約の解除についても、双方の合意があれば売買契約の解除ができるためです。
宅地建物取引業者に相談をすれば、無条件で契約を解除する方向で話がまとまる可能性もあります。売買契約が話し合いで解除された場合、あとからトラブルにならないように、契約を解除したこと、解除に必要な条件を書面に残しておくと安心です。
手付金の放棄
不動産の売買契約を解除する方法で多いのが、手付金の放棄です。不動産を購入する場合、基本的には売買契約の成立日までに手付金を支払います。手付金の相場は、不動産の代金の5~10%です。3,000万円の不動産を購入した場合、150~300万円です。
不動産の売買契約は、この手付金を放棄することで解除することができます。ただし、手付金の放棄で売買契約を解除できるのは、手付解除の期日までです。
手付解除の期日は、売主または買主のどちらか一方が契約の履行に着手するまでです。たとえば、登記の移転や引渡しなどが行われた場合、それ以降は、売買契約の解除ができなくなります。
不動産をクーリングオフするときの手続き
クーリングオフで必要な手続きは、宅地建物取引業者に対して通知を行うことだけです。クーリングオフの説明を受けた日から8日以内に、以下の内容を記載した書面または電磁的記録で、宅地建物取引業者に通知します。
- 取引先の宅地建物取引業者名
- 契約年月日
- 契約者指名
- 購入した不動産
- 契約金額
書面、またはメールの件名には「契約の解除通知」、本文には「契約解除のため、クーリングオフ」と記載をすれば問題ありません。
書類の発送日、メールの送信日がクーリングオフの期間内であれば適用されます。
宅地建物取引業者に確認する必要はない
クーリングオフの通知を発信したあとに、届いたかどうか、またクーリングオフの可否を確認する必要はありません。クーリングオフは、通知を発信した瞬間に効力が発生する「発信主義」を採用しているためです。
たとえば、メールであれば送信した瞬間、ハガキであれば郵便局に差し出した時点でクーリングオフが成立します。
ただし、宅地建物取引業者によっては、通知を受けていないといわれる場合があるかもしれません。このようなトラブルを避けるには、ハガキであれば特定記録や簡易書留といった追跡できる方法で郵送をしましょう。
返金されない場合は早めに相談
クーリングオフが成立すると、手付金など支払ったものは全て返還されます。また、宅地建物取引業者は、クーリングオフに対して損害賠償や違約金を請求することはできません。
そのため、万が一、クーリングオフが成立したのに支払ったものが返還されない場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。専門家に相談すれば、依頼者に代わって宅地建物取引業者と話し合いを進めてもらえるため、支払ったお金を取り戻せる可能性が高くなります。
2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
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リビンマッチ編集部
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