家屋の解体で必要な手続きは?取り壊し前後の申請方法を解説
両親が高齢者施設へ入所した、住宅を相続したなどの理由から、空き家を所有することがあります。しかし、空き家を所有し続けても、活用する予定がなければ、劣化して資産価値が減少していく一方です。そういったときは、家屋を解体して、更地にしてしまうのもよいでしょう。しかし、家屋は勝手に解体できず、手続きをする必要があります。どのような手続き、書類が必要なのか解説します。
もくじ
家屋の解体前と解体後には手続きが必要
原則として無断で家屋の解体をすることはできず、役所への届出などの手続きが必要です。所定の手続きを踏まないと、罰金を科されてしまうことがあるため注意しましょう。家屋の解体では、解体前と解体後にそれぞれ手続きが必要です。解体前と解体後の手続きは、次のとおりです。
解体前 | 解体後 |
---|---|
|
|
※解体業者に依頼できる手続き
家屋の解体前に必要な手続き
家屋を解体するにあたって、事前に行うべき手続きは4つあります。
- 解体工事届出
- 道路使用許可申請
- ライフラインの停止手続き
- 近隣説明会の実施
それぞれの手続きを解説します。
解体工事届出
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)により床面積80㎡(約25坪)以上の建物を解体する場合は、依頼主の名義で「解体工事届出」の提出が義務づけられています。家をリフォームするための一部の解体だと届出不要ですが、家屋全体を解体するケースでは、ほとんど届出が必要になると認識しておきましょう。
提出書類
- 届出書
- 分別解体などの計画
- 案内図
- 配置図
- 設計図または写真
- 工程表
- 委任状 ※解体業者に委任する場合
手続き方法
- 手続き者:依頼者(または委任を受けた解体業者)
- 手続き場所:各自治体の管轄部署
- 手続き期日:工事着手の7日前まで
解体業者からの見積もり書に申請費用などが記載されている場合は、自分で行うとその分の費用を節約できるでしょう。
道路使用許可申請
解体工事では家屋の前に重機やトラックを停めるため、道路交通法にもとづいて「道路使用許可申請」が必要です。また、数日間にわたって道路に足場などを置く場合は、「道路占有許可申請」も追加で提出が必要となります。これらの書類は管轄の警察署のWebサイトでダウンロードが可能です。
- 道路使用許可
- 一時的な工事(重機やトラックが停車)が発生する場合
- 道路占用許可
- 継続的な工事(数日間の足場設置)が発生する場合
提出書類
- 道路使用許可申請書、道路占用許可申請書
- 道路の使用場所(付近の見取り図)
- 作業内容を記載した書類
- 設計図および仕様書
手続き方法
- 手続き者:解体業者
- 手続き場所:管轄の警察署
- 手続き期日:工事着手の約2週間前 ※自治体による
自分で申請した場合の費用は2,500円前後です。節約したい場合は、解体業者に相談のうえ、自分で申請を行いましょう。
ライフラインの停止手続き
解体前の家屋に直前まで住んでいた場合には、ライフラインの停止手続きを行う必要があります。ライフラインとは、主に電気、ガス、電話、インターネット回線のことです。各契約窓口に電話をして、停止希望日を伝えましょう。ただし、水道は解体業者が工事の際に使用するため、停止せず残しておいて大丈夫です。
提出書類
- なし
手続き方法
- 手続き者:依頼者
- 手続き期日:約2週間前まで
手続きは基本的に事業者へ電話をかけて、停止の手続きをするだけです。
近隣説明会の実施
騒音や振動の伴う解体工事を行う際は、近隣とのトラブルを防ぐため、標識の設置や近隣への説明を条例で義務づけている地方公共団体(自治体)もあります。各自治体で申請手続きの方法が異なるため、管轄の自治体に問い合わせて内容を確認しておきましょう。
対象 | 床面積が80㎡以上の建物の解体工事 |
---|---|
標識の設置 | 工事着手の7日前までに指定の「第1号様式」を用いて現地に設置 |
近隣説明会 | 工事開始日から3日前までに、工事計画の内容について、近隣住民※に説明を行う ※近隣住民とは解体工事等を行う建築物等の高さの2倍の範囲の住民、30メートルを超える場合は30メートルの範囲内の住民 |
解体業者が近隣住民の家を訪問して説明することが一般的です。
家屋の解体後に必要な手続き
家屋の解体後にも手続きは必要です。主な手続きに、次のふたつがあります。
- 建物滅失登記申請
- 工事中に使用した水道の停止
それぞれの手続きを解説します。
建物滅失登記申請
家屋の解体工事後1カ月以内に「建物滅失登記申請」が必要です。「建物滅失登記」とは該当の土地から建物がなくなったことを登記することです。建物滅失登記は必要書類をそろえて自分で法務局に申請するほか、土地家屋調査士へも依頼できます。
提出書類
- 建物滅失登記申請書
- 登記簿謄本
- 案内図
- 建物滅失証明書 ※解体業者から取得
- 解体業者の登記事項証明書、印鑑証明書 ※解体業者から取得
- 依頼者の実印・印鑑証明書 ※自治体による
- 委任状 ※土地家屋調査士に依頼する場合
手続き方法
- 手続き者:依頼者(または委任状を取得した土地家屋調査士)
- 手続き場所:管轄の法務局
- 手続き期日:1カ月以内
自分で申請する場合はマイナンバーカードを用いてオンラインで申請するか、管轄の法務局の窓口で申請する方法があります。オンラインと窓口申請で費用が異なるため、事前に法務局のWebサイトで確認しておきましょう。なお、土地家屋調査士に依頼する場合は、申請手数料と報酬も合わせて3〜5万円が相場です。
工事中に使用した水道の停止
解体工事中は粉じん飛散防止のため、散水しながら工事を行います。解体工事終了後には、水道の停止手続きを行いましょう。
提出書類
- なし
手続き方法
- 手続き者:依頼者
- 手続き期日:解体工事終了後
水道の停止もライフラインと同じく、水道局へ電話をして停止を依頼します。
解体業者との契約
手続きのほとんどは、解体業者に任せられます。そのため、ていねいなサポートのできる解体業者を選ぶことが大切です。解体業者を選ぶ際は、許可証や免許証を取得しているかどうか、見積もり書や契約書の内容が明確かどうかを確認しましょう。複数の業者から見積もりを取ることで、相場の把握や業者の比較ができ、結果的に悪徳業者を避けられるでしょう。
家屋を解体せずに売却するのもおすすめ
家屋の解体にはさまざまな手続きと費用が発生することを、面倒に感じる人も多いのではないでしょうか。家屋を手放すつもりであれば、解体せずに売却する方法もあります。家屋の売却方法を紹介します。
古家付き土地として売却する
古家付き土地とは資産価値のない家屋が建っている土地のことで、土地の価値だけで売り出す方法です。解体費用がないときに有効で、多くの場合、土地の市場価格から解体費用を差し引いた金額で売買されます。高く売却したい人には向きませんが、費用をかけずに手放したい人におすすめです。
空き家バンクに登録する
空き家バンクとは地方自治体が中心になって運営する、空き家の取り引きサービスです。空き家を売りたい・貸したい人と、買いたい・借りたい人をつなぐサービスで、地方への移住を検討している人などが対象になります。リノベーションをすればまだ住めるような状態であれば、空き家バンクに登録することで興味を持ってもらえる可能性があります。
不動産会社に買い取りを依頼する
不動産会社によっては、不動産の仲介だけでなく、買い取りも行っています。不動産会社が直接買い取ってくれるため、買主を探す必要がなく、スピーディに取り引きを終えられるのがメリットです。家屋の解体、家財の処分などの手間がかからないのも、買い取りのメリットといえるでしょう。
ただし、不動産会社が再販売するための費用を差し引くため、買い取り価格が市場価格より6~8割ほど安くなるのが一般的です。
処分が目的なら解体前に不動産会社へ相談を
最終的に売却するつもりで家屋を解体するのであれば、まず不動産会社へ相談してみましょう。解体することなく売却できる選択肢を、不動産会社から提案してもらえることがあります。不動産会社によって考え方はさまざまなので、複数社に相談してみましょう。
一括査定サイトの「リビンマッチ」を利用すれば、まとめて複数の不動産会社へ査定を依頼できます。査定を依頼した不動産会社から思わぬ提案を受けられるかもしれません。まずはリビンマッチを利用してみてください。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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