不動産売却の控除・特例一覧|税金を抑えられる制度と条件

不動産売却で売却益(譲渡所得)が生じると、所得税や住民税がかかります。しかし、建物や土地、相続した不動産など、状況によっては控除・特例を利用でき、税負担を軽減することが可能です。
本記事では、不動産売却に関連する主な控除・特例について、対象となるケースや条件をわかりやすく紹介しています。
- 不動産売却で利用できる主な控除・特例
- マイホーム・土地・相続不動産ごとに使える制度を紹介
- 控除・特例の特徴や利用するための主な条件
- 控除・特例の併用可否と確定申告の注意点
もくじ
家(マイホーム)の売却で使える控除・特例

自分が住んでいる家や過去に住んでいた家を売却する場合、多くの控除・特例が用意されています。売却益が出たときだけでなく、売却によって損失が生じた場合にも利用できる制度があります。
物件の所有期間や買い換えの有無、住宅ローンの状況などによって利用できるものが異なるため、自身のケースに当てはまっているか確認しましょう。
居住用財産の3,000万円特別控除
自宅を売却して売却益が生じた場合、一定の条件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。譲渡所得は売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いたものです。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、この特例により譲渡所得に対する税金がかからなくなることもあります。現在住んでいる家のほか、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却した家も対象です。
ただし、別荘や一時的な居住を目的とした家は対象になりません。また、売却する相手が家族や親族など特別な関係がある人ではない、など条件があります。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
特定の居住用財産の買換えの特例

自宅を売却して新居に買い換えた場合、条件を満たすことで、売却時に生じた譲渡益(売却益)への課税を繰り延べられる制度です。原則として、売却した年の前年から売却した翌年までの3年間に新居を取得する必要があります。
なお、売却時に発生した譲渡所得が免除されるわけではなく、買い換えた住宅を将来売却する際に、繰り延べていた譲渡所得を含めて課税されるため注意しましょう。
適用するための主な条件として、売却した年の1月1日時点で、売却した建物や土地の所有期間がともに10年を超えていること、本人の居住期間が10年以上であること、売却価格が1億円以下であることなどが挙げられます。また、令和9年12月31日までに売却した物件が対象です。
参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
マイホームを買い換えたときの譲渡損失の損益通算・繰越控除
このあと紹介する「住宅ローンが残るマイホームを売ったときの譲渡損失の損益通算・繰越控除」と内容が似ている部分があるため、それぞれの特徴を表にまとめました。
| 比較する項目 | マイホームを買い換えたとき | 住宅ローンが残るマイホームを売ったとき |
|---|---|---|
主な対象 | 自宅を売って新居を購入した際、売却で損失が発生した人 | 住宅ローンがある自宅を売却し、ローン残高よりも低い価格となった人 |
買い換え | 必要 | 不要 |
売却する家の所有期間 | 売却年の1月1日時点で5年超 | 売却年の1月1日時点で5年超 |
住宅ローン | 返済期間10年以上の住宅ローンで新居を取得することなどが必要 | 売却する家に住宅ローンが残っていることが必要 |
控除対象となる損失額 | 原則として譲渡損失の額※1 | 「住宅ローン残高-売却価格」が上限 |
繰越控除 | 損益通算で控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せる | 控除しきれない損失を翌年以後3年間繰り越せる |
※1:譲渡損失:不動産など資産を売却したときに損失が生じた状態
自宅を売却して新居を買い換えたときに損失が生じた場合、利用できる特例です。一定の条件を満たせば、売却による損失をその年の給与所得や事業所得などから差し引く「損益通算」(その年の利益と損失を相殺)が行えます。
さらに、損益通算でも控除しきれなかった損失は、売却した年の翌年から3年間にわたって繰り越し控除が可能です。売却した年の1月1日時点で家の所有期間が5年を超えていることや、買い換えた新居の床面積が50㎡以上であること、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用して買い換えることなどが主な条件です。
参考:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」
住宅ローンが残るマイホームを売ったときの譲渡損失の損益通算・繰越控除
住宅ローンが残っている自宅を売却した際、ローン残高よりも売却価格が低く、損失が生じた場合に利用できる制度です。一定の条件を満たせば、譲渡損失を給与所得や事業所得などと損益通算し、控除しきれない分を翌年以後3年間繰り越せます。
前述した買換え時の特例と異なり、新居を購入していなくても適用が可能です。ただし、損益通算・繰越控除できる金額は、原則として「住宅ローン残高-売却価格」で算出した金額が上限となります。
参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、不動産を売却した場合の控除ではありませんが、マイホーム売却後にローンを利用して新居を購入する際に役立つ制度です。一定の条件を満たすと、ローンに応じた金額を所得税から控除できます。
たとえば、住宅ローン控除の控除率は原則0.7%です。ただし、借入限度額や控除期間は住宅の性能、新築・中古の別、子育て世帯などに該当するかによって異なります。
マイホーム売却時の3,000万円特別控除や軽減税率、買換特例などとは併用できない場合があるため注意が必要です。
参考:国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」
居住用財産の軽減税率
売却した年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合に利用できる特例です。
3,000万円特別控除を適用したあとの長期譲渡所得のうち、6,000万円以下の部分には所得税10%・住民税4%の軽減税率が適用されます。6,000万円を超える部分は所得税15%・住民税5%が適用となります。
なお、令和8年分までは所得税に復興特別所得税が加算されます。令和9年分以後は、防衛特別所得税と復興特別所得税が所得税と併せて課税されます。※税率は増減なし
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
土地の売却で使える控除・特例
土地を売却した場合にも、一定の条件を満たすことで譲渡所得に対する控除や軽減税率を利用できます。ただし、所有期間など細かな条件が設けられている制度が多いため、すべての土地売却で利用できるわけではありません。
ここでは、土地の売却に関連する控除・特例について紹介します。
優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率等の特例
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える土地を、優良住宅地の造成など一定の目的のために譲渡した場合、長期譲渡所得に対する税率が軽減されます。
課税長期譲渡所得が2,000万円以下の場合は所得税10%・住民税4%、2,000万円を超える場合は所定の計算式による軽減税率が適用されます。建物や建物の附属設備などは対象にはなりません。適用期限は令和10年12月31日となっています。
参考:国土交通省「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の課税の特例(15号)の概要」(PDF)
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を売却した場合、条件を満たせば譲渡所得から最高100万円を控除できます。低未利用土地とは、住居や事業では利用されていない、もしくは利用頻度が著しく低い土地などのことです。
原則として、土地の上にある建物などの対価も含めて売却価格は500万円以下です。一方で、市街化区域など一部の区域にある土地は、売却価格が800万円以下までが対象になります。
売却後に土地が利用されることや、買い手が親族や家族など特別な関係でないこと、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることも条件です。適用期限は令和10年12月31日までとなっています。
参考:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
収用等により土地・建物を売ったときの特例
土地収用法などで収用が認められている公共事業のために、土地や建物を売却した場合、2つの特例のうちいずれか1つを受けることができます。収用とは、道路建設など公共事業のために、所有者の同意が得られない場合でも、土地や建物を強制的に取得できる制度です。
1つ目は、一定の条件を満たすと、最大5,000万円までの特別控除を受けられるというものです。この特例の主な条件は、売却した土地・建物が固定資産であること、公共事業の施行者から最初に買取りなどの申出があった日から6カ月以内に売却していることなどです。
2つ目は、補償金で土地や建物へ買い換えた場合に利用できます。売却価格よりも買い換えた資産の取得額が多かった場合、その年は譲渡がなかったものとして扱われます。
参考:国税庁「No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例」
土地の売却に関する特別控除については、以下の記事で要件などを詳しく解説しています。
相続した実家などの売却で使える控除・特例
相続によって取得した実家や土地を売却する場合には、通常の不動産売却とは異なる控除・特例を利用できる場合があります。
特に、相続後に空き家となった実家を売却する場合や、相続税を納めたあと短期間で不動産を売却する場合は、税負担を軽減できる可能性があるため確認しておきましょう。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
親などから相続した空き家を令和9年12月31日までに売却し、一定の条件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。空き家を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除額が最高2,000万円となります。
前述した「居住用財産の3,000万円特別控除」と名前や控除額は似ていますが、この特例は被相続人(亡くなった人)が住んでいた家を相続人が売却する場合の制度なので、混同しないよう注意しましょう。
対象となる家屋は昭和56年5月31日以前に建築され、相続が開始される直前に被相続人以外が住んでいなかった場合です。また、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却し、売却価格が1億円以下であることなども求められます。
なお、被相続人が要介護認定などを受けて老人ホームなどに入所し、相続開始の直前にその家に住んでいなかった場合でも、一定の要件を満たせば特例の対象となることがあります。
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続や遺贈によって取得した不動産を売却した場合、相続税を支払うことになります。支払った相続税のうち一定額を不動産の取得費に加算できます。取得費が増えることで譲渡所得が小さくなり、結果として税負担を抑えられるのです。
対象となるのは、原則として相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した財産です。なお、被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除とは併用できません。
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続した不動産の売却で利用できる控除や特例については、以下の記事でより詳しく説明しています。
不動産売却の控除・特例を利用するときの注意点
不動産売却に関する控除・特例は、条件を満たせば大きな節税効果が期待できます。なかには、併用できないものもあるため注意が必要です。
また、売却後に「利用できると思っていた控除が使えなかった」ということにならないよう、契約前から適用条件や他制度との関係を確認しておくことが大切です。
控除・特例には併用できるものとできないものがある
不動産売却に関する控除・特例には、併用できる組み合わせと、どちらか一方を選択しなければならない組み合わせがあります。主な組み合わせをまとめたので参考にしてください。
| 控除・特例の組み合わせ | 併用の有無 | ポイント |
|---|---|---|
居住用財産の3,000万円特別控除 + 居住用財産の軽減税率 | ○ | 所有期間など、それぞれの要件を満たせば併用できる |
居住用財産の3,000万円特別控除 + 特定の居住用財産の買換特例 | × | 併用不可。どちらか一方を選択する |
居住用財産の軽減税率 + 特定の居住用財産の買換特例 | × | 併用不可。どちらか一方を選択する |
居住用財産の3,000万円特別控除 + 住宅ローン控除 | △ | 売却特例を利用した時期と新居への入居時期によって併用できない |
居住用財産の軽減税率 + 住宅ローン控除 | △ | 一定期間は併用できないことがある |
特定の居住用財産の買換特例 + 住宅ローン控除 | △ | 一定期間中に買換特例を利用すると、住宅ローン控除を受けられない |
どの制度を選ぶと税負担を最も抑えられるか、事前に比較することが大切です。
控除・特例を利用するには確定申告が必要
不動産売却に関する控除や特例を利用する場合は、原則として確定申告が必要です。特例を適用した結果、譲渡所得が0円となり税金が発生しない場合でも、申告しなければ特例を受けられません。
住宅ローン控除については、初めて適用を受ける年に確定申告が必要です。給与所得者は、一定の条件を満たせば2年目以降は年末調整で控除を受けられます。
不動産売却では控除や特例を利用して税負担を抑えよう
不動産売却では、売却する不動産の種類や所有期間、譲渡益・譲渡損失の有無などによって、さまざまな控除・特例を利用できます。
ただし、それぞれ適用条件が設定されており、併用できない制度もあります。あわせて、実際にどのくらいの価格で売れそうか把握しておくと、売却後の資金計画も立てやすくなります。
不動産一括査定サイト「リビンマッチ」では、最大6社の不動産会社へ査定を依頼し、売却価格の目安を比較できます。
不動産売却で利用できる控除・特例に関するよくある質問
不動産売却に関する控除や特例について、よくある疑問を紹介します。
- 控除や特例は誰でも利用できる?
- 控除や特例は、居住状況や所有期間、売却価格、売却相手、買換えの有無など、制度ごとに適用条件が定められています。まずは自身の売却条件を整理し、対象となる制度か確認しましょう。
- 控除や特例を利用したら確定申告が必要?
- 不動産売却に関する控除・特例を利用する場合は確定申告が必要です。控除によって税額が0円になる場合でも、原則として申告をしなければ適用を受けられません。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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