【徹底解説】ウクライナ侵攻が不動産市場に与える影響や不動産の売買タイミング
2022年2月24日、突然始まったロシアによるウクライナ侵攻は、当初の予想に反し長期化しています(2023年1月現在)。
グローバル化が進んでいる現在は、特定地域の紛争が世界各国の経済に影響を与えます。
本記事では、ウクライナ侵攻が不動産市場に及ぼす影響を徹底的に分析します。経済全体への影響から理解を深めましょう。
もくじ
ウクライナ侵攻の影響とは
まずは、ロシアによるウクライナ侵攻の概要や経済への影響を、専門家の知見も紹介しながら分析します。
ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか
ロシアがウクライナに侵攻した理由が、プーチン大統領のウクライナに対する執着と指摘する意見があります。
参考:NHK「【詳しく】ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか?背景は?」
ウクライナはもともと、ソビエト連邦を構成した15の共和国のひとつです。その中でもロシア・ベラルーシ・ウクライナの3国は、9世紀末~13世紀に存在したキエフ大公国がルーツであり、同じ「東スラブ民族」の国家といえます。
しかもウクライナの首都キエフ(ロシア侵攻後は「キーウ」と呼称)は、キエフ大公国の首都です。
この同じ民族でありルーツともいえるウクライナには、2014年に欧米寄りの政権が誕生しました。このことは、これまでロシア寄りだったウクライナが、反ロシア陣営になる流れを生み出したことを意味します。ロシアは安全保障上の面から、ウクライナの現政権転覆を狙ったといえます。
ウクライナ情勢の今後
現在は侵攻が始まってからすでに半年が経過しました。ウクライナ東部から南部にかけてロシアによる占領地域が拡大し、住民投票によるロシアへの帰属の流れが生まれるかに見えました。しかし8月末にはウクライナの反転攻勢があり、現在の戦況はウクライナが有利と考えられています。
しかし核兵器の使用など突発的な変化により、情勢が大きく変わる可能性もあります。
また、世界経済は脱ロシアへの動きを強める一方で、ロシアと中国の対面による首脳会談が開催され、対米結束の意思も確認されました。
今後は超大国の思惑も絡みながら、混沌とした状況がしばらく続きそうです。
ウクライナ侵攻が経済へ与えた影響
ウクライナ侵攻が経済へ与えた影響は、主に以下の2つです。
- 資源価格の上昇
- 物価上昇
ロシアとウクライナ両国のGDP(国内総生産)は世界全体の約2%で、さほど大きな影響を及ぼすものではありません。しかし小麦は世界全体の30%、トウモロコシや無機質肥料、天然ガスは世界全体の20%を占めます。また石油は11%を占め、一次産品の大きな供給国であることに注目する必要があります。
さらに現代では欠かせない資源である、ヘリウムなどの不活性ガスや各種金属の産出もしています。そのため、これら一次産品の価格が急上昇しています。
資源価格の上昇は物価上昇の主因です。インフレ抑制のため、日本を除く主要国の多くは金融引締政策を取っていますが、インフレ傾向はまだ抑えられていない状況が続いています。
また世界経済全体でGDPが押し下げられており、インフレ抑制の効果が表れて景気が持ち直されるのは来年以降とみられています。
参考:
・独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ロシアのウクライナ侵攻が世界経済に与える影響 ―OECD報告」
・三井住友DSアセットマネジメント「ロシアのウクライナ侵攻から半年~世界経済はどう変わったか」
ウクライナ侵攻の不動産市場への影響は?
ロシアによるウクライナ侵攻が、不動産市場に大きな影響を与えることはないと考えられています。もちろん不測の事態が生じた場合の不透明感は常にあるので、楽観はできません。
- 円安の影響
- 物価上昇の影響
- 金利の影響
ここでは上記3つの視点から、不動産市場を取り巻く環境を分析します。
円安の影響
円安により海外投資家の日本投資が活発になっており、日本の不動産価格は全体として押上げ状態にあるといえそうです。
また海外投資家の中でも政府系ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド)は、石油と天然ガスの収入が原資のため、原油価格上昇で資産額は増加しているとみられます。
増加した資金を投資するには、円安の日本が最適なターゲットといえます。まさに日本の不動産は、「買い」が現在の状況です。
物価上昇の影響
物価上昇は最終的には賃金にも影響し、賃金上昇は不動産価格の上昇につながります。この流れは本来自然なことですが、現在のインフレが賃金アップにつながるのかはまったく見通しがありません。
一方、建設資材の価格上昇は深刻な面があります。建設コストが上昇して不動産価格が上がった場合、賃金ベースが変わらないと購買力が低下し、不動産価格を押し下げます。
30年間賃金上昇がみられない日本で、現在のインフレ傾向は望ましい状態とはいえません。
ただしインフレが約1年で落ち着けば、不動産価格の下落に与える影響はないと考えられます。ウクライナ情勢の変化とともに注目したいポイントです。
金利の影響
現在、日本は主要先進国で唯一、金融緩和政策を維持しています。米国との金利差が円安の原因ともいえますが、金融引締めに転換しても円安は変わらないという主張もあります。当面は超低金利政策が続くと考えられます。
では金利が上昇した場合、不動産にどのような影響を与えるのでしょうか。
最悪のシナリオは、金利上昇により不動産価格が下落するリスクです。
仮に金利が上昇したとしても、大幅な利上げは現実的ではありません。ある程度長期にわたってゆるやかに金利上昇が続いた場合は、賃料への反映が考えられます。
そのため金利上昇に比例するように賃料の上昇があれば、不動産価格に影響はないと考えられます。しかし現時点では、不動産価格下落の危険性は少ないといえるでしょう。
結論:ウクライナ侵攻が不動産市場に与える影響は小さい
不動産市場に影響する要因として、円安と物価上昇、金利について専門家の視点を紹介しました。
しかし現状では、大きな変化を及ぼす要因はないといえます。そしてこれら3つの要因にウクライナ情勢が直接影響を与える可能性も低いでしょう。
不動産の購入や売却について考える
ウクライナ情勢の先行きは不透明ですが、不動産市場への影響はあまり大きなものではありません。むしろ経済成長が30年停滞している日本の状況から、売買のタイミングを考える必要がありそうです。
ここではウクライナ情勢に視点を向けつつ、不動産市場の短期的な見通しについてポイントを紹介します。
不動産投資市場
ウクライナ侵攻による不動産投資などへの影響は限定的です。しかし、現在続いているインフレは無視できません。
一般的にインフレの状況は、不動産投資に有利といわれます。理由は簡単で、現金や預金は資産目減りが起きますが、不動産は逆に価格上昇となるため資産価値が上がるからです。
つまり不動産は現状、買いどきと判断できます。
買いどきという市場環境であれば需要は増えるため、売りやすい市場環境ともいえます。数年以内に売却を考えている不動産であれば、現在のインフレが続く状況は条件としてよいでしょう。
インフレは賃料に影響を与えて利回りを高める効果があります。収益物件の場合、期待利回りが上昇するため、取引がまとまりやすいでしょう。
賃貸住宅市場
賃貸住宅市場では、新型コロナウイルス感染症のフェーズが変化し、外国人の入国が緩和されています。
外国人向けの賃貸需要が復活している中で、ウクライナ避難民向けの住宅支援政策もあります。
戦争の長期化と戦後の復興を考えると、ウクライナ避難民への住宅支援は継続する必要があります。そのため住宅需要は、増加する可能性が高いといえます。
入居率の低下したアパートを買い取り、リフォームやリノベーションで再生するなど、需要が回復するタイミングを考えた収益物件の増加戦略も考えられるでしょう。
ウクライナ侵攻下の不動産売却
ウクライナ情勢はいまだ不透明な状態です。
しかし、低金利政策は継続されると考えられ、購入者に対する融資が難しくはありません。そのため、不動産の売却タイミングとして問題はありません。
むしろ2023年4月に任期を迎える日本銀行の総裁人事により、金融緩和政策に変化が生じるのか継続されるのかに注目する必要があるでしょう。
売却予定の不動産を所有しているのであれば、現在の超緩和政策が続く現在がベストなタイミングです。
不動産の売却は、市場の動きに詳しい専門家に依頼すると、よりよいタイミングで行えます。
まずは複数の不動産会社に相談して、さまざまな意見をもらいましょう。そのときは、不動産一括査定サイトの「リビンマッチ」を活用してください。
リビンマッチでは、簡単な物件情報などを入力するだけで、複数の不動産会社から提案を受けられます。いまが売りどきなのか、もしくはもう少し待ったほうがよいのか、などを相談して検討するとよいでしょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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