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ビル売却の進め方と注意点|電通はリースバックを利用?

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ビル売却の進め方と注意点|電通はリースバックを利用?

不動産投資の中で、難易度が高く敬遠しがちなのがビルです。

大手企業、電通の自社ビル売却の事例を紹介しながら、ビル売却の進め方やリーシングおよび修繕履歴の整理などについても解説していきます。

ビルはどのような理由で売却される?

ビルを売却する理由はさまざまです。どのような理由があるのかを見ていきましょう。

資金調達

ビルを売却する理由として最も一般的なのは、資金調達のためです。企業は、資金調達のために自社ビルを売却することがあります。自社ビルを所有することには、税金や維持管理費用がかかります。

そのため、経営的な判断から自社ビルを手放すことで、現金化し、その資金を事業に回すことができます。

また、コロナ禍による業績の悪化や事業の方針変更などによって、不動産を手放す企業も増えています。たとえば、電通はコロナ禍で広告が減少したことによって本社ビルを約3000億円で売却しました。売却益は約890億円とのことです。

不動産価格の上昇

不動産価格が上昇している場合、ビルを高値で売却できます。いずれ売却をするのであれば、不動産市場の好調なタイミングで売却することで、多くの売却益を見込めます。

ビルの価格は市況の影響を受けます。ビルの価格査定には、その収益力に基づいた「直接還元法」が一般的に使用されます。したがって、ビルの収益力に影響を与える市況の変動は、ビルの価格にも影響を与える可能性があると考えられます。


電通の自社ビル売却は「リースバック」

電通グループは2021年6月に東京・汐留の本社ビルを売却すると発表しました。コロナ禍による業績悪化やリモートワークにより出社率の低下など原因で、売却による資金調達や活用を図りました。

電通は譲渡益として約890億円を計上し、本社ビルはリースバックで11年間の賃貸借契約を結びました。リースバックとは、売却した不動産をそのまま賃貸借することで、建物の使用を継続しながら資金調達を行う手法です。電通はリースバックによって、コロナ禍で落ち込んだ業績の立て直しや事業再構築に向けた投資資金を確保する狙いがあったといわれています。

リースバックは所有権が変わるため、修繕費や管理費などのコスト縮減につながります。企業が自社ビルをリースバックするメリットをまとめると以下のとおりです。

  • 早急に資金調達ができる
  • 売却後も使用できる
  • ビルにかかる税負担がなくなる
  • 将来的に買い戻しができる

このように、ビルを単純に手放すのではなく、所有権は放棄しつつ、賃貸としてそのまま使用する方法もあります。まずは不動産会社に相談してください。

小田急電鉄の本社ビル売却

小田急電鉄は、2023年に本社機能を移転することに伴い、本社ビルとしている2棟のビルの売却を決断しました。

1棟は米国の投資ファンドKKRに売却され、もう1棟は第一生命保険などの国内投資家に売却されました。売却価格は合計で約1300億円と推定されます。小田急電鉄は保有資産の見直しを行い、新宿駅周辺で進める再開発などに重点を置くことも売却の大きな理由です。

トヨタ自動車の本社ビル売却

2023年にトヨタ自動車は、所有する東京本社ビル(文京区)を売却し、品川オフィスへの移転を決定しました。同ビルは、電通と同様のリースバックで引き続き使用するもので、在宅勤務の定着による出社率の低下や、所有する不動産の有効活用を総合的に判断して売却を決めたとのことです。

売却による取得金額は非公表で、本社ビルについては、トヨタ不動産と三井不動産が、取得しました。

エイベックスの本社ビル売却

エイベックスは、音楽ライブ収入の落ち込みを補うため、東京都港区の本社ビルを売却しました。

このビルは、2017年12月に開業した地上18階建ての「エイベックスビル」で、2021年3月に、カナダの不動産投資ファンド「ベントール・グリーンオーク株式会社」に約720億円で売却しました。

エイベックスは、本社ビル売却によって2年ぶりの最終黒字となりました。

ビル売却の進め方

ビル売却は以下の手順で進めていきます。

  1. 売却計画の策定
  2. 必要書類の整理
  3. 売却価格のシミュレーション
  4. 仲介会社の選定
  5. 売却活動、レポーティング
  6. 売却先の調査
  7. 売買契約締結
  8. 決済、引渡し

ポイントは、不動産仲介会社に任せきりにするのではなく、自らが売却を主導することです。仲介会社は仲介手数料を享受することが目的であり(早く契約をまとめて、手数料を獲得したい)、ビルオーナーと視点(売却益を最大化したい)が異なるためです。

売却計画の策定

いつ、誰をターゲットに売却するのかなど基本的な計画を立案します。

ビルの売買は、住宅などと異なり、売り出してすぐ成約することは少ないです。経済や金融市況、不動産マーケットなどを把握し、しっかりとした売却計画をたてましょう。また、ビル売却の目的により、設定する価格は異なります。まずは売却目的を明確にしましょう。

さらに、不動産市場やビルの需要・供給バランスなどにより、一般的な住宅などより、変動が大きい傾向にあります。物件の価値が高くなるタイミングを見極められたら、より高い価格で売却できます。

必要書類の整理

売却計画ができれば、売却に必要な書類をまとめます。主な必要書類は以下のとおりです。とくに価格の大きな決定要素になる賃貸借契約書修繕記録などはしっかり整理しましょう。また建築確認申請証検査済証はないと売却できないケースがあるため、必ず確認が必要です。

  • 賃貸借契約書(覚書等を含む)
  • 登記事項証明書
  • 建築確認済証、検査済証
  • 登記済証
  • 固定資産評価証明書
  • 住宅地図
  • 建物図面
  • 公図
  • 地積測量図
  • 修繕履歴一覧、予定工事計画
  • 管理契約書、付随契約書
  • 管理経費一覧表
  • 消防、建築設備等の各種点検報告書
  • 付帯設備表
  • 館内規則

売却価格のシミュレーション

必要書類が整ったら、売却価格のシミュレーションを行います。ビルの売却では収益価格(該当する建物が将来生み出すであろうと予測される価格)が重要視されます。収益価格は直接還元法により簡単にイメージがつかめます。求め方は以下のとおりです。

収益価格 = 年間のNOI ÷ 還元利回り

NOI(NetOperatingIncomeの略)とは、純営業収益のことで、総賃料収入から管理運営にかかる費用(固定資産税、管理費、修繕費等)を控除したものです。

還元利回りは、立地、用途、物件規模、築年数などに応じて増減します。周辺取引事例を調べ、売却したいビルの還元利回りを仮定していきます。また収益価格以外にも専有単価(価格 ÷ 専有面積)、一種単価(容積100%あたりの土地単価)は把握しておくようにしましょう。

収益価格のシミュレーション

以下の条件でビルの収益価格をシミュレーションしてみます。

  • ビルの年間NOI:5,000万円
  • 専有面積:300坪
  • 土地面積:80坪
  • 容積率:500%
  • 周辺取引事例から還元利回り4.0%前後が期待できると仮定
収益価格のシミュレーション
還元利回り 収益価格 専有単価 一種単価
3.8% 131,578万円 438万円/坪 328万円/一種
4.0% 125,000万円 416万円/坪 312万円/一種
4.2% 119,047万円 396万円/坪 297万円/一種

仲介会社の選定

不動産仲介会社は、ビルの売買実績が豊富な大手の会社がおすすめです。ビルの買い手は、個人投資、事業法人、プロの不動産会社などさまざまです。住宅を売却する場合とターゲットが異なることが多く、店舗や事務所物件の目利きが出来る仲介会社は限られています。

そのため、会社として情報が多く、経験のあるスタッフが多い仲介会社を選定してください。必ず複数の会社に相談し、それぞれから売却提案を受けるようにしましょう。

仲介会社の力量でアプローチできる買い手候補が決まるため、支払う仲介手数料など目先の利益にとらわれず、実績や信頼性を重視して慎重に決定する必要があります。

売却活動のレポーティング

売却活動の開始後、決して仲介会社に任せきりにせず、定期的な進捗報告を受けるようにします。営業担当者が直感で活動しないよう、まず営業する先をリストアップして貰うとよいでしょう。適宜、営業リストをアップデートしてもらい、売却活動の進捗報告を受けるようにしてください。

売却活動がうまく進捗しないようであれば、設定した売却価格やスケジュールの見直しを行いましょう。また仲介会社に問題があるようであれば、仲介会社の変更も検討しましょう。

ビルの売却は専属専任媒介契約にすべきという情報がありますが、これは仲介会社目線の話です。仲介会社との契約は、一般媒介契約で問題なく、柔軟に委託先を変更できるようにしておきましょう。

売却先の調査

売却活動が進み、購入意向申込書を受領したら、買い手の調査をしっかり行います。支払い能力はもちろんのこと、反社会的勢力排除の対策として反社チェックは欠かせません。

ビルの場合、買い手は個人でなく法人になることが多いです。仲介会社で売却先候補の詳細調査ができない場合、付き合いのある取引銀行などに依頼するとよいでしょう。また帝国データバンクや東京商工リサーチなどを活用すると精度が高い調査ができます。

売買契約締結

売買契約は、弁護士に契約書のリーガルチェック・契約審査を依頼し、法務リスクを可能な限り回避することをおすすめします。不動産売買契約書にはおおむね以下の事項を記載します。

  • 売買物件の表示
  • 売買代金、手付金等の額、支払日
  • 所有権の移転と引渡し
  • 公租公課の清算
  • ローン特約
  • 付帯設備等の引渡し
  • 手付解除
  • 引渡し前の物件の滅失および毀損に関する事項
  • 契約違反による解除
  • 契約不適合責任
  • 特約事項など

売買契約書は仲介会社が作成するのが一般的ですが、契約作成段階から弁護士に依頼したほうがよいでしょう。買い手との交渉で主導権を握るため、売買契約書はこちら側で作成し、買い手に渡すようにしましょう。

ビル売却の注意点

ビル売却には、一般住宅とは異なる注意点が多くあります。事前に確認し、損をしたりトラブルに巻き込まれたりすることがないように注意してください。

リーシング

ビルの価格は、立地、築年数などのさまざまな要因が影響しますが、テナントの稼働率や賃料が非常に重要なポイントになります。稼働が高く、収益率の高いビルはマーケットから高く評価され、高い売却価格につながります。

テナントを誘致する業務のことをリーシングといいますが、リーシング業務は不動産投資で最も大切なものです。優良テナントを入居させたり、既存のテナントの満足度を向上させたりすることなどによって、賃料の増加を図ることが求められます。

そのため、売却活動にはいる前に極力空室を減らしておくことが重要です。空室が埋まらない場合は、フリーレントも検討しましょう。フリーレントとは、入居してから数カ月の間だけ賃料を無料にすることです。

なお、築古のビルの場合、建替え前提で購入を検討する投資家もいます。その場合、既存テナントの立退き費用を抑えるため、空室が多いビルのほうが投資しやすくなります。建替え前提で売却できるか検証するには、前述した専有単価や一種単価が重要になります。周辺取引事例を分析し、可能性を検討しましょう。

修繕履歴

適切に修繕が実施され、大規模な改修を行ってきたビルは、安全性が高い物件として、買い手から高く評価されます。

そのため、修繕履歴は確実に残しておきましょう。いつ、どの会社に、どの工事を行ったか、工事報告書と一緒にエクセルなどで履歴を残しておいてください。修繕履歴がない場合、買い手は築年数に応じた保守的な修繕費用を計上することになります。

またビルの規模が大きくなるほど、買い手はデューデリジェンス(物件調査)の一環で、エンジニアリングレポートを取得するのが一般的です。

エンジニアリングレポートとは、対象ビルの遵法性調査、建築物の劣化診断、将来必要となる修繕更新費用の試算、アスベストやPCB(有機塩素化合物)などの環境診断、所在地の土壌汚染リスク、地震リスク評価などの調査を行うものです。

エンジニアリングレポートの修繕更新費用は、今後10〜12年間の想定費用が試算され、買い手はこの金額をベースに投資判断をしてきます。修繕履歴がない場合や売却物件の規模が大きい場合、あらかじめエンジニアリングレポートを取得しておくことで、スムーズに売却活動が行えます。発注金額は物件規模や発注先により異なりますが100万円程度です。

また消防設備点検や建築設備点検で不具合のあるものは、できる限り売却活動前に是正しておきましょう。ビルは売買価格が大きく、大抵の買い手は銀行などから借入を行い投資します。そのため遵法性確保が購入条件となることが多いので、あらかじめ対応しておくことが望まれます。

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 リビンマッチ編集部

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