空き家の維持費、いくらがベスト?隠された負担とリスク回避の方法とは
空き家の維持費は年10万円未満の人が過半数以上を占めていますが、費用負担が少ないほど劣化や損傷が進行し、建物の価値が低下したり、修復費用が高額になったりするケースが多いのが現状です。
キレイな状態を維持するには、年30万円以上が望ましいです。その理由や空き家にしておく期間が長いと起こるリスク、リスク回避として空き家の費用負担を軽減する方法をわかりやすく解説します。
もくじ
空き家の維持費は年5~10万円未満の人が多い
空き家の維持負担は、年にどのくらいなのでしょうか。
国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査報告書」によると、年5〜10万円未満の支払いで済ませている人がもっとも多いと報告されています。全国5,791人のうち、18.0%でした。次に多いのは、年3〜5万円未満で全体の14.6%を占めています。
画像引用:国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査報告書」
また、3万円未満など年10万円未満の支払いで済ませている人は全体の66.9%と、約7割存在します。一方、年30万円以上の人は全体の7.4%でした。
年5~10万円未満では部分的に劣化や損傷のある家が多い
金額によって空き家の状態は、どのように変わるのでしょうか。
同調査によると、「屋根の変形や柱の傾きなどが生じている」と回答したうちの15.3%が、年5〜10万円未満の維持費だったと回答しています。
画像引用:国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査報告書」
1万円未満などを含む年10万円までの人で見ると、80.4%という数字が出ました。つまり、維持費が年10万円未満の人の約8割は、空き家に屋根の変形や柱の傾きが見られるとわかります。
また、住宅の外回りまたは室内に「全体」的に腐朽・破損があると答えた人は年5〜10万円未満の人で9.1%、年10万円までの人で見ると84.9%でした。
さらに、「部分」的に腐朽・破損があると答えた人は年5〜10万円未満の人で19.8%、年10万円までの人で見ると70.1%です。
つまり、年10万円未満の維持費では部分的に劣化や損傷のある家が多いことがわかります。もとの家の状態にもよりますが、屋根や壁などの修繕費用にはある程度のお金がかかります。
一般的に、築年数が20年未満なら全体的に腐朽や破損があるとは考えにくいですが、修繕にある程度の費用をかけられないと経年劣化によって家のあちこちが傷んでしまう危険性があります。
劣化や損傷なしで管理できている人は年30万円以上が多い
一方、維持費に年30万円以上かけられる人の空き家の状態はどうでしょうか。
同調査によると、年30万円以上で「屋根の変形や柱の傾きなどが生じている」と答えた人は2.7%でした。住宅の外回りまたは室内に「部分」的に腐朽・破損があると答えた人は、5.4%です。
「全体」的に腐朽・破損があると答えた人にいたっては、ひとりもいませんでした。
今後5年間は空き家のままにしておきたい人が多い
今後の空き家利用については、どのように考えているのでしょうか。
同調査によると、今後5年程度のうちの利用意向については「空き家にしておく(物置を含む)」が 28.0%ともっとも高くなっています。続いて、「セカンドハウスなどとして利用」が 18.1%、「売却」が 17.3%です。
画像引用:国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査報告書」
つまり、今後5年間は空き家のままにしておきたい人が多いことがわかります。
空き家を所有する約3分の1の人が、何もせずそのままにしておくつもりなのはなぜでしょうか。
物置として使っているなど活用している人もいますが、中には「どうしたらよいかわからない」「忙しくて使い道を検討するのを先延ばしにしている」という人もいるでしょう。
空き家問題が深刻化する現代では、今後空き家をどうするかは重要な課題です。次の項から、空き家を放置するリスクを解説します。
キレイに維持するには、それなりの費用が!長年放置するリスク
国土交通省の「空き家対策の現状について」によると、空き家の総数は1998〜2018年の20年間で576万戸から849万戸、つまり約1.5倍に増えています。
画像引用:国土交通省「空き家対策の現状について」
空き家は放っておくと状態によっては、「特定空き家」に指定され固定資産税などの出費が増えてしまいます。特定空き家は、いわゆるボロボロの家を想像するとわかりやすいでしょう。お化け屋敷やゴミ屋敷といわれるような家です。
特定空き家はそのまま放置すると倒壊したり、安全上の問題があったり、衛生上有害となったりするおそれがあります。
また、空き家のリスクはそれだけではありません。この項では長年空き家にしておくと、どのようなリスクが発生するのか解説します。
管理を怠ると固定資産税が約4倍、都市計画税が約2倍に
不動産には固定資産税がかかり、さらに都市計画区域内の市街化区域内における所有者には都市計画税もかかります。
ただし、更地のうえに住宅を建てると「住宅用地の特例」が適用されますので土地の固定資産税や都市計画税が安くなります。一定の要件を満たす住宅の土地は、課税標準額が以下のように軽減されます。
課税標準額 | 小規模住宅用地 (=200㎡以下の住宅用地のこと) |
一般住宅用地 (=200㎡超えの住宅用地のこと) |
---|---|---|
固定資産税 | 固定資産税評価額×6分の1 | 固定資産税評価額×3分の1 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×3分の1 | 固定資産税評価額×3分の2 |
しかし、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて勧告がされた特定空き家の敷地は、住宅用地の課税標準の特例対象から除外されます。
特例対象から除外され非住宅用地となった土地は、住宅用地の特例、つまり「相続した土地の税金を安くする軽減措置がなくなってしまう」のです。
そのため、固定資産税が約4倍、都市計画税が約2倍に上がります。「固定資産税は6倍じゃないの?」と思った人もいるかもしれません。しかし、実際には非住宅用地となっても、税金を計算するもとになる課税標準額は、固定資産税評価額の70%(東京23区などは65%)に軽減されるルールです。
令和3年度の地方税法の改正により、商業地等に係る固定資産税・都市計画税の負担調整措置については、令和5年度まで現行の制度が継続されます。
商業地等の固定資産税・都市計画税の計算方法
課 税 標 準 額 × 税率 = 税額
(価格×70%)
引用:東京都主税局「非住宅用地(PDF)」商業地等(住宅用地以外の宅地等)の固定資産税・都市計画税の負担調整措置が継続されます
そのため、固定資産税×6分の1だから6倍ではなく、固定資産税×10分の7ですので約4倍になります。
価値が低下。売却などの選択肢が狭まるおそれ
空き家を長年放置しておくと価値が低下し、結果として売却や買取などの選択肢が狭まってしまうおそれがあります。
価値が低下してしまう1番の理由は、経年劣化です。時間が経てば経つほど老朽化は進んでいきます。
特に人が住んでいない家は老朽化が早く、そのぶん修繕費用がかかります。修繕費用が多くかかるような家は、売却したくても希望する値段で売れないかもしれません。
老朽化した家は買い手が見つかりにくかったり、売却価格が低かったりしますので、売主や不動産会社の利益も少なくなります。
そのため、売却や買取を断られてしまう危険性さえあるのです。
「空き家をどうするか」問題の先送りに。自分の死後、迷惑をかけるおそれ
もともと空き家なのですから自分の死後も空き家となり、子どもや孫が相続することになるでしょう。
相続した家が近くにある場合は自分で管理できるかもしれませんが、遠くにある場合は管理会社に任せることになり、1ヵ月に約5,000円~1万円の出費です。
相続しただけでもお金がかかり、そのうえ固定資産税と家の維持費がかかるとなれば子どもや孫にとって「負の遺産」になるかもしれません。
また、状態によっては近隣トラブルの原因になるおそれがあります。たとえば、災害によって倒壊したり、害虫などが発生したりするリスクがあり、場合によっては近隣からクレームがくるかもしれません。
費用の負担や近隣トラブルの対応を考えて売却を検討するかもしれませんが、状態によっては売りたくても売れない危険性があります。
空き家が古くなりすぎて負の遺産になってしまう前に、自分の代で有効活用したり売却したりと、対策することをおすすめします。
リスク回避!費用負担を軽減する方法
空き家は活用したり売却したりすることによって、負担が減るだけでなく、ほかの人に役立つこともあります。
先延ばしにせず、空き家を今後どうすべきか、いまのうちに検討しましょう。
セカンドハウスにする
セカンドハウスとは第二の家です。セカンドハウスとして活用するには、以下のいずれかの要件にあてはまる必要があります。
- 毎月1日以上は住む
- 平日は都心に住んでいるが、週末はセカンドハウスで過ごす
- 住んでいる家が職場から遠く、セカンドハウスは仕事のために平日利用している
セカンドハウスとして認められると、「住宅用地に係る特例」により固定資産税・都市計画税が、「住宅・住宅用地の特例」により不動産取得税が軽減される可能性があります。
セカンドハウスは注目されているライフスタイルで、今後希望する人も増えていくでしょう。
売却する
空き家をそのまま売却する方法は、主にふたつあります。「中古戸建」または「古家付き土地」として売る方法です。
そのままの状態で売却すると、解体しないぶん出費を抑えることにつながります。
中古戸建として売る
家の状態がよく、築年数が約20年以内なら、まずは中古戸建として売却することを検討しましょう。
築年数が浅く、リフォームの必要がない場合は、高く売れる可能性もあります。築10年以内など築年数が浅いほど高値がつきやすいので、なるべく早く売却することをおすすめします。
古家付き土地として売る
築20年を超えたら、戸建の建物部分の価値はほぼゼロになるといわれています。その期間中、メンテナンスやリフォームをしていない場合は、中古戸建として売るのが難しいと判断される場合もあります。
中古戸建として売却できるか複数の不動産会社に確認してみるのが先決ですが、どうしても売れない場合は古家付き土地として売るのもよいでしょう。ただし、解体費用の負担をしないぶん、売却価格は安くなります。
最近は空き家が見直されており、築20年を超える家も条件によっては高く売れる可能性があります。たとえば投資物件やセカンドハウスとして購入する人もいますので、査定価格をもとに売り出し方を判断するとよいでしょう。
買取に出す
売却する方法として、不動産会社に買い取ってもらう方法もあります。通常の仲介売却ではなく、不動産会社に直接売却します。
買取は一般的な売却に比べて早く家を手放せますが、売却価格が通常の5〜8割になってしまう危険性があります。
しかし、以下のようなケースでは有効な手段といえるでしょう。
- 需要が少ない地域など、仲介売却でなかなか買い手が見つからなかった
- 特定空き家に指定されそう
- 急いで売却したい
いつまでも空き家にはできない。早めの対策を!
使わない空き家は、できるだけ早めに対策するのが望ましいです。空き家は所有しているだけでも税金や維持費がかかり、場合によっては近隣トラブルなどのリスクにつながるからです。
さらに、放置した結果、特定空き家に指定され勧告を受けると、通常の数倍の税金を支払わなければなりません。
今後、売却するか、有効活用するか判断するには、まず空き家の価値を把握する必要があります。不動産会社に査定してもらいましょう。
ただし、1社ずつ査定を依頼すると時間がかかります。空き家を放置してもよいことはありません。次の段階に早く進むには、不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」の利用がおすすめです。
リビンマッチでは、弊社と第三者による審査基準に合格した会社のみが登録しており、完全無料で最大6社に査定依頼できます。
空き家に悩んでいる方は、まず査定価格を見て家をどうするのが最善か相談してみましょう。優良会社なら、的確なアドバイスをしてくれるはずです。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
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