「不動産鑑定」って?依頼すべき?その判断基準を初心者向けに解説

不動産の価値を適切に判断するのに頼りになるのが「不動産鑑定」です。不動産鑑定士という国家資格を持つ専門家が、客観的な視点から科学的手法で不動産価格を算出してくれます。売買時の適正価格の判断はもちろん、相続の遺産分割や賃貸借の賃料設定など、さまざまなシーンで活用されています。
ただし、依頼する価値があるかどうか自身で判断しにくいこともあるでしょう。この記事では初心者にもわかりやすく、不動産鑑定とはどういうものなのか、依頼するメリットは何か、依頼を検討すべきケースとは具体的にどのようなものなのかを解説します。
不動産鑑定とは
不動産鑑定とは、国家資格である不動産鑑定士の資格を持つ者が不動産の経済価値を判定し、その結果から価格を算定することです。
国が定めた評価基準がある
不動産鑑定士は、国土交通省が定めた「不動産鑑定評価基準」に準拠した不動産の鑑定をおこないます。この鑑定基準は2部で構成されており、具体的には不動産鑑定評価全般における実務指針が記載された「総論」と、不動産の種別や類型ごとの評価手法といった具体的指針が記載された「各論」でまとめられています。
もし基準に従わなかった場合、懲戒処分の対象になりえるため、不動産鑑定士は評価基準に従って鑑定することが強く求められています。
法にもとづいて評価される
「不動産の鑑定評価に関する法律」は、適正な価格形成の促進を目的に1963年に制定されました。それに伴い、鑑定士は公平妥当な態度を保持することが定められています。
そのため、鑑定士は鑑定評価の社会的かつ公共的意義を理解し、その責務を自覚したうえで、的確かつ誠実な鑑定評価活動を実践することにより、社会一般の信頼と期待に報いなければなりません。
そのため、鑑定評価にあたっては以下のような内容が定められています。
- 自己または関係人における利害の有無、そのほか、いかなる理由にかかわらず、公平かつ妥当な態度を保持すること
- 専門職業家として細心の注意を払う必要があること
- 公平な鑑定評価を害するおそれのあるときは、不動産の鑑定評価を引き受けないこと
評価が誤っていたら損害賠償を請求できる
不動産鑑定士は、日本国内でおこなった不動産鑑定業務に起因して他人に損害を与えた場合、法律上の賠償責任を負います。
そのため、鑑定評価書に対して内容に疑問が生じた際には、鑑定士や鑑定業者に対して損害賠償が請求できる場合があります。
不動産鑑定士が不当な鑑定評価をおこなった疑いがある場合は、国土交通大臣またはその不動産鑑定士が所属する不動産鑑定業者が登録を受けた都道府県知事に、資料を添えたうえで、その事実の報告が可能です。
国土交通大臣は、不動産鑑定士が故意に不当な鑑定評価をおこなった場合は、懲戒処分として1年以内の期間を定めて鑑定評価などの業務を禁止する権利があります。
不動産鑑定士は公的な仕事を受注することも多く、国から依頼を受けて地価公示地価(公示地価)に関する鑑定評価をおこなうほか、都道府県の地価調査や路線価格の評価などをおこないます。このような仕事は会社経営者や不動産投資家などにも大きな影響を与えるため、不動産鑑定士は大きな責任を負っているのです。
どんな人がどんな目的で依頼している?
所有する不動産の適正価格を把握したいときなどに依頼します。ここでは、どんな人がどのような目的で不動産鑑定を依頼するのかについて解説します。
相続した人が遺産分割のために
不動産鑑定は、相続した不動産を遺産分割する目的で利用されます。遺産分割における不動産の評価方法について法律の定めはないため、一般的に不動産評価にあたっては時価(実勢価格)を採用します。
なぜなら、相続した不動産を現金化するといくらになるのかを知るには、もっとも公平な方法であると考えられるからです。相続した不動産を遺産分割する際には、適正な価格にもとづいた慎重な相続手続きをおこなうことが求められます。
不動産の価格は経済状況や社会情勢に連動して複雑化するため、専門家でなければ適正に評価できません。そこで専門家として不動産鑑定士は売主や買主の事情などを除いた、対象不動産に対する正確な評価額を算定します。
一般的には、不動産鑑定士による鑑定結果が出たあとに、鑑定結果を踏まえた対象不動産の評価額について相続人間で協議がおこなわれます。また、通常は裁判所も不動産の評価額については、不動産鑑定評価額を採用します。
そのため、鑑定評価額が提示された時点で、相続人全員がその評価に合意するケースも珍しくありません。
不動産を担保にしてお金を借りるために
不動産の鑑定は、不動産を担保にしてお金を借りる目的で利用されます。不動産を担保にして金融機関からお金を借りる「不動産担保ローン」では、不動産鑑定士が発行する不動産鑑定評価書があると、融資額の決定などの金融機関との交渉がスムーズに進みやすくなります。
鑑定評価で算定した不動産の適正な価値にもとづいて金融機関からお金を借りるのであれば、貸主・借主の双方にとって将来の予期せぬトラブル防止につながります。
不動産担保ローンの借入可能額は、担保対象となる不動産評価額の6~8割程度が一般的です。ただし、金融機関ごとに評価基準や計算方法は異なるため、それぞれで借入可能額は変動します。
不動産担保ローンは、無担保ローンに比べて低金利でまとまった金額を借りられることがメリットです。
相続税申告において土地評価額を下げるために
不動産鑑定は、相続税の申告時における土地の評価を低く算定する目的で利用されます。相続税の申告時における土地の評価方法は、原則として路線価方式です。しかし、地域性や実際の利便性などにより、実勢価格より路線価評価のほうが高くなる場合もあります。
路線価は時価の8割を目安としていますが、道路との接道の悪さ、不整形地で利用が難しい、土壌汚染が認められるような土地では路線価が時価を上回ってしまうケースもあります。このような場合には、不動産鑑定評価が認められます。
「実際にはこんな価格では売れないのに、相続税の評価額が高すぎる」「譲渡所得の算定における適正な評価額を出したい」などの場合に、鑑定評価を受けるのは有効な方法です。
不動産の路線価評価が高いのであれば、不動産鑑定士に相談してみるのがおすすめです。
依頼すべきかの判断基準
不動産鑑定は、不動産の適正な価格を算定するために必要です。依頼費用の相場は土地だけの場合で約20万、建物もセットなら約30万円のため、その目的や利用用途を考慮しましょう。ここでは、不動産鑑定を依頼すべきかの基準について解説します。
適正価格を公的に証明する必要があるか
不動産鑑定士が作成する不動産鑑定評価書は、公的機関に提出し、不動産の適正な価値を証明するために必要です。
各省庁において補助・助成制度の申請や税金の免除などで、不動産の鑑定評価による適正価格が必要なことが規定されている場合もあります。このような場合には適正価格を証明すべく、国や各省庁へ提出する不動産鑑定評価書が必要です。
また、不動産の相続や売買における税金納付の際に不動産の適正な評価証明を求められる場合があります。こういった場合にも不動産鑑定評価書が必要です。
さらには、不動産の価格・地代・家賃を争点とする裁判では、適正な価格について争われる場合もあります。
不動産売買の際に適正価格を証明する必要があるか
不動産鑑定士が作成する不動産鑑定評価書は、法人との不動産取引の際に、不動産の適正な価値を証明するために必要です。
不動産鑑定評価書の存在は、不動産売買を円滑に成立させるための重要な交渉材料になります。法人相手の不動産取引の場合、不動産鑑定評価書は社内稟議や判断資料となるため、社内や社外とのトラブル防止に役立ちます。
また、大規模な土地・不整形地・テナントビル・賃料・借地権などの価値判断が難しい不動産の場合は、あらかじめ鑑定評価を受けておくことで、適正価格にもとづいた取引が可能です。
生前贈与するか相続するか迷った際に適正価格を確認したいか
自宅を生前贈与するのがよいのか、相続したほうがよいのか、その判断は事前に鑑定評価をおこなうことで判断しやすくなります。
不動産については、生前贈与と相続のどちらも、基本的には時価評価ではなく相続税評価額を用いて計算します。
相続税評価額は、市区町村から送られてくる固定資産税課税明細書で把握が可能です。これを鑑定評価額と比較することで、生前贈与と相続どちらが得かの判断材料になりえます。
こんな人はまず、不動産「査定」がおすすめ
不動産査定とは対象不動産にどれくらいの価値があるのか、推定売却価格を算定することです。ここでは、不動産査定を受けるべき人について解説します。
無料で不動産の価値を知りたい人
不動産査定は営業行為の一環とされているため、無料で受けられます。
不動産会社が得る報酬は売却が成立した際の仲介手数料のみであり、査定料はかかりません。不動産を売却する際には不動産会社へ仲介を依頼しますが、事前に不動産査定を依頼することが一般的です。
不動産の資産評価をおこないたい法人や企業
企業や法人が所有する不動産は、会計上の重要な資産として位置づけられています。定期的な資産評価は不可欠であり、不動産の価値を正確に把握することは、会計報告書の信頼性や資産状況を正確に反映するうえで重要です。
無料査定を利用することで専門家の評価を受けられるため、コストを削減しつつ効率的な資産管理が可能です。不動産会社が提供する査定結果を活用することで、適切な経営戦略の策定や資産管理の最適化に役立つでしょう。
不動産の正確な相場を知りたい人
不動産の正確な相場を知りたい人には、不動産査定がおすすめです。ポイントは、不動産査定を必ず複数社に依頼することです。
1社に依頼するだけでは正確な相場が把握できません。複数の不動産会社に査定依頼して比較することで、より適切な価格を把握できます。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
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