不動産市況はやばい?もうピークアウトしている?将来に備えた対策とは

不動産市況(市場での取引状況)は、日々刻々と変化しています。そのため今後の動向をいち早く予想し、先手を取って行動することは不動産で利益を得るうえで必要不可欠です。
不動産市況は今後どうなるのか、さまざまな見解がありますが、ここでは国土交通省などの最新データと、大手不動産会社の意見を中心に、将来の日本の不動産市況はどうなるのか、起こりうるリスクや対策をわかりやすく解説します。
もくじ
不動産市況はすでにピークアウトしているといわれる理由
国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数」によれば、2013年以降、特にマンション価格は一貫して上昇を続けてきました。
一方で、戸建て住宅や住宅地の価格も2019年頃と比べると上昇していますが、2025年現在ではその勢いが明らかに鈍化しています。

不動産価格指数(令和7年5月30日公表)
画像引用:国土交通省「不動産価格指数(令和7年5月30日公表) 」
不動産価格指数は、年間30万件以上に及ぶ不動産の取引データをもとに、国土交通省が不動産市場の動向を数値化したものです。これまで堅調な上昇トレンドが続いていましたが、最近では金利上昇や経済状況の変化を背景に、特に戸建て住宅の価格に陰りが見え始めています。
すでに地方では価格の下落が目立つ地域もあり、全国的に見ても一部では「不動産市況はピークを過ぎたのではないか」との声が上がり始めています。
そこで本項では、不動産市況のピークアウトが懸念される背景について詳しく解説します。
売り物件の在庫が増えている
東京オリンピックの開催が決定した2013年以降の5年間は、投資目的で多くの新築マンションが購入されました。しかし、投資目的の新築物件は多くが完成と同時に売り出され、市場にあふれています。
その結果、現在では供給過多による価格の下落が進み、原価を下回る「原価割れ」が発生しているケースが多々あります。そのなかには、1年以上も中古市場に出品され続け、売却が難しい状況の物件もあります。
また、築2~3年程度の都心タワーマンションにおいても空室の在庫が目立ち、買い手の見つからない状況が続いています。こうしたことから、供給過多であることは明白であり、供給側が売り出し価格を下げ始めればさらなる市況の下落が予想されます。
銀行の融資が厳しくなった
これまでの不動産価格上昇は、超低金利と金融緩和を背景とした積極的な銀行融資によって支えられてきました。しかし、2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除したことで、状況は変わりつつあります。
短期金利の引き上げに加え、金融機関側も今後の金利上昇リスクを見越して、不動産投資や住宅ローンに対する審査を慎重に進めるようになったのです。特に地方や築古物件への融資は厳格化され、購入希望者にとって以前より、「借りにくい」「借りても金利が高い」といった状況が生まれています。
このような融資環境の変化は、実需や投資意欲の鈍化を引き起こし、不動産市況の天井感を印象づける要因となっています。
それでも日本の金利は世界的に見れば低水準
とはいえ、国際的に見れば日本の住宅ローン金利は依然として非常に低水準にあります。
たとえば、2025年5月時点でアメリカの30年固定住宅ローン金利は6.86~6.9%前後、ヨーロッパの主要国でも3.5~4.5%が一般的です。
一方、日本の「フラット35」は1.89%、変動型では0.3~1.0%台と、先進国の中では圧倒的に低い金利が維持されています。このため、「融資は厳しくなったが、借り手にとっての金利負担はまだ軽い」とする見方も根強くあります。
しかし、金利の絶対水準が低いからといって、不動産市場全体が引き続き堅調とは限りません。むしろ、これまでの上昇相場は「異常なまでの金融緩和」が支えていたという側面も強く、その下支えが弱まりつつある今、価格の調整局面に入るのは自然な流れともいえるのです。
リスク回避のため、海外への不動産投資が増えた
外国資本から見ると、円安の進行により国内不動産の外貨換算価値は下落していると捉えられます。今後さらに円安が加速すれば、外国資本による国内不動産への投資は減少が予測されます。
また、2023年第3四半期は国内資本の海外不動産への投資が大きく伸びました。これは国内向けに投資をおこなってきた投資家が、リスク回避のため海外への不動産投資を拡大したと判断されます。
今後も円安や経済の低成長が続くとすると、国内投資家の海外不動産への投資が拡大すると予想され、日本の不動産市況は下落する危険性が否めないでしょう。
長期的に見るとインフレが不動産価格の下落要因に?
インフレによりモノの価値が上がり通貨の価値が下がると、建築コストが上昇し不動産価格の下落要因になります。
住宅業界は、建築資材や設備機器の値上がりから利益確保が難しくなり、販売価格の値上げを余儀なくされました。その結果、戸建て住宅や新築マンションの売れ行きは鈍化し、売れ残り在庫が急増しています。
また、消費者の購買力を超えた新築住宅に代えて、中古マンションの需要が急速に高まり、都心一等地の中古マンションのなかには、新築を超える価格設定の物件も多く見られるようになりました。
一方で、食料品などの値上がりや企業の賃金カットなどから家計は急速に圧迫され、住宅ローンの返済に窮する人も散見されています。日本全体の物価が上がっているにもかかわらず、給与が増えなければ、不動産を購入する余裕のある人は少なくなります。
その結果として最終的には建物の価格だけでなく、「消費」という概念がないために価値が下がりにくいとされる「土地」の価格までもを下げるという、最悪のシナリオになることも懸念されます。
以上のことから、長期的に見ると物価上昇は不動産市況の動きを沈め、不動産価格の下落要因になると予測されています。
今後の不動産市況はどうなる?
不動産市況が「やばい」といわれる一方で、実際の市場動向は一様ではなく、エリアや物件タイプによって異なる様相を見せています。直近の企業業績や需給状況をふまえると、今後は「二極化」がさらに進むと考えられます。
都心・首都圏では実需と企業の好調さが支えに
東京都心やその周辺では「実際に住むための購入」や、富裕層による不動産ニーズが引き続き強く、市場の下支えとなっています。
たとえば、「2024年全国分譲マンション売主グループ別供給戸数ランキング」で1位を獲得したオープンハウスは、2025年9月期第2四半期の決算で営業利益737億円を記録し、前年の約1.3倍と大きく伸びました。さらに、年間の利益予想も前年より増える見通しです。
これは、2024年の早い時期に売れ残りの在庫を整理し、値引きせずに売れる体制を整えたことが成功した結果といえます。
また、都心の不動産は日本国内だけでなく海外の投資家からも注目されており、価格が大きく下がることなく、安定した動きを見せています。
郊外や地方、築古物件は値下がり傾向に
一方で、郊外や地方の物件、また築年数が古い住宅については、人口減少や買い手の減少により価格を下げざるを得ないケースが増えています。
特に、駅から遠い、周辺に商業施設や医療機関が少ないといった「利便性に乏しい物件」では、価格をある程度下げなければ買い手がつかないという状況が顕著になってきました。
このようなエリアは今後も資産価値が下がるリスクを抱えており、希望する価格で売却できなかったり、売却までに長期間を要したりといった不安要素を抱えているのが実情です。
ただし、例外もあります。たとえば、以下のような条件下では、逆に価格が上昇しているケースも見られます。
- リゾート地や移住先として人気の高い地域(軽井沢、鎌倉、熱海など)
- 再開発が盛んなエリア
- リノベーション前提で価値を見い出せる築古物件
したがって、物件の価値は一律ではなく、立地・ニーズ・再活用の可能性などを踏まえた個別判断が大切です。
不動産市況の今後は二極化
今後の不動産市況は「どこでも同じ」ではなく、立地や物件の条件によって大きく差が開いていくと見られています。
たとえば、都心や利便性の高いエリアでは、需要が安定しており、価格も高水準を維持しやすい状況が続いています。一方で地方や郊外、築年数の古い物件では、買い手がつかず価格が下がる傾向が強まっています。
つまり、以下のように、今後は「資産として強い物件」と「売れにくい物件」がはっきり分かれていくと予想できるでしょう。
| エリア・物件の特徴 | 今後の傾向 |
|---|---|
| 都心・主要駅近・利便性が高い物件 | 価格は維持、場合によっては上昇 |
| 地方・郊外・築古・利便性が低い物件 | 売れにくく、値下がりリスクが高い |
そのため、「市況が悪化している」と感じたときは、自分の所有・検討している物件がどちらの傾向にあるのかを見極めたうえで、適切な行動をとることが重要です。
- 購入を検討しているなら:今後も価値が維持されやすい立地か?
- 売却を検討しているなら:市況が堅調な今のうちに売る価値があるか?
不動産は「どこでも同じ」ではありません。全体の流れと自分の状況を照らし合わせながら判断していきましょう。
今したい今後の不動産市況に備えた対策
不動産市況がピークアウトを迎え不動産価格が大きく下落した際には、購入価格よりも売却価格が大幅に減少し、最終的な収支が赤字に転じるリスクが増大します。
不動産価格下落の主な要因は在庫数の増加や銀行融資の冷え込み、海外不動産投資の増加やインフレ景気による建築コストの高騰、少子高齢化などさまざまです。
ピークアウト後の不動産市況を乗り切るためには、十分に備えた対策を施し、出口戦略を上手に迎えられることが鍵となります。
ここでは、今したい今後の不動産市況に備えた対策を紹介します。
固定金利で金利が安いうちに購入する
今後は住宅ローン金利も上昇傾向にあると予測されます。
変動金利とは違い固定金利であれば、経済情勢によって金利が上昇した場合でも、返済総額が増加するリスクがありません。固定金利の場合は将来の適用金利がわからず、返済総額が未確定といったリスクがないためです。
仮に、5,000万円の借入をし35年で返済する計画を立てた場合、金利が1%違うだけでも返済総額が900万円以上も変わってきます。
以上のことから鑑みても、不動産価格が下がってから購入しようと待つのではなく、固定金利で少しでも金利が安いうちに購入しておくことが得策だといえます。
値下がりしづらい立地の不動産に投資する
どんな建物でも、年月がたてば老朽化し不動産評価は下がっていきます。しかし、立地に関しては仮に10年たっても評価が変動しなかったり、都市の開発状況によっては反対に値上がりしたりする場合があります。
投資用不動産を購入する際には、居住ニーズが見込まれるエリアや建物を選ぶことが重要です。交通アクセスがよく人口も増加傾向にあるエリアや、街全体の発展が進み商業ビルの建設や都市開発が促進されるエリアは、長期的な不動産需要が期待できます。
また、立地条件のよいエリアでは安定した家賃収入が期待できるため、物件のメンテナンスにもお金がかけやすくなります。
こまめなメンテナンスで資産価値を保つ
収益性を安定させて高い賃料を維持するには、こまめなメンテナンスで資産価値を保つ必要があります。
経年により老朽化した不動産でも、定期的な修繕やメンテナンスを実施することで、安定した家賃収入が見込めます。築年数が古く家賃や管理費が高めの物件でも、メンテナンスが正常になされていれば入居者が付きやすく、資産価値を保つことにつながります。
高値で売却しやすいうちに売る
不動産の価格は、建物の価格と土地の価格の2つを合計した額です。建物の価格は築年数が経過するごとに下がるため、基本的には経済状況にかかわらず築年数が浅いうちに売却したほうが高値で売れるという考えは、言うまでもないでしょう。
一方、土地の価格は今後の需要により変わります。近くにニーズの高い商業施設などが建設されれば土地の価値は上がりやすいですが、嫌悪施設と呼ばれる周囲の人が嫌がるような施設の場合は価格は下がりやすくなります。
一般的に、以下のような施設が嫌悪施設とされています。
- 悪臭や健康被害が懸念される施設(ごみ焼却場や下水処理場など)
- 事故などの危険が懸念される施設(ガソリンスタンドや原子力発電所など)
- 周囲に住みたがらない人が多い施設(風俗店や墓地、パチンコ店など)
良好な住環境を保護する必要のある「第一種低層住居専用地域」などであれば、高さ10mまたは12m以上の施設が建設される可能性はゼロに近いですが、周囲に住む人が少なくなれば土地を有効活用するために空き家は減り、新たな施設が建設される可能性は高いでしょう。
そのため周囲に活気があり、人の出入りも比較的多いうちのほうが、土地が高値で売れる確率は高いといえます。
不動産の売却は経済状況だけでなく、建物の築年数や今後の土地の需要も踏まえたうえで、適切な時期に売り出しましょう。不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」では、売却のプロが不動産を査定し、適切な売り出し時期を無料でアドバイスしています。
不動産で利益を出したい人はプロの力を借りて、優秀な複数の不動産会社のアドバイスをもとに売り出し時期を最終決定しましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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