不動産売却を成功につなげる媒介契約の選び方
不動産を売却するときは、不動産会社と「媒介契約」を結ぶのが一般的です。媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、よい条件で売るには、適切な媒介契約を選ぶことが大切です。
ここでは、不動産売却における媒介契約の種類や手数料、媒介契約書の内容についてご紹介します。
この記事でわかること
- 媒介契約の種類と特徴
- 媒介契約の選び方
- 媒介契約後に不動産が売れない原因
もくじ
媒介契約とは
媒介契約とは、不動産の売却に必要な手続きを不動産会社に委託する契約です。不動産の売却は、次の手順で進めます。
- 売却価格の設定
- 販売活動
- 内覧対応
- 買主との価格交渉
- 売買契約
- 決済
- 引き渡し
上記の手続きを売主が全て行うのは、手間や時間がかかるだけでなく専門的な知識が求められる場面が多くあり大変です。しかし媒介契約を結べば、不動産会社が売主に代わって手続きを進めてくれるため、手間をかけずに不動産を売却できるのです。
媒介契約書に記載される内容
不動産会社と媒介契約を結ぶと、不動産会社が媒介契約書を交付します。媒介契約書には、以下の内容が記載されます。
- 媒介契約の種類
- 媒介契約の有効期間
- 発生する義務
- 売出価格
- 仲介手数料
- 契約の解除条件
- 依頼者(売主)による記名・押印
- 不動産会社による記名・押印 など
媒介契約を結ぶときは、販売活動の内容や支払う手数料、契約期間などを決め、不動産会社と売主それぞれの権利や義務を明確にします。詳細を決めておくことで、売主と不動産会社の間で起こりうるトラブルの回避につながります。
取り決めた条件は媒介契約書に記載されているため、受け取ったら内容に相違がないかすぐに確認しましょう。
媒介契約の種類と特徴
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
同時契約できる 不動産会社の社数 |
複数 | 1社のみ | 1社のみ |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
進捗報告 | 義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
レインズへの登録 | 義務なし | 7日以内 | 5日以内 |
媒介契約の種類によって、売却までの期間や金額も変わることがあるため、内容をしっかりと確認しておきましょう。
一般媒介契約の特徴
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約を結べる媒介契約です。複数の不動産会社が販売活動を並行して進められるため、幅広いルートで買主を探せます。
複数の買主が見つかる可能性が高く、提示された売却価格を比較して、もっとも高い金額を提示した買主に売ることができます。
また、一般媒介契約は売主が買主を直接見つけて個人間取引を行う自己発見取引が認められています。そのため、不動産会社が探した買主よりも、売主自身が見つけた購入希望者のほうがよい条件で不動産を買ってくれるのであれば、直接売買することも可能です。
不動産会社が販売活動に消極的になりやすい
一般媒介契約は、不動産会社から見るとライバルが多くなる媒介契約です。買主が見つかっても、ほかの不動産会社で決まることもあるため、売買取引が成立する可能性が低くなります。
また、不動産会社の業務処理や契約期間、売却活動による報告も義務づけられていません。レインズ※への登録も義務づけられていないため、販売活動を積極的に行わない傾向があります。
契約解除がいつでもできる
一般媒介契約は、契約解除の意向を不動産会社に伝えればいつでも解除ができます。不動産会社と契約を結ぶ際は、期間を3カ月以内で設定することが多いですが、一方的に契約解除できます。
契約解除による違約金なども基本的に発生しないため、販売活動が上手くいかない場合や担当者との相性が悪い場合は、契約途中であっても解除して不動産会社を変更できます。
専任媒介契約の特徴
専任媒介契約は、1社の不動産会社とだけ契約を結べる媒介契約です。一般媒介契約のように、複数の不動産会社が販売活動を並行して進めることはできません。
しかし、不動産会社側から見れば、自社だけが物件を紹介できるため、買主が見つかれば取引が成立する可能性が高くなります。そのため、一般媒介契約よりも販売活動を積極的に行う傾向があります。
また、専任媒介契約は自己発見取引も認められているため、不動産会社が販売活動を行っている間、売主自身が買主を探すこともできます。
レインズへの登録義務がある
専任媒介契約ではレインズへの登録が、媒介契約締結から7日以内に義務づけられています。レインズに登録することで、全国の不動産会社が不動産を検索できるようになるため、買主が見つかりやすくなります。
売主への報告義務がある
専任媒介契約は、不動産会社が行った売却活動の内容を、売主へ報告することが法律で定められています。報告の頻度は2週間に1回以上のため、売主から催促しなくても、進捗の確認が可能です。
契約期間中の途中解約が基本的にできない
専任媒介契約は、契約中の解約が基本的にできません。売主側の都合で契約を解除する場合、違約金などが発生するおそれがあるため、事前に確認しておきましょう。
なお、媒介契約を結んだ不動産会社に非がある場合は、途中解除できる場合があります。
専属専任媒介契約の特徴
専属専任媒介契約は専任媒介契約と同じく、1社の不動産会社とだけ契約を結べる媒介契約です。
専任媒介契約との大きな違いは、自己発見取引が認められていない点です。売主が買主を見つけた場合は、媒介契約を結んだ不動産会社を通して売買をする必要があります。売主が不動産会社を通さずに買主と直接取引をすると、違約金が発生するおそれがあるため注意が必要です。
専属専任媒介契約は、レインズへの登録が5日以内と義務づけられており、報告義務も1週間に1回以上と決められています。そのため、専任媒介契約よりも短い期間での進捗を知ることができます。
また、契約期間は、専任媒介契約と同じく3カ月以内に定められており、契約途中での解除は基本的にできません。
媒介契約に必要な手数料
媒介契約を結んだ不動産会社で売買が成立すると、媒介手数料が発生します。媒介手数料とは、売買が成立したときに不動産会社へ支払う報酬のことです。仲介手数料ともいわれます。
媒介手数料は、「売買契約の成立時」と「引き渡し時」に50%ずつ支払うケースが多いです。そのため、媒介契約を結んだ段階では手数料はかかりません。値下げ交渉に応じてくれることもありますが、あまり期待せずに構えておくといいでしょう。
媒介手数料(仲介手数料)はいくら?
仲介手数料については法律で上限が決められており、中古不動産の売買では、下記のように計算されます。
取引金額 | 上限金額(税別) |
---|---|
200万円以下 | 取引金額×5% |
200万円超え、400万円以下 | 取引金額×4%+2万円 |
400万円超え | 取引金額×3%+6万円 |
たとえば、自宅のマンションが1,300万円で売れた場合の媒介手数料は次の計算式で算出できます。
媒介手数料45万円は、売買契約の成立時と引き渡し時に22万5,000円ずつ不動産会社に支払います。
媒介手数料については関連記事をご確認ください。
媒介契約の選び方
媒介契約を結ぶときは、不動産に適した方法を選ぶことが大切です。媒介契約ごとに適したシーンを紹介します。
人気物件を売却するなら一般媒介契約
駅近や築浅など、人気のある不動産を売る場合は、一般媒介契約を選びましょう。人気のある不動産は、不動産会社が積極的な販売活動をしなくても購入希望者が集まりやすいためです。
購入希望者が複数人いれば購入価格を競うことになり、売主はよい条件を提示した買主を選べます。結果、不動産を高額で売却できる可能性が高くなります。
買主を直接探す可能性があるなら専任媒介契約
売主自身が買主を見つける可能性が少しでもあるなら、専任媒介契約を選びましょう。ただし、売主が買主と直接取引をすれば、不動産会社は仲介手数料を得られなくなります。
専任媒介契約では、直接取引の可能性があることから、不動産会社は不動産の販売活動の優先順位を落とすおそれがあります。
そのため、売主が買主を探す可能性がゼロであれば、これから説明をする専属専任媒介契約を検討してみてください。
不動産会社に売却を一任したければ専属専任媒介契約
不動産の購入希望者を売主自身で探すつもりがなく、不動産会社にすべて任せる場合は専属専任媒介契約を選びましょう。
不動産会社は自社以外で売買が決まったり自己発見取引をされたりしないため、買主を見つけられたら媒介手数料を手に入れられます。そのため、販売活動を積極的に行う可能性が高いです。
媒介契約で不動産が売れない原因
不動産会社と媒介契約を結んだとしても、不動産がかならず売却できるとは限りません。原因として考えられるのは次の3つがあります。
- 不動産会社が販売活動を積極的に行わない
- 不動産会社が囲い込みをしている
- 売り出している不動産の需要がない
対策をすれば売却につなげられる可能性が高くなるため、確認しておきましょう。
不動産会社が販売活動を積極的に行わない
媒介契約を結んでも購入希望者が現れない場合は、不動産会社が販売活動を積極的に行っていないことが原因として考えられます。
とくに一般媒介契約を結んでいる場合は、一つの不動産を複数の不動産会社が販売しているため、売上につながらないかもしれません。その結果、販売活動に積極的になれないのです。
一般媒介契約を結んでいる不動産会社が販売活動を積極的に行わない場合は、媒介契約を専任媒介契約または、専属専任媒介契約に変更してみましょう。
不動産会社が囲い込みをしている
不動産の売買取引では、売主側と買主側にそれぞれ不動産会社がつき、契約が決まると双方で媒介手数料が発生します。
このとき、売主側と買主側とで同じ不動産会社が仲介をすることを「両手仲介」といい、取引が決まると双方から媒介手数料を得られます。
不動産会社のなかには、両手仲介を狙い、自社で買主を見つけるまでほかの不動産会社に紹介せず抱え込むケースがあります。これが「囲い込み」です。
囲い込みをされると、媒介契約を結んだ不動産会社が買主を見つけるまで、不動産を売却できません。そのため、販売活動が長期化することがあります。
囲い込みをされた場合は、不動産会社を新たに見つけて媒介契約をし直すことも検討しましょう。
不動産の需要がない
不動産が売れない場合、そもそも、売り出している不動産の需要がないのかもしれません。買主が見つからない場合は、買取を不動産会社に提案してみましょう。買取は、不動産会社が不動産を直接購入する方法です。
買取の価格は、売却よりも低くなる傾向があります。ただし、買主を探す必要がなく、早期売却できるメリットがあります。
不動産が売れないときは不動産会社を変更してみる
媒介契約を結んでも買主が見つからない場合は、不動産会社の変更も検討してみましょう。不動産会社のなかには、得意とする不動産の種類があるため、媒介契約を依頼する不動産会社を変更することで、売却につながるかもしれません。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では契約期間中の解約は難しいですが、新しい不動産会社を探すことはできます。媒介契約の期間が切れるタイミングですぐに媒介契約を依頼できれば、不動産の販売活動を途切れずに行えます。
不動産会社を探すなら不動産一括査定サイト「リビンマッチ」を利用しましょう。不動産の情報を入力すれば、最大6社の不動産会社に一括で査定を依頼できるため、媒介契約を結ぶ不動産会社を探しやすくなります。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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