不動産売買における重要事項説明の目的と要点を分かりやすく紹介

不動産売買では、不動産会社が重要事項説明を買主に対して行う義務があります。重要事項説明では、契約をするかどうかを決めるための、重要な情報を説明してもらえます。
特に買主は、どのようなことを説明されるのか理解していないと、その場になって慌ててしまったり、重要なことを聞き逃してしまったりする可能性があります。そのため、あらかじめ要点を押さえてから、当日を迎えましょう。
重要事項説明に関して、要点を押さえておくことで、後々トラブルになることを防いでくれるので、しっかり理解しましょう。
もくじ
重要事項説明の目的
物件の情報をよく知る売主と比べて、買主は知らないことも多いと思います。そのため重要事項説明は主に買主に対して行う重要な説明です。
ここでは、重要事項説明の主な目的を解説します。
最も重要な目的は、買主の保護
不動産の売買は、高額な買い物になるため、一生で何度も経験するものではありません。しかも、権利関係や条件が複雑なので、買主の知識不足が懸念されます。
詳しい説明がないまま取引しようとすると、正しい判断ができないため、契約後にトラブルが発生してしまうおそれがあります。
そこで、誤解した状態で契約しないように、専門の知識を持った宅地建物取引士(宅建士)が重要事項を説明する義務があります。
重要事項説明で買主に正しい情報を提供して、正しい判断をしてもらうのが主な目的です。
売主に重要事項説明は不要
重要事項説明は売主と買主の同席のもと行われ、その後売買契約を完了させるのが一般的です。しかし、重要事項説明の主な目的が買主の保護にあるため、売主は説明を受けなくても問題ありません。
重要事項は物件のことが書かれているため、売主はすでに知っている情報がほとんどだからです。
ただし、トラブルに巻き込まれないためにも、売主も聞いていたほうがよいでしょう。間違っているところがあれば、訂正することもできます。
売却するためには、重要事項説明を聞いていなくても署名・捺印をする必要があります。間違った情報を買主に提供して、トラブルになったとき聞いていないでは済まされません。
違反した場合には罰則も
重要事項説明書に虚偽の内容を記載したり、説明の内容が不足していたりすると宅地建物取引士や不動産会社は指示処分を受けることがあります。
また、重要事項説明を行わなかったり、重要事項説明書を渡さなかったりした場合は、業務停止処分の対象になります。
そのため、不動産会社はしっかりとした重要事項説明を行ってくれるはずです。
もし重要事項説明がなかったり、納得ができなかったりした場合には、署名・捺印をせず、納得するまで説明してもらいましょう。
抑えておくべき要点
重要事項説明は、不動産の売買に重要なことのみが書かれているため、すべての項目が重要です。しかし、その中でも特に抑えておくべき要点があるので、重要事項説明を受ける際の参考にしましょう。
対象物件に関する説明
買主は、以下の項目のように、購入しようとしている物件に問題がないか、聞いていた内容と合っているかチェックします。
- 物件の所在地や建物の面積
- 抵当権が抹消されているか
- 現在の法令に準拠しているか
- 接する道路の幅と道路と敷地が接する面の長さ、私道負担はどうなっているか
- 災害警戒区域内か否か
- 建物の維持管理状態
- 電気・ガス・水道などのインフラは整っているか
- 物件の近隣に建築計画があるか
- 周辺に騒音や悪臭を出す施設があるか
特に古い物件は、建物が現在の建築基準法に準拠していない可能性があり、今後改築する際に制限を受ける可能性があります。
また、都市計画法により、土地の使用に制限がかかっている場合もあります。
契約条件に関する説明
売買契約の条件に関わる項目は、お金にかかわる重要な項目のため、売主・買主ともに確認する必要があります。
特に、以下の3項目について確認しましょう。
- 税金や管理費の日割り費用など、契約時に物件代金以外で支払うお金
- 売買契約の解除条件や方法
- 手付金の保全措置は利用できるか
マンション独自の説明
売買されるのがマンションの場合、買主は以下のような項目も確認します。
- 敷地は所有権なのか、借地権なのか
- どこが共有部で、どこが専有部なのか
- 専有部分での禁止事項
- 修繕積立費や管理費はいくらなのか、滞納はないか
- 管理の委託先や委託内容
- 大規模修繕は計画通り行われているか、いくら積み立てられているか
- ケーブルテレビや衛星放送など、継続的に支払わなければいけない費用はあるか
特約に関して
通常の記載項目以外に特約が記載されていることがあります。主な特約として、以下のようなものがあります。
- 契約不適合責任の売主の免責特約
- 売主が負うべき契約不適合責任を負わない特約
- 住宅ローン特約
- 住宅ローンの審査が通らなかった場合に売買契約が解除される特約
IT重説が可能に
不動産売買は、複雑な内容で高額な取引であることから、今まで重要事項説明は対面で行うべきとされてきました。
しかし2021年3月31日より、Zoomなどのオンラインでビデオ通話ができるサービスで重要事項説明を行っても、対面同様に扱われるようになりました。
コロナ禍でますます、オンライン化が進むことが考えられるので、オンラインか対面かをあらかじめ確認しておきましょう。
買主が重要事項説明を受ける当日に注意するポイント
重要事項説明を受ける当日は、いろいろな手続きがあるため、不動産会社のペースで契約を進めてしまいがちです。
しかし、任せきりにするのではなく、自分でもいくつかのポイントを押さえておきましょう。
説明担当者が宅地建物取引士の資格を持っているか確認
重要事項説明を行うのは、宅地建物取引士である必要があります。
そして、宅地建物取引士は説明の際に顔写真入りの宅地建物取引士証を提示する必要があります。そのため、宅地建物取引士証を必ず確認しましょう。
資格がない人が説明をしてしまうと法令違反になり、後々トラブルになる可能性があります。
気になる箇所は残さない
重要事項説明を受けた後は、重要事項説明書に署名・捺印をします。この受領書に署名・捺印をしたということは、重要事項説明をしっかりと受け、内容を理解したことを意味します。
そのため、重要事項説明書に書かれている内容を理由に売買契約をキャンセルすることはできません。もしキャンセルしてしまうと、自己都合とみなされて、違約金が発生してしまいます。
署名・捺印は気になる箇所が明らかになってから行いましょう。
納得できない場合、断ることもできる
重要事項説明を受けている段階ではまだ契約をしていません。
そのため、重要事項説明の内容にどうしても納得がいかない場合には、契約をしないことも可能です。また、判断するのに時間が必要であれば、重要事項説明を聞いた後に、一度持ち帰って検討することもできます。
重要事項説明は項目が多く、すべてを把握するのが困難です。要点を抑えたうえで、確認漏れや聞き漏れがないように十分注意しましょう。
売主になる際に注意するポイント
重要事項説明は説明項目も多く、時間も1時間〜2時間かかります。そのため、途中から聞いていない買主もいます。
これは不動産取引でトラブルが多い原因のひとつです。不動産会社も毎日のように重要事項説明を行うわけですから、作業になりやすく、じっくりと親切に説明してくれないこともあります。
説明を聞いていなかったことに対しての責任はもちろん買主にあります。そのため、契約が白紙になるようなことはありません。しかし、取引後に買主からなにかしら言われることにいい気持ちはしません。
そうならないために、売主になる際は重要事項説明含め、ひとつひとつの仕事を正確に行ってくれる不動産会社を選びましょう。
不動産の購入も売却も信頼できる不動産会社を選ぶことが成功への近道です。

大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。